地竜塞、陥落する
118-①
《四竜塞》》……ショバナンヒ砦の南東、例によって時計の文字盤で例えるならば、時計の中心と3時を結んだ横線と1時と5時を結んだ縦線の交わる辺りに魔王軍が築いた、《地竜塞》・《水竜塞》・《火竜塞》・《風竜塞》からなる難攻不落の四つの砦の総称である。
四竜塞が難攻不落と言われるのには幾つか理由がある。
まず一つ目に、単純に各砦の防御が厚い。
二つ目に、菱形を描くように築かれた四つの砦は、どこか一つの砦が攻撃を受ければ、即座に他の三つの砦から援軍が送られ、攻城側が逆に包囲を受けてしまうようになっている。
これを防ぐ為には他の三つの砦にも同時に攻撃を仕掛け、砦間の連携を封じる必要があるのだが、その為には膨大な兵力とそれを維持する兵站が必要となる。
……そして三つ目は、その難攻不落の四砦を守るのが《竜人族》であるという事だ。
竜人族とは、人と竜の姿を併せ持つ種族で、普段は金色の瞳と頭に生えた角以外は人間とほぼ同じ外見をしているが、戦闘時には身体の一部を竜の姿に変えて戦う、魔族の中でもズバ抜けて高い戦闘能力と知能を誇る戦闘種族である。
そして、この三つ目の理由こそが、四竜塞が難攻不落と呼ばれる最大の所以である……いや、あった。
難攻不落の四竜塞の一角、地竜塞が陥落した。
地竜塞を守っていた地竜将・不動のリュウソウは討死し、五百体いた砦の守備兵もほぼ全滅させられた……それも、たった四人の人間達にである。
地竜塞を陥落させたのは、リヴァル戦士団……魔王軍内において最高クラスの褒賞をかけられている三つの敵部隊の内の一つである。
この緊急事態において、風竜塞を守る風竜将・疾風のリュウヨク、水竜塞を守る水竜将・静寂のリュウビ、火竜塞を守る火竜将・侵掠のリュウズ……三人の竜将達は遠く離れた相手と通信出来る竜人族の秘宝《飛心玉》を用いて会話していた。
「リュウソウめ……まさか人間如きにやられるとは!!」
中国の漢服に似た緑の衣を纏い、知将然とした冷徹な雰囲気を持つ竜人の男が吐き捨てるように言った。風竜将・疾風のリュウヨクである。
「我ら竜人四天王の面汚しよ……お前もそう思うだろう、リュウズ?」
チャイナドレスに似た青の衣を纏い、妖艶な色香を漂わせる竜人の美女……水竜将・静寂のリュウビがリュウヨクの言葉に続く。
「フン……所詮奴は四天王最弱!!」
筒袖鎧に似た真紅の鎧を纏った、峻厳な威圧感を放つ竜人の男……火竜将・侵掠のリュウズは厳しく言い放ったが、その後に『だが……』と付け加えた。
「だが奴は……良い奴だった……ッッッ!!」
リュウズの言葉に、リュウヨクとリュウビは大きく頷いた。
「明るくて……!!」
「力持ちで……!!」
「ひょうきんで……!!」
「仲間思いで……!!」
「努力家で……!!」
「以外と手先が器用で……!!」
「たまにゴハンも奢ってくれるし……!!」
「歌も上手いし……!!」
「部下達からも慕われて……!!」
「奴の……『不機嫌な時のリュウビのモノマネ』はスベり知らずだった……!!」
「ああ、そして何より……奴は勇敢だった!!」
リュウズは右の拳をギリギリと握り締めると、天に突き上げた。
「我らが友の仇……リヴァル戦士団を討つ!!」
奴らは我らの逆鱗に触れた!!
……三竜将の咆哮がそれぞれの砦を震わせた。




