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プロローグ

この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。


 ◆


 人類の文明は戦争により人類自らの手で、一度退廃した。しかし、人類は滅亡しなかった。多くの犠牲と、多くの経験と、多くの時間。人類は退廃した文明を取り戻す。

 昔、『文明は滅びたが、人類は滅びなかった。我々は自然の力強さを見た。人類もまた自然の一部であることを実感した。二度と、この風景を見ることの無い……核戦争の無い世界と戦争の無い後世を人類に願う』と願った人がいた。その願いは、数百年後の後世にまでも語り継がれる物になっている。

 そして、月日は流れ――平和交流学園が設立された。


 ◆


「――人類史と戦史はイコール歴史である。が、これは先生個人の主義主張であって、一般的ではないので注意が必要だ。では歴史の授業を続ける。そもそもの始まりは、800年前の2050年後半に勃発した第三次世界大戦だ。どのような経緯があって第三次世界大戦が始まったのかは現在では不明である。大切なのは途中で一時中断されたとは言え、ついこの間、皆も覚えているだろう。今年2850年のこの年に第三次世界大戦から800年の月日が流れたことであり、同時に人類平和宣言を発令したことだ。この発令によって全ての核兵器が地球、月から排除されたことである。フィッツ・ルコールが遺した核戦争の無い世界と戦争の無い後世を人類に願う、は実現されつつある」


 フィッツ・ルコール……確か165年前に地球地下都市から地上へ出た部隊の隊長だった人物のはず。つーか、先生の家系ってルコールじゃなかったっけ?


「先生。確か先生はルコールの家系じゃ?」

「その通り、私の名はアルベルト・ルコール。フィッツ・ルコールは私の先祖だ」


 だとすると、俺達の先生はもしかして凄い人? 結構教室がザワツイてるな。


「2685年代、人類はその頃、地球の地下に都市を築いて、住んでいた。その理由が分かるものは挙手して答えてみたまえ」


 ざわつくなか、この教師は話を進めた。結構適当なのか? いや、興味を引くには充分か。挙手した生徒が勝手に答え始めた。あれはアカツキさんか……。


「地上が過去の全面核戦争によって汚染されていたからです。汚染レベルは測定不可能。だって測定器ごと核にやられちゃったから。でもでも、地下に住んでいた人類は測定器作って汚染レベルを測定。結果はこうして私達が地上で生活してるのが結果でしょうね」

「そう。地上はとても住める状況ではなかった。そして、汚染レベルを測定する機械を作ったがそれが正しい数値を示していたか? 空気中の汚染、水の汚染、地面の汚染、生物の汚染。汚染と言っても各種様々な汚染があり、その全てを測定するには多くの時間が必要だった。そんな中、私の祖先は地上の環境を確かめる為に地上探検部隊結成した。結果は、月政府との共同で、全ての汚染を解決できたのだが。私の祖先が率いた部隊は、身体を汚染され、若くして死んだ」


 月政府か。あいつらは汚染を解決できる技術を早々と持っていたのに、敢えて地球の汚染を解決しなかった奴らだ。


「月政府に嫌悪感を覚える生徒もいるだろうが、私は敢えて言う。地球を汚したのは、地球に住んでいた人類達で、月人類達には全くもって関係ない話であり、更に言えば月人類達の母国や故郷、そして家族を先祖を滅ぼしたのは地球の人間だ。そして当時から放射能汚染は時間経過と自然の力で解消していくのが最良であると言う研究結果が出ていた。現在の研究でも、やはり放射能汚染の解消は当時の研究結果と同じだ」


 聞いて理解は出来るが、感情的に納得出来ないって顔が周りに見える。俺は……結果的に見れば正しい選択だったと思った。


 ◆


「えーでは、自己紹介でもしてくれー」


 歴史の授業で自己紹介したんだけど。しょうが無いか。新入生の第一回目の授業ってまずは自己紹介だもんなぁ。目立つ生徒は覚えたけど、それ以外は覚えられん。


「アカツキ・エンドウよ。もう3回目の自己紹介だから色々と省くけどサイコメトリーよ、専攻は考古学。あと遺跡ハンターやってるわ。良い遺跡見つけたら一声かけてね」


 うん。やっぱり、小さいけどデカい。150センチあるかないかで、あのおっぱいは反則だ。ってか中学生くらいに見える。


「あと、童顔だけど年齢は聞くな」


 3度目の脅しです。一応30歳で卒業だから、30歳で新入生って事は無いだろうから、20代後半か? 俺より年上かも。俺も童顔で年齢間違えられるから気持ちは分かる。だが、男の年齢と女の年齢は感じ方が違うからな。

