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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第十三章 旅先の災厄
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#87 復活の引率教師


 修学旅行、三日目の朝。

 目が覚めると同室の伊崎先生は起きてすでに着替えており、あと2時間ほどで苫小牧へ着くとのことで、重い頭と体を動かして、私も顔を洗ってからメイクや着替えなどの身支度を始めた。

 仙台港へ寄港している間、ずっと眠っていたおかげで逃亡する機会を逃した私は、結局、昨日も船酔いで一日中苦しみ、三日目になってもまだ良くならないままでしたが、出航直後のあの絶望感に比べれば、あと少しで陸に上がれると思うと、スキップしたくなるほど気持ちは軽やかだった。

 着替えを終えて荷物をまとめると、荷物を持って集合場所のレクリエーションルームへ向かう。


 まだ集合時間には早いのに続々と生徒も集まって来ており、クラスごとに点呼を取り終えると、2組担任の小門先生がスケジュールの説明を始めた。

 三日目のこの日は、苫小牧に到着して下船後は、朝食を食べてからバスに乗って札幌市へ移動し、11時から16時まで班別での自由行動になる。各班ごとに事前に見て回るコースと時間の計画を立てており、職員は手分けしてトラブルや問題行動など無いかの見回りをする。

 2年生は180名で5クラス。ひとクラスあたり36名で6班なので全体で30班になる。引率の職員が8名なのでなかなか大変ですが、ひと学年10クラスもあるような公立高校に比べればマシだと思う。

 説明が終わり、ほどなくすると、船の汽笛が鳴り響いた。どうやら入港するようだ。


 ようやくです。ようやく陸地です。

 この時を、どれほど待ち望んだことか。

 神を信じていない私でも、この時ばかりは神に感謝します。

 

 あ、もしかして、実はモーセも船が苦手で、海を割ったのでは?

 なるほど、そうでしたか。モーセさんも船に乗りたくなかったのですね。なんだか急に、親近感を覚えます。ふふふ


 無事に接岸すると、スキップしたくなる衝動を抑え、生徒達の列に続いて下船した。


 さよなら、フェリー。

 さよなら、太平洋。

 もう二度と、あなたたちの元へは戻りません。


 そして、こんにちは。初めまして、北海道。

 揺れの無い大地の、なんと素晴らしいことか。

 海上に出たことで、今まで当たり前に生活していた陸上のありがたみを知るだなんて、皮肉なものですね。


 点呼を終えてフェリーのターミナルを出ると、朝食のために少し離れたレストランへ向かった。

 不思議なもので、船上ではあれほど食欲が無かったのに、下船した途端、食欲が湧いている。これなら残りの三日間、存分に北海道グルメを堪能できますね。


 札幌ではスープカレーに味噌ラーメン、登別では閻魔やきそば、洞爺湖のわかさいも、函館は塩ラーメン。そしてウニやイクラを始めとした多くの海鮮。せっかくの北海道ですからね、事前リサーチに抜かりはありません。

 お昼を考慮して軽めに朝食を終えると、チャーターしていたバスに乗り、札幌市(スープカレーと味噌ラーメン)へ向かった。

 移動中のバスでは、体調と食欲を少しでも回復させるために仮眠をとり、2時間弱で札幌市内のホテルに到着するころには、頭も体もスッキリ軽やかに回復していた。


 ここから生徒達は、16時まで班ごとに自由行動。

 そして職員も分担して、生徒たちの行先に同行するなり見回りをすることになる。私は、札幌市中央卸売市場、北海道立文学館、もいわ山ロープウェイを見回る担当になっていた。

 ちなみに、多くの班がルートに入れているスポットなのは間違いないのですが、実は、個人的に行きたかったところ(グルメスポット、文芸スポット、景観スポット)を希望に出したら、それがそのまま採用された。


 荷物はホテルに置いて解散となると、一斉に移動を開始した。

 地下鉄東西線に乗り、二十四軒駅で下車すると、少し歩いて札幌市中央卸売市場の場外市場へ到着。

 ウチの生徒の姿は見かけないので、まだ来ていないようだ。

 皆さん、分かっていませんね。ネットでリサーチした情報では、札幌市中央卸売市場はお昼には混雑するので、早めに行くべきなんですよ。だから私はこうして真っ先に来て、毛カニとタラバカニとイクラ、それと利尻昆布と鮭の塩漬けを購入し、宅配の手続きも済ませて、『次はお昼をどこで食べようか』と、余裕ある行動がとれるのです。


 市場の近隣には数多くの飲食店が並んでいた。

 その中の1つの店の前で足を止めた私は、店先のメニュー表を睨むように見つめ、熟考していた。

 そこには、海鮮丼など海の幸のメニューが並ぶ中に味噌ラーメンもある。しかし、もう1つの目的だったスープカレーが無い。


 ここはひとまず味噌ラーメンを確実に押さえ、スープカレーは3時のおやつにすべきか。もいわ山ロープウェイのあとで早めに大通公園に戻れば、スープカレーを食べる時間はあるでしょう。でも、今朝まで船酔いで苦しんでいた私の胃袋は、耐えられるのだろうか。味噌ラーメンとスープカレーだけなら、大丈夫でしょう。しかし、いま目の前のお店に入れば、恐らく味噌ラーメンだけでは済まない。きっとイクラ丼にも手を伸ばしてしまう。


 どうする、私。

 どうする、笹錦真乃。

 いまこそ、人生最大の岐路。

 即断即決が信条の私をこれほど悩ませるとは、げにおそろしや、札幌グルメ。


 30秒ほど悩んだ末にお店に入り、威勢の良い店員さんに向かってこちらも威勢よく、「味噌ラーメンとイクラ丼!あと刺身一人前とザンギもください!」と注文した。

 







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