第3話 「朝練」(未央の視点)
私は東 未央。東中学校3年生。東中のバスケ部マネージャー。
私は毎朝楽しみにしていることがある。
それは、マネージャーをしているバスケ部の朝練。
なんでかって…?
神村君が来るからだ。
今日もいつものように7時15分前には学校に着く。
周りの友達には「毎朝未央はバスケ部のために早起きしてて偉い!」って褒められるけど、そんなことない。神村君と2人っきりで過ごしたいからだもん。
「あー…寒い…」
4月とはいえ、ここは北海道。朝の体育館は、とっても寒い。私はブルブル体を震わせながら、体育館の暖房のスイッチを入れる。
神村君は、いっつも暖かい体育館が当たり前だと思ってるから私に感謝なんてしようともしないけど(というか、あのツンツンした性格ならなおさら)、いつも私が暖房入れてるからなんだから…と、神村君に言いたいけど、恥ずかしいし、そんなこと言ったら恩着せがましい女だと思われそうで、そんなこと思われたら神村君に嫌われちゃいそうで、なかなか言えない。
30分くらい寒さを堪えて待っていると、神村君がやってきた。
すこし躊躇ってから、神村君に声を掛ける。
「相変わらず早いね、神村君」
すると神村君はぶすっとした顔をこっちに向けて、
「相変わらず小さいな、東は」
「一言余計でーすー!」
小さくて悪かったですねー!神村君は身長大きいから、どーせこんなチビなんかに興味ないでしょーね…
自分でこう思って、そして悲しくなってくる。身長欲しいなあ…伸びないかなあ…
私が怒ってから、神村君はなにも話しかけてこない。怒りすぎちゃったかなあ…?
もっと喋りたいよ…
「またシューティングしてるの?」
勇気を出して、もう一個質問をした。
すると神村君はそっぽを向きながら、
「ああ、そうだよ」
「相変わらず努力家だね、神村君は」
さっきの失敗を取り戻そうと、がんばって褒めた。
「そ、そんなことねーよ」
またツンツンする。褒めすぎちゃったかなあ?
というか、シューティングに集中したい神村君にとって、私うるさかったかも…
もう話しかけるのを辞めよう、って思った時、バスケ部のみんなが来た。
「おはよう!」
私は大きな声でみんなに挨拶する。その声とは裏腹に、ちこの幸せな時間が終わってしまうことがちょつぴり寂しかった。