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かごめ  作者: 安土朝顔
2/7

葬式

 その夜、優子の家の電話が鳴り、母親が電話口で深刻な顔をしながら話をしているのを、リビングのソファーでテレビを見ながら流す様に聞いていると、勝くんという名前を母親がだした。

 そして電話を切ると母親が振り返り、

「勝くんが死んだって……今日はお通夜で明日がお葬式だそうよ。優子……」

 今日、先程まで元気一緒に遊んでいた勝が死んだと聞いた優子は、急に怖くなった。

 あの時、美枝子の声がして美枝子が勝を連れていったのではないか? そして優子は泣き声を上げながら母親にしがみついた。

「優子、相当ショックなのね……さ、今日はもう寝ましょう」

「いや! 一緒に寝る。お母さんと一緒に寝たい」

 小学5年にもなり泣きじゃくる娘を哀れに思いながら、母親は一晩中、優子を抱きしめて寝たが、優子は勝が死んだ事より、美枝子の存在が怖くて泣いていたのを母親が勘違いしているのに気づいてはいたが、勝が死んだ事で泣いたのではないと言うと、冷たい子と思われると思って口には出さず、赤子のように母の胸に顔を埋め必死に眠りに付いた。

 翌日、近くのお寺で勝のお葬式が行われ、喪服に真珠の首飾りをした母親に手を引かれ門をくぐった。

 視界が違う大人たちは一様に深刻な顔つきで本堂に向かい、またある大人は本堂から出て来て涙を流しハンカチを頬にあてている。

 近づくにつれ線香の匂いが徐々に農濃さを増し、それが勝へとつづく道しるべかのように、香りの中を歩いて行く。

 正面には昨日と同じ笑顔で笑っている勝の写真が飾ってあったが、その縁は花で彩られ勝の笑顔を悲しい笑顔に変え、その下の方には大きくは無い、木の入れ物が置いてある。

 その中に勝が入っているかと思うと、優子は恐ろしくなりその場から逃げだしたくなったが、視線の右端に透、愛、美鈴の姿が見え心に出来た恐怖が和らぎ、母親と共に木の入れ物へと近づいて行く。

 靴を脱ぎ3段ほどある低い階段を上ると、勝の母親が目を腫らし父親に肩を抱かれ悲しみを垂れ流し、

父親も母親に寄り添う様に、畳みの上に染みを作りながら涙している。

 優子の母親が、勝の両親の前で膝をおると、

「この度は……何と言ったらいいか……」

 息子を亡くした両親には慰めの言葉など意味がない。

 勝の母親は嗚咽しながら優子とそこにいた3人に言葉を投げてきた。

「皆、勝に……お別れをしてあげて」

 しゃくりあげながら大人に言われた子供達は、それに従う事しか出来ず、木の箱の上にある小さな窓を覗いた。

 そこには昼寝をしているかのように寝ている勝がいた。

 だが顔は白く、血液の循環が途絶えている事を示し、周りを花が囲み耳、鼻から綿が詰められそれが昼寝ではなく、体の機能が停止した肉塊ということを示している。

 少し不思議な気持ちを持ったまま親たちの方を振り返ると、子供達の親はいつの間にか数段の階段をおり何か話し込んでいる。

 子供達も勝にさようならと心の中で別れを告げると、境内を入って直ぐ右手にあった大きな木の下に移動し、黒い服の大人が生きかう姿をただぼんやりと見ていた。

「なあ、聞いたか?」

 頭はスポーツ刈り、目はクリっとした透が話しを切り出した。

「何を?」

 聞き返したのは、おかっぱで目めは細いながらも黒目が印象強い、おっとりした性格の美鈴だった。


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