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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第四章 文化的アプローチと因果
25/96

#25 家庭科とは、すなわち女子力


 GW三日目。

 合唱部で練習の邪魔をした翌日は、文化部最後の砦、家庭科部の見学をさせてもらった。

 書道部も合唱部も生徒に気を使わせてしまったのは、失態だった。教師として、いえ、笹錦家の長女として、家名を汚したままでは先祖に申し訳が立たない。笹錦家の名誉を挽回せねば、美味しくお米が頂けなくなる。

 しかし、今日の家庭科には、私にも多少の心得はある。実家を出て一人暮らしをするようになってからは、ずっと自炊してきたし、針仕事だって手先が器用だったおかげで得意だった。

 つまり、笹錦真乃がこれまで隠してきた女子力を、遂にお披露目する時がきたというわけです。


 家庭科部の顧問は、同じ2年担当グループで2年1組の副担任の折原先生でしたが、この日は用事があるとかで、私一人で見学させてもらうことになった。家庭科部の活動拠点は、本校舎5階の家庭科教室。

 事前に折原先生から「その日は午前と午後で調理と裁縫の両方するそうなので、楽しみにしててください」と聞かされていたので、マイエプロンとおササニシキ10キロを差し入れとして用意していた。ええ、せっかくのチャンスなので、ササニシキの素晴らしさを家庭科部の方々にも広く知ってもらおうと。

 部活動が始まる9時に合わせて10キロ入りの茶色い紙製の米袋を担いで5階まで上がり、息を切らせながら家庭科教室を訪ねると、家庭科部の部員たちが出迎えてくれた。


「え!?笹錦先生、なんでお米担いでるの!?」

「なにかの罰ゲームですか!?」

「お上品で大人しそうな見た目なのに、炭鉱奴隷の真似して・・・」


「いえ、せっかくなので、差し入れにと思いまして」ゼェハァゼェハァ


「そ、そんな気をつかわなくても」


「これでも江戸時代から続く、豪農笹錦家の娘です。ササニシキの10キロや20キロ、なんともありませんよ」ゼェハァゼェハァ


「言ってることは立派だけど、今にも倒れそうなフラフラで言われても」


「来ていきなりで申し訳ありませんが、す、少し休憩を」ゼェハァゼェハァ


「あ、はい!冷たい飲み物用意します!」


「すみません・・・」ハァハァ


 少し良いところを見せようとしたばかりに、今日もまた失態を。

 まぁ、パフォーマンスとしてはウケたようなので、笹錦家的には良しとしましょう。きっと、ご先祖さまも喜んでくれているはずです。

 用意してくれた冷たいお茶をありがたく頂いたあと、自己紹介をして、家庭科部のメンバーも紹介してもらうことになった。

 家庭科部も1年の加入はまだなので、2年と3年で女子が6人と男子が6人。当然2年生は私が古文を担当しているので、知っている顔が何人かいた。しかし、意外なことに男子が半数を占めていた。料理や裁縫は女子のイメージが強いので、男子部員はいないだろうとすら想像していましたが、昨今のお料理男子ブームの影響だろうか。最近では男子でもお料理やお裁縫をするんですね。

 これは書道部に続いて、ここでも認識を改める必要がありますね。授業以外でも、生徒との交流は勉強になることが多いです。


 メンバー紹介が終わると、早速調理を始めることになった。普段はもっと出席率が悪いそうですが、今日は全員出席しているそうで、人数が多いし個々の料理スキルにも差があるとのことで、3つのグループに分かれて、グループごとに献立を立てて、役割分担しつつ調理に取り組んでいた。そして私も、せっかくなのでグループの1つに参加させてもらい、一緒に調理することに。ええ、名誉挽回しなくてはいけませんからね。

 こうやって生徒と一緒にないかを取り組む時間というのは、得意な料理ということもあって、思っていた以上に楽しく、時間が過ぎるのはあっという間で、試食タイムでも部員たちと一緒にわいわい楽しく頂き、食後も一緒に片付けて、午後の部の手芸パートになった。

 今日は私が見学に来ているからと、通常の活動での作品製作ではなく、初心者でも作れる簡単なものを作ることになった。

 私が教えてもらったのはニードルフェルトという技法で、羊毛を針で突いて形を整えつつ固めていくのだけど、コツコツとした地味な作業が好きな私は没頭してしまい、気付けば3時間以上無言で突いていた。

 そして出来上がったのは、5センチほどの黒猫のマスコット。もちろん、モチーフはピンフ。

 初めてのニードルフェルトでしたが、なかなかの出来栄えに満足していると、ふと部員たちの会話が聞こえてきた。


「笹錦先生って料理とかめっちゃ上手だけど、完全にウチらと同化してるよね?」


「あー分かる。顧問って感じじゃないよね」


「なにげに一番楽しんでたよね」


 しまった。

 得意分野の料理や細かい作業に夢中になりすぎて、完全に教師の立場を忘れて楽しんでいた。幸村先生からは「顧問は生徒たちの向上心をフォローするのが役目」だと言われていたのに、生徒以上に、私が一番楽しんでしまった。







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