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八話 猫師匠と僕

クロエは小さな球を指でつまみ、怪訝そうに見つめている。


「念じるってどういうこと?」


「うーん、そうだな。説明しづらいけど、閉じ込められている魔法が解放されたときのことをイメージするんだ。

それに入っているのは、でっかい鳥かごなんだけど、鳥かごをそこから出すイメージを思い浮かべながら力をこめてみて」


「??鳥かご??なんでそんなもの入れてるの?

まぁいいわ、やってみる」


クロエは球を握り目をつむった。

そのまましばらく時が流れる。


「…ダメみたい」

ふぅ、と息をつき残念そうに呟く。

「そっかぁ、でも改良すればいけるかもしれないな。

例えば…」


ガサガサっと大きな物音が響いた。


─何か、いる?


まさか奴らの仲間?早く逃げておけば良かった。作戦が上手くいったからって、油断しすぎた。

クロエも顔が強張り、こちらを見やる。


「─クロエ、その球を貸して。一歩下がってて」


クロエから球を受け取り、身構える。

仲間がどれくらいいるのかは分からないが、先手必勝で出てきた瞬間に閉じ込めてやる。

物音は段々大きくなり、葉が動いている様子が分かる。

黒い小さな影が飛び出してきた瞬間、無言で球を投げつけ、鳥かごを出現させた。


「にゃあぁあぁぁっっ!!??」


…にゃあ?


「コ、コムギ!?」


鳥かごを不機嫌そうにガッシャガッシャと揺らしているのは、前世の姿そのままの猫のコムギだった。


猫のコムギは、しっぽを最大限に振り回しながら


「師匠を呼び捨てな上に、いきなり鳥かごに閉じ込めるなんてどういうこと!?

ひど〜い!ひどいよー。

アサトが人を閉じ込めるのが趣味の変態クソガキなんて知らなかったよー。

えーん」


「あ、師匠!?なんですか、その姿」


「この姿が一番昼寝するのにちょうどいい…じゃなくて!守り人様ともあろうものが正体を明かしながら、うろついているわけにはいかないにゃ!

あといつもの格好だと何か変態が寄ってくるにゃ!」


「語尾が変です、師匠。

それに変態が寄ってくるのはあなたの変態な格好のせいです。

ほぼ下着の猫耳装着者なんて完全に上級者向けじゃないですか」


「人を変態扱いするんじゃありません!

さっさとここから出すにゃ!!」


毛を逆立てフーッと怒っている猫師匠を鳥かごから出す。前世の頃を思い出し、思わずノドを撫でようとしたが猫パンチをくらった。


「いったいなぁ…。先に変態呼ばわりしたのは師匠でしょ。

というか、何故師匠がここに?こんなじめっとした所で昼寝?」


「何その言い草。ひどいー。こっちは君の魔力が途切れたから捜してあげてたっていうのに!」

「え、し、師匠が…?」


目に涙を溜め、泣きつくべき場面なのかもしれないが、今のセリフを木で爪を砥ぎながら言われると、感動がもんのすごく薄まる。


「何があったのさー?

まさか守り人の弟子様ともあろうものが、あっさり人さらいに捕まったわけじゃないだろうけど。そんなことありえないだろうけど。もしそうだったとしても、止むに止まれぬ事情があったのだろうと思われるけど、何があったの?」


「ぐっ…」


あっさり人さらいに捕まった事実をわざわざ言いづらくしやがって!

絶対大体の事情を把握してるよ、この猫!


「…」

「にゃっ!?にゃにゃにゃにゃにゃっ!?やめてーやめてえー!」


腹が立ったので、猫師匠のおなかを無理やり開いてわしゃわしゃしてやった。

おなかをいじられるのが大嫌いだったからな、コイツ…。


「あの…」


困惑した声が後ろからして、猫師匠と僕は振り向いた。クロエを忘れてた。


猫師匠が恐らくニヤつきながら

「…ふーん?そうですかぁ、アサトさんは女引っ掛けてたんですかぁ〜」


「ちっ違います!たまたま道連れになっただけです!」


クロエの冷静な声が響く。

「そんなことより球の中のやつらが、うるさいんですけど」


「あ」


閉じ込められたことを認識したのか、確かにドンドンと中から叩く音がしている。呪詛みたいな声も聞こえる。

このままでは音を不信に思った輩が集まってくるかもしれない。


トコトコと猫師匠がパックンに近付き、しっぽを一振りした。

するとパタリと音が止んだ。


「アサトもうこの球、元に戻していいよ」


ん?今なにかしたのか?

訝しく思いながらも、パックンを元に戻す。


男二人は眠っていた。

ちょっとやそっとでは起きないくらい意識がなくなっている。


言霊も発していないのに、しっぽ一振りでここまでやれるのか、この猫は…。


「魔法の痕跡を残しちゃ後々面倒くさいからね、球は回収しとかないと。

眠らせるくらいなら証拠は残らないし。

じゃあお腹空いたし、帰ろう!」


「さすが師匠、道わかるんですね!道案内よろしくお願いします!」


沈黙。


「あれ、師匠?

だって僕を追いかけてきてくれたんですよね?

なら道、わかります、よね…?

え、何ですか、お腹出してゴロニャンって。

急に猫にならないでくださいよ。

わかんないんですね!?

ここまで追ってきてくれた癖に、わかんないんですね!」


「うるさいにゃ!

ここには突然アサトの魔力が復活したから、それを追いかけてきただけにゃ!

元の道なんかわかるわけないじゃん!」


「語尾やるなら徹底的にニャンニャンつけろよ!キャラ不安定だよ!」


しばらく睨み合うが、猫師匠がふぅ、とため息をつき


「しょうがないからアイツ呼び出すかぁ〜」


面倒そうに師匠は呟いて、くるりと一回転し人の姿に戻った。


クロエがビックリしているが、人になったことに対してなのか、彼女の格好のせいなのかは判断しかねた。

マントの下に下着って露出狂の標準装備みたいなものだものな。


あ、でもクロエ自分の胸を見てる。

大丈夫だよ、成長期だからこれから大きくなるよ。

ならなくても需要は意外とあるから大丈夫だよ〜。

クロエに冷たい目で睨まれた。

何も発言していないのに…。


師匠は近くの葉を二葉手に取り、息をふっと吹きかけた。

すると葉は蝶のように飛び上がり、師匠の瞳孔が大きくなって今にも飛びかからんとした瞬間に超高速で飛んでいった。

師匠が獲物を逃した顔で空を恨めしげに見上げている。

この人は難儀な本能が残ってしまったよな…。


─時間経過はよく分からなかったが、10分か15分か、そのくらい経ったんじゃないかと思う。

上空から鳥の羽ばたきのような音が近づいて来た。

大分でかい。


「おぉ〜来た来たぁ〜」


え、鳥ってことは、まさか神さま!?

そんなはずはない。神さまは<礎の樹>から離れることが出来ない。


鳥のような音はどんどん近づいてきて、僕らの上で止まり、バキバキと木を破壊する音とともに落下してきた。


「守りびとさまぁあぁあああ!!!

お迎えに上がりましたあぁぉあぁ!!!」


黒い翼のようなものをつけた人が木の枝を至る所にブっ刺した姿で師匠に向かって急降下してきた。

師匠は突進してきた人の肩をつかみ思いきり地面に叩きつけた。

獲物を仕留めた恍惚の表情を浮かべている。

「うぼぉぅ!ありがとうごさいます!!」

仕留められた人は血を吐きながらお礼を言っている。


…何だこの空間。
















































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