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西洋館の怪

作者: 遥(はるか)奏汰(かなた)
掲載日:2026/08/07

夏夜のひんやりとした静けさと、忍び寄る恐怖を描いたホラーショートストーリーです。

月明かりのない夜、使われていないはずの洋館から響く不穏な音。静寂を切り裂く怪異の恐怖を、ぜひ音の臨場感と共にお楽しみください。

セミの鳴き声が途絶えた真夏の夜、僕たちは町の外れに立つ洋館を目指していた。噂では、月が出ない夜、誰もいない館から「ある音」が聞こえてくるという。

鬱蒼とした森を抜けると、闇の中に朽ちた赤煉瓦の建物が浮かび上がった。鉄門をくぐった瞬間、肌を刺すような冷気が立ち込める。懐中電灯の光が照らす重厚な扉の前に立ち、僕らは息をのんだ。

「……ねえ、もう帰ろうよ」

友人が震える声で呟いたその時、館の奥から音が響いた。

――ギギギ、ギギギ……

それは古い車輪が軋むような、けれどどこか生々しい肉擦れに似た音だった。壁を抜け、耳元へと一直線に近づいてくる。真夏のはずなのに、全身の血が凍りつく感覚に足が竦む。

逃げ出そうと振り向いた僕たちの背後で、今度は静かな囁き声が重なった。

「見つけた」

音はもう、僕たちのすぐ耳元で鳴っていた。


     【了】

お読みいただきありがとうございました。

真夏の夜に感じる「理由のない冷気」と、静寂の中に響く「音」の生々しさを意識して執筆しました。

暗闇の中で耳を澄ませた時、もしあなたの部屋のすぐ外から小さな音が聞こえてきたら……どうぞ後ろを振り返らないよう、お気をつけください。

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