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五話 置いてけぼりと散歩

「ここ、どこなんでしょう?」


「んー、たぶん小さな村島だろうねえ。だいぶ下層まで落ちちゃったみたい。下の方は小さな島が多いから」


ここは<礎の樹>の島よりも薄暗い。陽光があまり届かないようだ。


「師匠も島の外に出ることは滅多にないですもんね?」


「うん、私は神さまの守り人だからね。神さまの側をあんまり離れちゃうとね〜良くないから」


守っているという様子は全くないが、僕の預かり知らないところでしっかりと守っているのだろうか。


「代理でガイルがいるけど、ガイルあんなんだし」


「あんなんですもんね」


「なのでっ、せっかくのたまの外出でありまするので

私めは散歩してきまーすっ!」


「ふぇっ!?」


ぴょーんと師匠は屋根の上に飛び上がった。


「ちょちょちょっと師匠!?王様への謁見どうするんですか!?現時点で大分遅刻ですよ!?」


「待たせとけばいいよー。

一日中、玉座に座ってるんだからさ、いつ行ってもいるでしょ」


「そういう問題じゃないでしょ!!」


「んじゃ、修業の一環てことにしよう!

アサトは自力で島移動する方法を見つけること!

がんばれ☆」


呆気にとられる僕を尻目に、師匠はしっぽをフリフリさせながら、ぴょんぴょんと屋根を伝って、あっという間に見えなくなった。


マジでか。


見知らぬ地に置いてきぼりにされ、この世界の人にほとんど会ったことがない。周囲は薄暗く、じめっとしていて、治安も良くなさそうだ。

泣いちゃうよ、これ。

本当の13歳なら泣いちゃうよ。中身はいい大人だから我慢してるけど。


僕には観光している余裕はない。心細いのもあるが、人を、しかも王様を待たせている。

遅刻して来た時の注目と冷めた目を考えるだけで胃が落ち込む。


要は空を飛べればいいということだ。しかし問題はその手段だ。


僕の手持ちの魔法は初歩的な錬成魔法と4属性の基本魔法。

錬成魔法は神さまから依頼の対バカ猫用魔法ということで覚えた。師匠を捕らえるでかい鳥カゴは錬成魔法で作ったものだ。

自身の魔力を放出し練り合わせて金属状にし、鳥カゴの形にしたのだ。


師匠があれなので、大したことは教えてもらえず、独学で学んで、その結果を師匠で試す、という師弟関係ってこんなんだっけ?という修業の日々だった。


錬成魔法で飛行機を作るか…?

あの鳥カゴを作るのに3日ひたすら魔力を放出した。

3日もしたら王様、痔になるんじゃないだろうか。

飛行機の構造もうろ覚えだし。うーん却下か。


「─おいガキ。ここで何してる」


野太く下卑た響きの声がして、僕は慌てて振り向いた。


ガキという言葉に、てっきり僕のことかと思ったが男の声は僕のいる路地ではなく隣の路地から聞こえてきた。

友好的な声音ではないが、第一村人だ。好奇心を抑えきれず、つい覗いてしまった。


声と見た目が一致しているいかにも怪しげな男と、その背中越しにもう一人、人影が見える。

背丈が随分小さい。子どもかもしれない。

なんだかきな臭い雰囲気だ。もしや人さらいか…。


覗くのに夢中になっていると、突然の衝撃とともに意識が途切れた。






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