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かごめ  作者: 安土朝顔
7/7

おばあちゃん

 不意に戸の圧力が緩み部屋へと通じる事ができた。

 相変わらず部屋は薄暗い。

 母親がゆっくりと部屋へと入って行ったが、三人は入口から何故か入れずにいる。

「美鈴?……ッ」

 何かを踏む音がすると母が足の裏を見て何かを確認している。

 何だかおかしい。先程まで部屋の暗さも同じなのに、何かが違う。

 その違和感から三人が部屋に入れずにいるのは、本能だったのかもしれない。

「美鈴?」

 さらにベッドの方へと母親が進んでいくのが分かったが、ベッドの端は暗闇の巣窟と化し姿が見えない。

 母親はベッドから一旦離れると、部屋のカーテンを一気に開ける。まだ夕方になりきっていない外から、

部屋の闇が一掃された。

と同時に母親が聞いた事も無い声を張り上げたが、一気に刺し込んできた光で少しまだ目が馴れなかった。

 そして数秒後に目に飛び込んできたのは、首から上があるべき部分はなく、

そこからポンプから水が噴き出す様に音を小さくたてながら、赤い噴水が小さく上がり、

美鈴の首は美鈴の掌に乗り、目は見開かれ舌はだらしなく口から涎と共にぶら下がり、

部屋の天井には元々勢いがあったであろう赤い噴水の痕跡がある。

部屋の壁には自由に飛び散った血。地獄だと優子は思ったが、

その直後に暗闇の中に落ちてしまっていた。



 次に目を開けると、見た事がない真っ白い天井に薬品の香り。

頭には硬い枕と重い布団が優子の上に掛けられていた。どれもこれも自分の家の物ではない。

 まだ完全に覚醒しきっていない頭に、女の人の話し声が聞こえ来る。

「……た? 小学生の運ばれてきた子供の話」

「ありえないわよね。あんな死に方」

「そうそう。自分で自分の首を切り落とすなんて」

 (首を切り落とす……そうだ美鈴ちゃん……)

「優子? 優子」

 霧がかった思考のまま声のする方に頭を動かすと、顔に皺はあるもののそれが祖母の優しさを表し、

目は瞼が少し垂れてはいるが、大きな目をした祖母が今にも泣きそうな顔で優子の手を握り、

名前を呼んでいる。

(そう言えば、おばあちゃんが来るって)

「大丈夫かい」

「……おばあちゃん」

「おばあちゃんが来たからもう大丈夫だよ。おばあちゃんが優子を守ってあげるからね」

「守る?」

「優子、あんたもしかしてカゴメをしたんじゃないか」

 霧が一気に吹き飛ぶような感覚がくると、完全に覚醒した脳が祖母に初めて助けを求められるかもしれないと、今まで不安をぶちまける様に、

「美枝子ちゃんが死んでからしばらく、美枝子ちゃんがいるように遊んでたの。でもカゴメをした時に美枝子ちゃんの名前を言ったら美枝子ちゃんの声がして、それから勝くんが死んで、み、美鈴ちゃんが。今度は優子かもしれない」

 時にしゃくりあげ泣きながらも必死に今まで大人に言えなかった事を、祖母は静かにそうかいそうかいと言いながら、優子を抱きしめ頭をなでながら落ち着かせるように、話を聞いてくれている。

「大丈夫だよ。おばあちゃんが助けてあげるから。カゴメで死んだ子の名を言ってはいけないんだよ。子供がたくさん集まってきて、連れて行ってしまうからね。でも優子を連れて行かせたりしないから安心おし」

「でも! でも!」

「大丈夫。おばあちゃんに任せれば全部大丈夫だから。お母さんを呼んでくるから、もう少し寝ておきなさい。優子。おばあちゃんはずっと優子の味方だからね」

 祖母が母親を呼びに病室を出ていくと、優子の話を聞いた母親が病室に入れ替わるように入ってきたが、

祖母の姿は一緒になく、それが祖母の姿をみた最後となってしまった。

 なぜなら翌日、神社の境内で祖母の首が切り落ちた遺体が発見されたのだ。

 そしてそれから、不思議な事に首が切れた死体が町から出ることはなかった。




怖がりではない自分が書いたので、怖いかどうかは自身で分かりません。

企画は8000字までだったので、中途半端な終わり方になってしまっています。

本当はこの先に話が続くのですが、第二部と言うことで

不定期UPしていこうかと考えています。

読んでくださってありがとうございました。

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