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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第十三章 旅先の災厄
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#88 一人満喫する市内観光


 ヒトには三大欲求と呼ばれるものがある。

 食欲、睡眠欲、性欲。

 しかし私は、性的な行為に全く興味がなく、20数年の人生の中で、性的な欲求や衝動を感じたことは無い。

 だから私の場合は、普通のヒトなら持ち合わせているその性欲分が、他の食欲と睡眠欲の二つに振り分けられているのだと自己分析している。それも、食欲のほうへ多めに。

 

 札幌グルメは、そんな私の食への強欲を満たしてくれた。

 濃厚で独特のコクのあるスープにコシのある中太ちぢれ麺の味噌ラーメン。

 白米の上にこぼれそうなほど盛りつけられ光り輝く宝石のようなイクラ丼。

 新鮮で脂の旨みが強く歯ごたえのあるサーモンにイカにホタテなどの刺身。

 醤油ベースの甘辛いタレに漬け込んで味をしっかり染み込ませたザンギ。


 どれも素晴らしい。

 国語教師の私でも、語彙力が追い付かないほどの美味の数々。

 40時間も地獄の船旅に耐え抜いた甲斐があったというもの。あれは、この札幌グルメへ辿り着くための試練だったと、今なら思う。折原先生の代理として私が指名されたのも、きっとこの札幌グルメに導かれる天命だったのでしょう。


 札幌市中央卸売市場近くの海鮮物の食堂にて数々の美味を綺麗に平らげ、食欲を存分に満たした私は、我が学園の生徒を見回る職務へ戻るべく場外市場内を食後の運動がてらに散歩し、何食わぬ顔でいくつかの班に声をかけてから、次の目的地へ向かうことにした。


 再び地下鉄東西線に乗り南北線に乗り換えて、中島公園駅で下車して北海道立文学館へ向かって歩いていると、向こうから、遠藤さんの班が歩いてきた。


「あ!笹錦先生!もう船酔いは大丈夫なんですか?」


「遠藤さんと清水さんと近田さんと新田君と小泉君と太田君、こんにちは。ご心配かけましたが、体調はもう大丈夫ですよ。遠藤さんたちは、文学館へ行ってきたのですか?」


「そうなんです!でもお昼時間になったからランチにしようと思って、みんなで相談しながらお店を探してたんです」


「なるほど。私の事前リサーチでは、この辺りは飲食店はほとんどありませんので、大通公園まで戻ったほうが良さそうですよ」


「え!?そうなんですか?」

「ほら!私が言った通りじゃん!」

「だったら、次の時計台まで行って探したほうがよくない?」

「腹減ってもう限界・・・」


「先生、事前リサーチしてたってことは、食べるところも色々調べたんです?」


「ええ、もちろんです。むしろ、今回は北海道のグルメを満喫することが、最大の目的ですので」


「先生、いつも通り全くブレませんね。なら、先生もランチをご一緒しませんか?先生のオススメのお店とか」


「せっかくのお誘いですが、すでに中央卸売市場の近くでお昼は済ませてきましたので、皆さんだけで行ってください」


「え!?早くないです???なに食べてきたんですか?」


「味噌ラーメンとイクラ丼とお刺身とザンギなどもろもろですね。札幌グルメを存分に堪能したあとなので、しばらく胃袋的な余裕はありませんよ」


「え、一人で?食べ過ぎじゃないです?」

「うわぁ、私もイクラ丼、食べたい!」

「ザンギもいいじゃん!買って帰って、夜食にするか!」

「俺たちも早く店探しに行こうぜ!」


 ランチに食べたメニューを教えると、遠藤さんたち6人はお腹を空かせた子豚のように騒ぎ出し、大通公園へ戻ることにしたらしい。


「では、私は文学館へ行きますので、皆さん、くれぐれも車などには気を付けてくださいね」


 再び一人になって歩き、北海道立文学館へ向かった。

 入館料を払って中へ入ると、人の出入りは多いのに、静かで落ち着いた雰囲気だった。


 ああ、ここは、初めて来たのに懐かしい匂いがする。

 こういった書物や資料を取り扱う博物館は日本全国色々と回りましたが、ここ北海道でも同じですね。


 ちょうど、北海道に縁のある多くの作家の作品を展示する展覧会が開催されていたので、ひと通り見て回り、途中で学園の生徒さんを見かけると声をかけつつ、パンフレットや絵葉書などを購入してから文学館をあとにした。


 当初は、市電とシャトルバスでもいわ山ロープウェイへ向かう予定でしたが、最後に大通公園近くでスープカレーを食べることにしたので、移動時間を少しでも短縮させるために、タクシーで向かうことにした。

 30分もかからずに到着すると、幸い混雑はしていなかったので、さっそく往復のチケットを購入してロープウェイに乗りこんだ。

 ゴンドラから見える札幌市内の景色に心を躍らせ、中腹でもーりすカーに乗り換え、山頂を目指した。


 山頂の展望台では、カップルばかりで学園の生徒は見かけなかった。

 生徒さんたちが居ないのなら、ここでも少しだけ引率の職務を忘れても問題ないでしょう。

 眼下に広がる札幌市内を、しばらくなにも考えずに眺めていた。

 やはり、私は高いところが好きなのは、こういう街並みの景色を眺められるからなのでしょう。フランスのモンマルトルの丘から望むパリ市街や、更科学園の本校舎5階からの景色も好きですが、ここから見える札幌市街も負けず劣らず、なかなかです。


 ですが、さすがは北の大地、北海道。まだ秋だというのに、風が冷たい。

 5分ほど眺めていると、体が冷えてきたので下山することにした。

 展望台からスマホでタクシーを手配してロープウェイに乗り、下山すると、手配したタクシーがすでに待っていたので速やかに乗り込み、大通公園へ向かった。

 移動中の車内では、大通公園近くでスープカレーのお店をスマホでリサーチして、運転手さんへ告げて直接向かってもらうと、30分ほどで目的のお店に到着。


 時刻は、15時を過ぎたところ。まだ間に合う。

 すぐに店内に入ると、カウンター席には野生の体育教師が一人で座っていた。








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