手帳と十一年前の夢
僕は手帳を持っていた。手帳にはメモのような走り書きで日記が書かれていた。僕は毎日それを書いていた。しかしある日を境に、ぱったりと続きが途絶えていた。最後の日付は十一年前の三月だった。十一年前、僕は小学六年生だった。
「僕の夢は――」
これが最後に黄ばんだ紙に書かれていた。僕はその事を覚えていなかった。何を書こうとしていたのか、何故書くのをやめてしまったのか、僕は分からなかった。
その日以来父が帰って来ない理由も分からなかった。
僕は兄がいた。僕は兄がいない。僕は兄だ。あれ?
僕は妹がいた。僕は妹がいない。僕は妹だ。あれ?
父がいる。母はいない。父がいなくなった。祖母がいる。祖父は知らない。
クラス会のお知らせが来た。携帯の留守電にメッセージがあった。
「クラス会のお知らせ。でもクラス会なんてありません。あなたのいたクラスなんてありません。誰もいません。あなたは知らなければいけません。私はあなたに真実を知らせなければなりません」
聞きますか?
はい いいえ
選択肢が二つ、目の前に浮かんだ。僕は選んだ。
→はい いいえ
「あなたは十一年前に死んでいます」
……。
「うふぁいえぁんcいせcmzんryべfjztfwがうjtにぇrvbんxm」
壊れた。僕が。




