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#45 期末試験総括と入部希望者


 期末試験の採点作業が終わり、今回も自主的に総括のレポートを作成した。


 学年平均が69.3点、満点が12名で赤点は今回もゼロ。

 文系クラスは平均75.5点、理系クラスでは60.0点。

 前回の中間試験では学年平均が65.5点だったので、全体的に上がっているが、70点台にギリギリ届かなかったのが惜しい結果となった。

 そしてその中身ですが、今回特筆するべき点は、地道にやっていた小テストの効果で、理系でも文法問題の出来が良くなっていたことと、2回目ということで傾向を把握できていたためか、文系での作文問題の出来のバラツキがあまり見られず、底上げができていたこと。そのおかげで文系クラスの平均点が中間よりも5点も上がっている。


 今後の課題点としては、試験範囲や小テストなど事前にお膳立てしていたからこそ、前回よりも良い結果となった点。大学の入試問題では、当然事前に範囲の予告などのお膳立ては無い。

 なので、どのような作品や問題が出てきても対応できる幅広い知識が必要になる。つまり、多くの古典文学に触れておくことが必要になるだろう。

 それでも、高等学校の古文で扱われる作品はある程度まで絞られるので、それらを中心に日常的に読み込んでいれば、十分に対応できる。


 といった内容のレポートを作成して、前回同様、杉浦先生と水戸先生に読んでもらったら、水戸先生から「前回のレポートと併せて預かりますね。悪いようにしませんから。ふふふ」と言われた。

 なにか悪い予感がしましたが、先輩職員にそう言われたからと今更引っ込めるわけにもいかず、預けることになった。


 ◇


 期末試験が終われば、ようやく部活動の再開ですが、7月の始めの試験週間に入ったばかりのころに、夏休み中の部活動に関する説明会の案内が回ってきた。


 具体的には、夏休み期間中には練習試合や地区大会や全国大会、そして夏合宿など校外での活動が多くなる。当然それらの行事は顧問が責任者として引率することになるので、問題行動や事故などのトラブルが起きないように事前に注意事項やルール、予算や申請などなどに関する説明会だ。


 その説明会が期末の試験週間中にあり、私も読書部の顧問として出席した。

 説明会の内容自体は一般的な範囲での内容で、読書部は練習試合も各種大会も無縁なので特筆することはありませんでしたが、1つだけ興味を惹かれたものがあった。

 そう、夏合宿。

 中高と帰宅部で大学ではサークルにすら入らなかった私には、部活動の夏合宿というものを経験したことがなかった。そんな孤独な青春を送った私にとって、夏合宿という言葉の響きは、一種の憧れのようなものがある。


 ということで、期末試験後最初の部活動で、部員のお二人に夏合宿を提案することにした。

 放課後、読書部のホームグラウンドである図書室へ出向くと、遠藤さんと里子さんはすでに来ていて、いつもの窓際の六人がけのテーブルに座っていたが、対面にも一人の女子生徒が座っていた。


「こんにちは。みなさん、期末試験ごくろうさまでした」


「あ、先生、こんにちは」

「こんにちは。試験が終わった途端、いつもの先生に戻ってますね」


 私が挨拶をすると、遠藤さんはにこやかに笑顔で挨拶を返してくれて、里子さんは、まるで試験期間中の私が普通じゃなかったようなことを言い出した。


「私は試験期間中も、いつも通り平常運転でしたよ?」


「先生、試験期間の後半、修行僧みたいな虚無な表情してましたよ?」


「そ、それはきっと、六道輪廻の縮図から人間道に戻ることができなくて・・・そんなことよりも、この方はどうされたんですか?」


 30年後に出家して仏の道を説く旅に出るビジョンを話したところで、またお二人からダメ出しされることが目に見えていたので、話題を変えることにした。

 私が話を振ると、その女子生徒はペコリと頭を下げた。

 図書室で何度か見かけたことのある生徒でしたが、私が古文を受け持つ2年のクラスでは見ない顔なので、1年生か3年生でしょう。名札には、栗林と書かれている。

 真面目で大人しい印象で、図書室で見かける時はいつも一人で座って文庫本などを読んでおり、私たちと同じ文系インドア女子の匂いのする女子生徒だった。


「えっと、1年3組の栗林睦美くりばやし むつみさんで、読書部への入部希望だそうです」


「それで今、新入部員の募集をしてないことを説明してたところで」

 

 立ったまま話していては目立つので、栗林さんの隣に私も座り、会話を続けた。


「なるほど。栗林さんは、どうして読書部に入りたいと考えたんですか?」


「あ、あの、わ、わたしも読書が、だ、大好きで、笹錦先生と先輩方が、い、いつも楽しそうに、読書談義してたり、は、俳句の評論、す、すごく羨ましくて」


 栗林さんは、つたない言葉だけど、熱意のこもった真っすぐな眼差しで話してくれた。






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