 しかし、遺跡ハンターか。3度目だけどやっぱり、そうは見えない。ハンターってやつはアレだ。オムロみたいな筋骨隆々の益荒男がやるもんだろう。

 次々と自己紹介が終わってく。


「オムロ・ビガ・コンダ。ハンター科所属。能力開示法に則り最低限の能力を説明するが、3度目だ。身体強化能力者だ。以上」


 オムロは中等部からの知り合いだ。まさか高等部、大学部、成人部まで一緒のクラスになるとはね。俺は結構飛び級したのにあいつも実技面でポイント稼いで飛び級してきやがったからなぁ。それでもって飛び級クラスでずっと一緒って妙な縁を感じる。同性愛はいかんぞ。犯罪じゃないし、月にいけば同性同士で結婚も出来るけど、俺は同性愛者じゃない。オムロも同性愛者じゃない。なら大丈夫か。一部の月出身女子に腐った奴がいるからなぁ。前時代、2000年代日本に多くいたとか。

 なんて、無駄な事考えてたら俺の番になってた。


燈色竜児ひいろ りゅうじ。見ての通り、黒髪黒瞳で分かるだろうが、日本人家系だ。あと名前の通り男だ。能力開示法があるので必要最低限の能力説明をするが、これも3度目なので簡略説明する。能力名はワンオーダー。命令出来る能力だ」


 メンドクセェが、法律を守らないと学生だろうが、教師だろうが、軍人だろうが捕まるからなぁ。最低限の能力説明って言っても能力名と能力内容を開示しないとダメなんだよねぇ。オムロみたいに能力名がそのまま能力内容を示している場合は能力内容説明しなくて済むから楽なんだけどね。だけど、能力について質問されたら詳しく説明する義務があるから誰も質問してこない。さっさと自己紹介済ませたいのだ。それに、能力名で検索すれば能力内容でるし。始めの自己紹介で皆、SSN(スタンドスカイネット)で調べたはずだ。

 と言ってもネットで開示されてる能力は過去の蓄積だからな。能力の進化についてはまだ不明なところが多くて研究中だ。そのおかげで助かっているが……。

 しつこい自己紹介も終わってまた授業だ。


「俺の授業は体育だ。人工島の一部分。学園の隅っこの区画にモンスターがいる。それを10人編成の3チームに分けて討伐するのが今日の体育だ」

「えー」


 クラスの人間が声を揃えて否定的に叫んだ気がした。体育が2時間ってこういうことかよ。人工島の端から端まで移動する場合、高速電車で1時間ちょいだから、中央にある学園からだと、20分くらいか?


「質問でーす。移動時間と討伐までの時間で2時間こすと思うんですけど~?」


 クラスの女子が聞いてた。


「移動時間は1分にも見たないぞ。テレポーター能力者の先生達が引率するからな!」


 ワォ! テレポーターって激レアじゃん。


「ちなみに、テレポーター能力者の人数は教えられんからな。まあ教師歴長い方々なので移動は安心しろ」


 安心するのはそこじゃないぞーっと何人かは突っ込んだ。モンスターかぁ。放射能汚染で変化した生物達の総称だが。火を吐いてくるとか氷吐いてくるとかオムロから聞いてるし、実際見たこともあるし、戦ったこともある。モンスター討伐経験者は確実にチームをバラけさせられるな。


「チーム編成はどうなるんです? やっぱ経験者はわけます?」


 オムロが俺の聞きたいこと聞いてくれた。そりゃそうだ。あいつハンターだし。未経験を引率するつもり満々だ。


「当然、分ける。Aチーム代表はオムロ。Bチーム代表はアカツキ。Cチーム代表は竜児。あとは能力者を均等にして、未経験者を均等にする。代表者は分かっていると思うが、未経験者に経験を積ませる事を大切にな。代表者1人で討伐してしまった場合、再度編成を変えて討伐を行う」

