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かごめ  作者: 安土朝顔
3/7

陰湿

「勝、首がちぎれてたんだって」

「え、でも付いてたよねさっき」

「あれは手術して、繋げたらしい」

 二人の会話を聞いていた愛が会話に参加し始める。

 愛は長い黒か髪に目は少し猫目のように上がっているのが印象的だ。

「でも手術って生きてる人にするもんだよ。死んだ人間に手術はしないよ」

「死体専門の医者がいるんだよ。でも……大人達が言ってたんだ」

「何を」

「勝は車に轢かれたらしんだけど、不自然だったって。まるで引っ張られるように車の前に飛び出てきて……」

「でも車にはねられたくらいで、首が」

 頭のいい愛がさらに疑問を透に付きつける。

「ああ、それが……勝の首の傷が、引きちぎられた様な痕だったらしい」

「そんな事、ある訳ないじゃない! 馬鹿みたい」

 愛が言い捨てて直ぐに、木の下へ各々の親が迎えに傍まで来ると、無言で互いの母親が軽く会釈を交わし、手を引かれて線香の香りが届かない方へと歩きだし散っていった。

 手を引かれながら優子は、透たちが話していた事に、不安と言い知れぬ恐怖が背後に付き纏っている様な

そして、それがいつか自分を飲み込みこみに来るような、黒に近い灰色の塊が直ぐ足元まで迫っている感覚を、体全体で感じずにいられなかった。

 翌日学校へ行くと、美枝子の机と勝の机には白い花が一輪ずつ飾られ、クラスの色は他のクラスが明るいのに対し、曇天が天井を覆い尽くしているような鬱蒼とした雰囲気に包まれている。

 教室には愛、透、美鈴はいつもならば塊になり談笑しているのに、昨日の今日で気持ちに余裕が無いのか、各自が自分の席に座りただ時間の経過を待っているようだった。

 優子も昨日から感じている嫌な嫌悪感から、誰とも話す気力はなかった。

 チャイムと同時に先生が教室に来ると、勝の不幸を嘆く事から始まり、それが終わると通常授業へと移り変わる。

 全ての授業が終わる事には、天井に張り付いていた曇天はなくなり、少し雲が残ってはいるが教室は少し明るさを取り戻して来ていた。

 朝はバラバラだった4人は下校時刻には集まり、いつものように一緒に帰ったが、誰ひとり何も話さず、

それぞれの家に向かう道へ出ると、

「じゃあ」

と短く声だけを出し一人、また一人といなくなっていく。

 最後にはいつも優子だけになり、最後の別れ道で愛がいなくなると、帰宅の道をいつものように歩いていく。

 一人になって数歩歩いた時、誰かが後ろから付いて来ている気配がした。

 歩調を止め一呼吸置き、一気に振り向いた。

 だが後ろには誰もいない。



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