危険な童謡遊び
かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる
夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 後ろの正面だあれ?
優子が住んでいる近くの横断歩道のメロディーが、
年を感じさていた色を持った信号機から、真新しいものに替わってメロディーも
一新されてしまったようだった。
童謡のカゴメカゴメの歌。
信号が青になり、数人の人が横断歩道を渡って行くが、優子は正面を見つめたまま動けないでいる。
青の信号が点滅を始め、急ぐ歩行者が優子の肩にぶつかって我に返る事ができたが、
また信号は赤になり、次の青信号まで待つ羽目になってしまった。
鳥井優子は大学に通うため今年の春から一人暮らしをしている。
駅からは歩いて15分程で自転車であれば5分ほどで駅には着く事ができるが、
最近運動不足なため、歩いて駅まで歩くのが日課になっていた。
優子にとってこの歌は聞きたくも無いメロディーだった。
小学生の頃によく友達と遊んでいたカゴメは、最悪の思い出になってしまった。
当時、仲が良かった勝くん、透くん、愛ちゃん、美鈴ちゃん、美枝子ちゃん、
そして優子でよく近くの神社で遊んでいた。
だがある日突然に、美枝子ちゃんが風邪をこじらせて亡くなってしまう。
仲の良かった優子を含め5人は、最近まで一緒に遊んでいた美枝子の死を受け入れられず、ある事をし始めた。
美枝子ちゃんがいる様に皆で遊んだのだ。そして皆で何度目かのカゴメカゴメの遊びをした時、
「後ろの正面だあれ」
と名前を言う時に、勝くんが美枝子ちゃんの名前をだした。
その時、死んだはずの美枝子ちゃんの「はあい」という声を皆が聞いた。
美枝子ちゃんがいる様に遊んでいたのに、声を聞いたとたん一瞬の間があり、
子供達の顔が蒼白へと変わると、示し合わせたように各々が叫びながら皆が神社から逃げ帰った。
いつの間にか、いるかの様に遊びながらも自然に美枝子ちゃんが死んだのを、
皆が受け入れだしていたのに、ここにはいるはずの無い美枝子ちゃんが返事をしたのだ。