表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

第3話 平和交流学園の生活風景


 ◆


 平和交流学園は月人類によって作られた総面積、約1800000km2。総人口約500万人が住んでいる人工島だ。地球上には約1億人の人類が住んでいる事になっているが、実際は地上に住んでいる人口は1000万人程度で、残りは人工島に住んでいるか、地下都市に住んでいる状態である。

 地上には過去の過ちが生んだモンスターが横行闊歩しており、かつて生態ピラミッドの頂点にいた人類は今では最下層部分に甘んじている。月政府が過去の地球上に存在した生物データを残してはいるが、それら全ては役に立たない物になっていて、月人類の言葉を借りるなら、モンスターは恐竜とファンタジー生物を掛けあわせたような魔物らしい。

 唯一の救いは、そのモンスター達に銃火器と一部の超能力が通用することだろう。再び人類が地球の地上を支配するには莫大な時間が掛かると言われているが、その正確な時間は公表されていない。また、自然破壊を行い環境問題を発展させてしまう恐れがあるので、幾つかの大陸は自然をそのまま残すべきである、と言う月政府の強い意見もあるためにモンスターの駆逐と開拓が遅れているのである。

 さらに、モンスター駆逐と大陸開拓には少なくない人類の犠牲が出る。毎年数万人単位で死傷者が出ている事実が大陸開拓推進派の首脳部の頭痛の種になっている。


 ◆


「月人類の人口増加率問題については、人型アンドロイドが大きな原因を占めている。今年発売に至った高性能86型人型アンドロイドはほぼ完璧に人間と同じ性能を持っているからな。それに月から離れ、宇宙ステーションに移住する者、宇宙開拓に励む者が多く月人類の人口は戦争が無くとも人口増加率は低い。というか、宇宙開拓なんて夢物語を技術力で叶えようと言う技術屋ロマンに火というか炎上して皆宇宙船作って、作ったそばから宇宙開拓に出発。超光速航法(ワープ)技術の確立は近いらしいが、空間歪曲型の移動方法は相当難しいらしく、まだまだ研究中だとかオヤジが言っていたな」


 俺が人口比率について疑問に思ったからシュウイチに聞いたら意外にもしっかりとした答えと、聞いてもいない答えが出てきた。


「地球の方は地下都市で生活を始めたばかりの時代から人口増加問題を懸念していて、一人っ子政策を取ってきた。それに地下の開拓もまた犠牲無しでは進まなかったのもある。地上に出たら出たで、今度はモンスターのお出ましで人口を増やしたくとも増やせない状況が続いて、今に至るって感じだ。そもそも、地下に避難したからと言っても全く汚染がゼロってわけじゃなかったらしいからな」

「でも、今じゃ生んで増やしてくれって。月政府の方は……うん。自分で言うのもアレだけど、月の人間って頭おかしいわ。ハーレム法案、同性婚法案、アンドロイド結婚法案。欲望に忠実なバカの集まりよ」


 サナ・L・アマシキと、シュウイチ・L・アマシキは兄妹だ。そして、なんでかオムロとアカツキさんもいる。平和交流学園テラスってその名に相応しく、出身が違う人間が交流していると思う。


「月って兄妹でも結婚できるって本当なのか?」


 俺には兄妹がいないからなぁ。どうなんだろう。


「出来なくはない。だが、推奨はされていない。近親婚はここ数百年無い。血が濃すぎると良くないと過去の人類はデータを残しているが、実際はそんなことは無かった。しかし、兄妹でそういった感情が生まれにくいし、実親との近親婚は出来ない。何よりも、近親婚では子供が出来難いというデータがある。よって人類増やそうぜ、という月政府と地球政府の意向に沿わない」

「人型アンドロイドは? 人間と人型アンドロイドで子供ができるんだろ?」

「人型アンドロイドは高いぞ? 買うのも維持するのも。あと、何体も買って人型アンドロイドハーレム作ると普通に嫉妬されるし、離婚したら慰謝料とアンドロイド税で偉いことに……」


 シュウイチはそこまで言って、発言をやめた。


「とは言え、地球では人型アンドロイドを買えないし、地球から月に移住するには時間と金がかかるから、今この場で何を言っても想像の範疇でしか考えられないので意味はないな。それに人口増加率の問題を学生である俺達が考えることは大切だが、問題を解決して何とかするのは政治家の役割だ。超能力者が政治家になるには相当の苦労が必要だと聞いているが、竜児は政治家になるのか?」

「竜児は俺と開拓ハンターになるぞ」


 オムロ……なにを勝手に俺の進路を決めてやがる。


「個人営業の開拓ハンターって冒険家とか冒険者って職種になるんだっけ? 基本地球政府軍がハンターの人材募集してるけど、アレって軍人扱いでしょ? 給料安定するけど、個人営業の方が儲かるって話だから冒険者志望は多いって聞いてるわ」

「というか、俺は学生起業してる。授業時間外はハンター生活だし、長期休暇中は稼ぎ時だ。人材募集中。とくに女の子」


 起業の手続きやら何やらは全部俺がやったけどな!


