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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第五章 理想と現実の同居
32/97

#32 セオリーと理想論


 学園長に言われたからというわけではありませんが、中間試験の試験問題を作るにあたって、同じ古文の教科担当で先輩の杉浦先生にお願いして、過去5年分の問題をコピーさせてもらうことにした。


「僕の場合は前年までと同じカリキュラムで授業を進めているから、試験範囲も同じにして、過去問題を少しいじって再利用してますよ」


「なるほど。それならイチから作る必要がなくて、楽そうですね。ですが、私の場合はすでに昨年までのカリキュラムは無視して授業をしていますので・・・」


「まぁ、その、なんだ・・・頑張って!1年目なんだからこれも勉強だと思ってね!」


「はい・・・ちなみに、杉浦先生は、もう試験問題の作成は終わったのですか?」


「うん、終わってるよ。早めに用意したほうが授業で生徒にテスト対策の指導しやすいでしょ?」


「つまり、手が空いているんですね?どうですか?試しに2年生の問題をイチから作ってみたりなんてしませんか?」


「なんで先輩の僕にやらせようとしてるの!?1年目の新任とは思えない大胆さだね!?」


「昔から、肝が据わっている子だとは言われていましたが、大胆というわけでは。こう見えても文系インドア派の地味な国語教師だと自負していますので」


「いや笹錦先生全然地味じゃないから。いま更科学園で一番目立ってるからね?とにかく、試験問題作ったらチェックしてあげるから、早めに作って持ってきてくださいね」


「はい、善処します」


 コピーさせてもらった過去問題をひと通り自分で解いてみた。

 やはり予想通りで、文法や現代語訳の問題が8割程度を占めており、私の授業内容では使い回すのが厳しい問題ばかりだった。

 分かってはいましたが、横着せずに取り組むしかありませんね。私なりの試験問題を作りますか。

 一応、考えはあるんです。ただ、それを形にするのが大変なのと時間を取られてしまうのがイヤで、悪あがきをしてみただけですよ。言うだけならタダですからね。

 ということで、古典文学の研究(趣味の読書)をする時間を削って空き時間に試験問題の作成に取り組んでいた。ちなみに、残業はしませんよ。残業したら負けだと思っていますので。


 試験範囲は枕草子のみにして、点数配分は、文法問題は20点、現代語訳は30点に減らし、あとの残り50点分は、好きな一節を挙げて、自分の言葉で情景描写を解説させる問題にした。作文問題のようで設問としては簡単に見えますが、感想文と違ってあらゆる回答を想定した本文の掲載範囲を検討した上で設定する必要があるのと、文法と現代語訳は減らしたことでの絞り込みも必要で、非常に難航した。


 そして、三日かけてなんとか作成した試験問題を、杉浦先生にチェックしてもらった。


「ええ!?辞書持ち込み可にしちゃうの???」


「はい。古語辞典はあくまで古典を理解するための道具です。日頃から使い慣れていれば効率よく利用できますが、慣れていないと1つ調べるだけでも時間がかかってしまいます。なので、常日頃から辞書を使い慣れておくことが重要であって、暗記するのに時間を割くのはナンセンスだと考えています。スマホで調べるのが当たり前の現代において、暗記する必要性ってあまり無いと思うのですよね。だったら、スマホと同じように、辞書の扱いにも慣れることを優先して、古文の本質である作品の魅力をより深く掘り下げることに重点を置くべきだと考えました」


「だから、試験勉強で暗記するよりも、辞書を使い慣れろと?」


「はい。授業でも普段から「分からなければすぐに辞書を開いてください」と口を酸っぱくして言ってますので、きっと大丈夫です」


「面白い取り組みだとは思うけど、大学受験を考えると勇気がいることだよ・・・」


「苦手意識を持たれるよりも、古典への興味を持ってもらったほうのが、受験勉強へのモチベーションにも繋がりますよ?受験勉強なんて、モチベーションが一番大事ですからね」


「確かにその通りだけど、やっぱり笹錦先生は大胆だね。僕には真似できない。とても1年目だとは思えないよ」


「セオリーが正解とは限りませんし、私の方法も間違っているかもしれません。でも、今の2年生はみんな、古文の授業を楽しそうに受けています。私はあの笑顔を信じていますので」








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