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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第四章 文化的アプローチと因果
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#24 古文教師のアプローチ


 真乃様は敢えて聞こえなかったことにして、書道部の紹介をしてもらった。

 書道部はまだ1年生が入部していないので、2・3年生の部員数が11名の全員女子で、私が古文を受け持つクラスの子も何人か在籍していた。文化部だから、私と同類の文系インドア派ばかりが集まっているかと思っていましたが、今時の女子高生らしく、明るくてノリの良い子たちばかりだった。

 部の活動としては、個人での高等学校書道コンクールへの参加と、チームでの書道パフォーマンス甲子園への出場もしているそうで、思っていた以上に本格的に取り組んでおり、実績も運動部に引けを取らないほどだ。

 これまで書道部と聞くと、『地味で大人しい』と偏見を持っていたので、これからは認識を改める必要がありますね。


 書道とは、漢字圏特有の伝統文化であり、楷書のように正しく書くことだけではなく、草書のように崩した美しさを表現する、視覚に訴える芸術的側面が強い。それは、私が考える古典文学のリズムや音の美しさを聴覚に訴えるものに通じる、古くから日本や中国の誇る文化だと考えていた。

 また、日本特有の仮名文化でも分かる様に、文字や文章に美しさを求める美的感覚を強くもつ当時の人々(特に貴族社会)は、芸術や娯楽の溢れる現代と違って、日常の読み書きの中にも美しさを求めた。そういった文化の発展が芸術に昇華し、書道も古典文学も生まれたんですよね。


 それで、さっそく私も部員たちと一緒に、日本古来の視覚的芸術に挑んでみた。

 ちなみに、持参した習字道具は小学生から高校生まで使用していた物で、手入れはしてあったおかげでまだ使用可能でしたので、今日はそのマイ道具を使って、部員の子が用意してくれたお手本を見ながらその通りに書いた。


「笹錦先生、楷書はすっごく上手ですね」


「子供の頃からお手本通りに書くのは、得意だったんですよ」フフフン


 実は、手先は器用なほうなので、お手本の文字の位置や形のバランスさえ分析して理解できれば、真似するのは簡単なんですよね。

 

「じゃあ、草書体もやってみましょうよ」


「いいでしょう。任せてください」


 しかし結果は。


「なんと言うか・・・」

「うん、まぁ・・・」


「楷書と比べて、めっちゃ下手くそですね」


「シーッ!」

「それ言っちゃダメ!」

「みんな言わないように気を使ってたのに!」

「真乃様素敵❤️」


 お手本を真似して書いたつもりでしたが、この不規則性は分析するのは困難で、真似できるようなものではないということでしょうか。


「でも、これはこれで味があると思いませんか?」


「まぁ、うん・・・」

「そうですね、この止めは・・・いや、はらいのほうが・・・」


「書道は読めないと意味がないですよ?」


「シーッ!」

「それ言っちゃダメ!」

「だから!みんな言わないように気を使ってたの!」

「真乃様痺れる❤️」


 どうやら私には、視覚的芸術のセンスはないようです。



 GW二日目。

 書道部の見学をした翌日のこの日は、合唱部の見学をさせてもらった。

 合唱部は女子部員が24名と男子部員が3名の混合で、書道部と同じく私が古文を担当している2年生の知っている顔が何人もいた。部としての活動は、全日本合唱コンクールやNHK全国学校音楽コンクールなどに出場しており、過去には全国レベルでの優秀な実績のある部活動だった。


 合唱とは、様々な音域や声音を重ねることで生まれるハーモニーの美しさを表現するもので、ただみんなで声を合わせて歌うだけでなく、伴奏や指揮者、ソプラノ、アルト、テノール、バスといった役割分担があり、協調性や構成力も重要だと考える。

 しかし、聴覚の美的感覚を刺激するという点においては、私の考える古典文学と共通していると言えるでしょう。


 そこで、さっそく部員たちの美しいハーモニーに私も参加させてもらった。

 曲は小学校の音楽の授業で習い、私も知っている「怪獣のバラード」


 で、ノリノリで歌い終えた。


「まぁ、その・・・」

「声は凄く綺麗なんですけど・・・」


「音程がズレまくるから、引っ張られてこっちまで音程がずれちゃう」

「声が綺麗で目立つから、余計にね」


「シーッ!」

「気を使って言わないようにしてたのに!」

「せっかく気持ち良さげに歌ってたんだから、言っちゃダメ!」


 ええ、分かっていましたよ。自分が音痴なことくらい。

 つまり、私のような音痴は、お呼びではないと。







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