「筋肉ダルマが社長? マジで~? 儲かってるの? なんて会社名?」

「ヒーロー株式会社だ。当然俺が社長。竜児は副社長だが、実際会社の事は任せっきりだ。名ばかり社長だな。ハハハ!」


 会社名の由来は俺の小さいころからのアダ名。燈色、ひいろ、ヒーロー。英雄ってヒーロー呼ぶからカッコイイよな、会社名それでいいじゃねーか、ガハハ。とオムロが決めやがった。


「遺跡ハンターはいらんかねー。ロリ巨乳はいらんかねー?」

「アカツキさんが本気なら即採用だな! でも、俺というか竜児の経営方針は学業に影響ない程度に安全に稼ぐ、だからな。長期休暇にアルバイトを募集しているからまずはアルバイトからでも良いぞ」

「で、肝心の稼ぎは?」


 サナはそればっかだな。確かに、危険に対する報酬は必要だ。なんだ? 人員不足問題解消か?


「アルバイトなら最低でも地球貨幣で日給2万ゴールド。それに能力給が付いたり、活躍次第でプラスされたりマイナスされるが今のところマイナスされたことないな。正社員なら月に最低でも10回は遠征に行くが20万ゴールド前後。ボーナスは大型モンスター討伐しないと出ない。ちなみに1番稼いだ時は1000万ゴールドくらい稼いだ」


 あー、ありゃ月政府の恐竜データにあったトリケラトプスそのままの姿で火を吐いてくる奴だったなぁ。恐竜系の大型モンスター討伐は参考にならんぞ。恐竜系の大型モンスター素材の買い取りは高価だが、見つけ出す方には運が必要だからな。それにあいつらデカいのに狡猾だから経験少ないと食われるぞ。


「兄貴、地球貨幣を月貨幣に変えて計算すると1000万ゴールドって旧型戦車なら変えるよね?」

「ギリギリ買えるが、軍車両税と維持費と燃料代を考えると赤字だな。あと、戦車で考えるなよ。一般的に考えれば月の田舎にある中古物件で家1つ買えるくらいだな」

「とは言え、稼いだ金は会社の運営費と武器防具やら銃火器に消えたがな」


 そう、長期休暇でアルバイト参加してくれる人々の為に銃火器の充実やら消耗品の充実やらで消えた。その代わり安全に、確実に稼げるって会社のウリになった。


「モンスター討伐の為の装備品を会社で用意するし、なんだったら食費、移動費、消耗品の用意もする高待遇だ。学生が安全にアルバイトで稼ぐには持ってこいだぞ? この考えは竜児がしたがな! しかし、アルバイトに参加するのは野郎が殆どだ! 何故だ!」


 女性は子供を産むからさ。身の安全を最優先にと教えこまれてるからしょうが無い。それに、戦闘系超能力者って意外に少ないからな。


「アンタが筋肉ダルマで暑苦しいからじゃない?」

「グハッ……」


 それも一理ある。能力給でいつもトップで稼いでるオムロのせいだ。筋肉バカめ。頭の中まで筋肉だからな。


「遺跡調査とか遺跡ハンティングはしないの?」

「考古学的な見地がないからね。下手に遺跡を荒らしたら怒られるし、何よりも遺跡には冗談抜きでヤバイモンスター多いし」

「モンスターの棲家には丁度良い感じなのかしらねぇ。それとも遺跡に眠っているロストテクノロジーがモンスターを集めてるのかしら……?」


 前者の可能性大。モンスターが子供作って棲みついてるって話を良く聞く。


 ◆


 ――

 ――――

 ――――――――

 ――――――――――――

 時は2050年代……。人口増加問題、資源枯渇問題、環境汚染問題などの様々な問題により、人類の文明は限界を迎え始めていた。 万物には必ず終わりと始まりがある。文明すら寿命がある。人類は、本能からなのか理性からなのか。資源を求めて戦争を起こした。それが、第三次世界大戦の始まりであった。

 時のアメリカ大統領がどう考えたかなど知る由もないが、その時確かに最も武力を持っていたのはアメリカだ。そして、最も人を殺したのもアメリカだった。

 ロシア、EU、中国などはアメリカの増長に恐れを抱き、抑止力を目的として核兵器の開発を進めた。

 ……決して、全面核戦争に使うためではなく純粋に抑止を目的としていたのだが。結局開発された武器は使われたのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