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43/179

勇者、ガンガンいく

 

 43-①


「武光殿、ご無事ですか!!」

「ふぅー、何とか間に合いましたねー」


 武光の前に、リヴァルとキサンが現れた。


「ヴァっさん、あ……ありがとう、助かったわ」

「無事で何より。敵の大将は討ち取りました。東の敵もヴァンプが迎撃に向かっています……さぁ、残りの敵も一緒に蹴散《けち》らしましょう!!」

「おう!! 一緒に蹴散らし……って、待て待て待て!?」


 武光は思わずノリツッコミをしてしまった。


「何です?」

「いやいやいやいや『何です?』やあるかいな!?」


 キョトンとしているリヴァルを連れて、武光は防塁の上に登り、敵の軍勢を指差した。


「敵!! いっぱい!! 無理!! 死ぬ!! いのちだいじに!!」


 興奮し過ぎてカタコトになりつつも、武光は敵の方を指差した。指差した先にはオークの群れが犇《ひしめ》いている。


 武光達は持てる力を全て振り絞《しぼ》り、全力で、必死こいて敵を倒したがそれでもなお、敵は七十匹以上も残っているのだ。しかも、どうやら混乱は治まったらしい、進軍の角笛が再び鳴り響く。


「大丈夫ですよ、私達ならきっとやれます!! ……よっと」

「ちょっ、ヴァっさーーーん!?」


 何と、リヴァルが防塁から、ひょいと飛び降りてしまったのだ。武光もリヴァルを引き止めるべく慌てて防塁から飛び降りた。


「さぁ、ガンガンいきましょう!!」

「いやいやいやいや……行けるかいっ!! ひとまず防塁に戻って──」

「キサン、守りは任せた!!」

「はいはーい、任されましたー、地術……ランドウォール!!」


 キサンが地面に手を翳《かざ》すと、地響きと共に、防塁の下の地面が隆起し、防塁の高さが一気に倍近くになった。

 その高さは、もはや防塁ではなく、防壁と言って差し支えない程であった。


「バッチリですー!! これで、敵はそう簡単にここを越えられませんよー!!」


 防壁の上で二人に手を振るキサンを見て武光は愕然《がくぜん》とした。前からは敵の大群、背後には敵が登れない程の高い壁。それ即《すなわ》ち……


「逃げ道無いやんけーーーーー!?」

「……参る!!」

「ちょっ……ヴァっさーーーん!? 危ないって!! ……く、くっそーーー!! な、南無三《なむさん》ーーーーーっ!!」


 もはやヤケクソだ!! 半《なか》ば自暴自棄《じぼうじき》になりながらも、友を守るべく、武光はリヴァルを追って駆け出した。


 43-② 


「はぁぁぁっ!! たぁっ!! せいっ!!」


 流麗にして鋭利!! 金色《こんじき》の光を纏《まと》った剣を手に、リヴァルが次々と敵を斬り捨ててゆく。


「わーっ!? 危なっ!! ひーっ!?」


 ヤケクソにして必死。イットー・リョーダンを手に、武光がその後を追う。


 武光は思い知らされていた。『ヴァっさんを守る』など、思い上がりも甚《はなは》だしかった。

 何かもう、守るとか守らないとかの騒ぎではない、リヴァルから離れないように後を追うので精一杯だ。


 ……置いて行かれたが最後、あっと言う間に敵に囲まれて……きっと、絶対に、間違いなく、嬲《なぶ》り殺しにされてしまう。


 肺が破裂しそうになりながらも、武光はひたすらにリヴァルの背を追い、足を動かし続けたが、朝からずっと戦い続けて、武光の体力はもはや限界だった。


「……うおぁっ!?」


 どれだけ走り続けたのか……とうとう、足が縺《もつ》れて派手にすっ転んでしまった。


(ひぃぃ!? は、早よ立たな殺されてまう!!)


 武光は焦ったが、敵の追撃はこなかった。


「大丈夫ですか?」


 ……不意に、武光の前に一本の手が差し伸べられた。リヴァルである。敵軍のど真ん中だというのに、超絶爽やかスマイルである。


「ヴァっさん、笑《わろ》とる場合ちゃうて!! て、敵が……え!?」


 後ろを振り向き、武光は言葉を失った。


 ……そこにあったのは、夥《おびただ》しい数の魔物の屍だった。いつの間にか武光は敵の軍勢を突破してしまっていたのだ。


 更に驚くべき事があった。目の前に……壁がある。うつ伏せに突っ伏したまま視線を上に向けると、壁の上からキサンが二人をニコニコと見下ろしている。


「二人共お帰りなさーい」


 必死過ぎて全く気付かなかったが、武光達は一度敵軍を突破した後すぐさま反転し、再び敵軍のど真ん中に突っ込み、暴れ回っていたのだ。


 ……正直な所、セイ・サンゼンでの論功行賞《ろんこうこうしょう》で、リヴァル達が『200匹以上の魔物を倒した』と言ったのを、武光はてっきりネタだと思っていた。ヴァっさんスベってるやんけ、などと思っていたのだが……


「マジやんか……はは……」


 あまりの事に “ブッ” と屁をこいた後、武光は気を失った。


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