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#43 夏の始まり


 7月に入り、期末の試験週間が始まると部活動もお休みとなって、どのクラスでも、まるで夏休み前に追い込みをかけるかのように試験勉強一色になり、そして、教職員も試験モードに入った。


 私の受け持つ2年生の古文では、中間試験以降は、毎回授業で小テストを実施するようにした。この小テストでも古語辞典を使用可にして、期末試験の文法問題を小テストの中から出題すると、予告もした。

 これらは中間試験で浮き彫りになった問題点(従来の受験対策としての暗記問題に力を入れてしまう)に対して、辞書を使いこなして調べる力をさらに強化することと、日常的に辞書を使って問題を解くことに慣れてもらうことでの、生徒の意識改革を目的としていた。


 そして、その期末試験では、今回の点数配分も文法問題を20点、現代語訳を30点、情景描写の作文問題を50点と中間試験と同じにして、当然古語辞典の持ち込みも可にした。

 事前に試験問題の傾向や点数配分を聞いた生徒たちの反応は、中間試験に続いて2回目となると要領を得ているのか、授業での取り組み(作品の掘り下げ)に力を入れる生徒が多く見られた。

 また、授業以外で私のところへ質問に来る生徒も増えて、質問内容も文法や現代語訳よりも、試験範囲である『古今和歌集』の作者の心情や、当時の価値観などを質問してくる生徒がほとんどで、生徒達も私(出題者)の意図を読んで試験勉強に取り組んでいる手応えを感じた。


 さらにこの時期、国語教師には、期末試験の準備以外にも並行してやらなくてはいけないことがある。夏休みの宿題と、夏休みに入ってすぐにある夏期講習の準備だ。


 学園には年間を通して、教材専門の出版各社から様々な教材やテキストのサンプルが送られてくるので、どの先生方もそれらの中から夏休みの宿題や夏期講習のテキストを選んでおり、古文の教科担当の杉浦先生と水戸先生もそうする予定だと仰っていた。


 私も一応は、ひと通り目を通してみましたが、どの教材も文法や語訳問題が多く構成されており、私のカリキュラムとは方向性が異なるものばかりだった。

 なので、出版社から出ている教材を使う道はあっさり捨てて、ここでも私なりの独自路線で行くことにした。


 まず、夏休みの宿題は、3つの課題の中から1つ以上を選んで提出させることにした。

 ①万葉集(20作を選出した参考資料を用意)の中から短歌を1つ選び、その短歌の作者の心情を100文字以内で解説文を作成。 ※資料以外から選んでも可

 ②好きな古典作品を読んで200文字以内で感想文を作成。

 ③夏休みに体験したことを詠んだ短歌を作成。

 

 この3つの狙いは、生徒に自主性を持たせること、読解力や感受性の強化とその言語化、短くまとめるための文章力や構成力の訓練。

 そして、①②に必要な現代語訳は、現代語訳版の書籍を使用しても、自力での語訳でも、ネット検索でも可とするが、語訳の手段も一緒に申告させることで、生徒の傾向調査も実施。

 宿題で古典の現代語訳を課しても、どうせネットで検索すれば、すぐに答えが出てきてしまいますからね。だったらそれを禁止せずに、語訳ではなくその先の深掘りや解釈、読後の感想を課題にすれば良いとの判断からそうした。


 そして夏期講習。

 こちらは、学力の向上を目的とした五日間のカリキュラムで、参加も受講する教科も生徒が選べる。但し、通常の授業料とは別に受講料を徴収するので、ある意味、通常の授業よりも生徒の学習意欲は高く、学力向上に直結するような内容が求められる。

 これに関しては、過去5年分の大学入学共通テスト(センター試験含む)の解説をすることにした。

 私の教育思想(暗記重視の詰め込み式学習からの脱却。古典文学の魅力に触れることを重視)に反するものになりますが、高校2年のうちに受験問題に慣れることを目的にしているのと、これ(過去の入試問題)だって辞書と同じく学習するための道具の1つという考えもあった。


 そんなこんなで、古典文学の研究(趣味の読書とも言う)の時間が全く作れないほど、業務とその他モロモロに忙殺された7月前半でしたが、無事に期末試験を終えることができた。

 ちなみに今回も残業はしてませんよ。その分、早く出勤していましたけどね。



 こうして、私立更科学園での1年目の夏が始まった。






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