「ええぇー!」


 こりゃあ厳しいな。さすが成人部。命の危機があれば教師が救ってくれるだろうが、それだと成績がマイナスになるなぁ。


「あと銃火器の使用を認めるので、必要な生徒は今のうちに申請するように。準備時間は1時間だ」


 つーことは、準備時間全部使うと実質討伐時間が1時間切るくらいか。討伐モンスター次第では時間切れするかも。


「ではチーム編成を発表する」


 ――おふぅ……。Cチーム10人中モンスター討伐経験者は2人。あとは未経験者。俺以外の経験者はサナとか言う女の子だ。残りは、能力者が3人。非能力者で未経験者が5人。10人中5人が未経験者って絶望的じゃね? と普通なら思うだろうね。

 全員の自己紹介と能力を知ったので何とかなる。


「さて、ここからまっすぐ歩いて10分程の所にモンスターがいる。残り1時間で討伐できるよう頑張れ」

「はーい」


 テレポーターの先生に送られて、モンスターの近場まで来た。この辺りは自然が多く、青々とした森が周りにある。そして、明らかに人の手が入った道とちょっとした広げた場所にモンスターが鎮座していた。

 学園が用意したモンスターと学園が用意した狩場だ。たぶん監視員がその辺にいる。気配は感じないから相当ベテランだ。


「では作戦通り。俺の能力を使いつつモンスターを討伐する。相手が変異ライオンで助かった」


 討伐したことあるモンスターで本当に良かった。変異ライオンは動きは早いが、攻撃方法が爪と牙しかない。よって遠距離からの攻撃で何とかなる。それに、俺の能力を使えば、皆で協力して討伐したって事になるし。


「じゃあ、能力使う。オーダー。"未経験者5人は銃火器で遠距離攻撃に専念しろ"。"能力者3人は持てる最大限の超能力を使い、モンスターを足止めしろ"。"討伐完了したら命令は終了"だ」


 サナと俺は遊撃人員だ。そして、俺の超能力ワンオーダーは1日に1回なんでも命令できる能力だ。先祖代々からの口伝によると、軍人それも指揮官クラスの人間に必要だった能力を超能力化し、どんな状況でも指揮官の手足となり命令を実行する為の超能力だったらしい。怖いところは、死ねと命令すれば死ぬところだし、死兵となり道を切り開けと命令すれば命令通りに動くところだ。それも、ワンオーダーを使われた人間は考え得る限り最良の方法で命令を実行するのだ。

 まあ、平和となった今の時代では簡単に能力を使えないし、俺の家系は政府関係者に監視されてるからなぁ。だって、選挙であの人に投票しろって超能力使ったらどうなるか、なんて簡単に想像できるからね。ちなみにだが、超能力は遺伝しない。が、似たような超能力が遺伝するので、政府関係者は世界平和に影響しそうな超能力者の家系を監視している。

 

「対モンスター用電磁兵器(レールガン)充填完了。カウント3、2、1。発射!」


 サナ。こいつはダメだ。学園の道具と材料と資材で対モンスター用電磁兵器(レールガン)をわずか1時間で作り上げた。いやー、月人類は技術屋とは聞いてたが、こいつはやべぇ。地球上の対モンスターに使う兵器で主力の兵器を学園で作ったって既にSSN(スタンドスカイネット)で話題になってる。スレッドに超技術屋サナとか、可愛すぎる技術屋サナとか乱立してやがるぜ。

 

「おぉう。変異ライオンがバラバラの肉塊に……」

「あ、あれ? ああ、そうか。燈色くんの超能力は上手くいったみたいだな」

「お、ホントだ。終わってるって、肉塊!」

「きもぉ!」


 すまんね。俺のワンオーダーはオーダー受けた瞬間から命令達成するまでの間、記憶が無くなるんだよね。秘匿任務とかもこなせるような超能力だったんだろうと予測している。


「皆、おつかれさん。じゃ、帰るか。つーか、残り時間50分近くあるけどどうすんだろ。無駄にランニングとかだと嫌だから、しばらくノンビリしようぜ」


 俺の意見に全員が頷いた。肉塊はパイロキネシス能力者が灰にしてた。火を発生させて操るって超能力者は昔沢山いたらしい。銃火器持たなくて済むから便利だったんだろう。


 ◆


 遥か昔の人類は、叡智を手に入れた。ヒトクローン技術の確立、月への移住、超能力者の発現……そして――全面核戦争が起きた。それは生を奪い、灰が空を覆い、風を汚し、地を殺し、水を腐らせた。畏れを忘れた人類は、人を殺し文明を滅ぼした。

 それでも、人類は光を待ち続け、再び蘇る。――――二度と同じ過ちを起こさないように。


息抜きに新しい作品書いてみました。

更新速度は期待しないでください。


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