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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第四章 文化的アプローチと因果
22/112

#22 文系インドア派の消去法


 4月も終わりが近づき、私立更科学園に赴任してからひと月が経とうとしていた。

 毎日教壇に立って授業をして、お昼には持参したおにぎり2つを頬張り、たまに理事長や学園長の話し相手もして、空いた時間には図書室に入り浸る毎日を送っている。

 こうして客観的に見ると、新米教師としてはかなり優遇された環境だし、自由な時間もあって授業の準備の合間に古典文学の研究(趣味の読書とも言う)も出来るし、私は相当恵まれていると思う。


 ちなみに、泣かせてしまった理事長と学園長の件ですが、学園トップと新米教師の不和説が生徒のあいだで爆発的に広まってしまった。噂の内容が「理事長と学園長が新任1年目の女性講師を激怒させて、正座でお説教されていた」と少し尾ひれがついた程度だったので、私としては放置していましたが、保護者からの問い合わせが何件かあり、対応に苦慮した村上教頭の発案で、理事長&学園長と私の仲良しアピールを目的とした懇親会(食堂でお昼を一緒に食べて、お茶を飲みながらお喋り)を週に一度程度開催されている。

 週に一回程度とはいえ、貴重なお昼時間を奪われるのは不本意ですが、泣かせてしまったのは事実なので致し方ない。また、それとは別に体育教師に関しては、あの歓迎会後の熱血教師覚醒以降、特に以前と変化はなく、相変わらず体育教師スタイルで瞑想ばかりしていて、突然泣き出すことも無かったので、今のところエンガチョはしていない。


 そんな教員生活に慣れ始めたころに、授業以外の業務にも関わることに。

 当然と言えば当然ですが、私にも委員会と部活の顧問を担当するように業務命令が下った。村上教頭から言われたのは、「委員会は人手不足の美化委員をお願いします。部活動に関しては、特に指定はしませんので、笹錦先生がご自身で適正などを考慮してご希望を出して下さい」と。

 ちなみに「文芸部や百人一首部など、ありますか?」と確認すると、「無いです」とのこと。残念。

 GWの連休明けには委員会活動や部活動へ新一年生の参加が始まるので、私にもそれに合わせて準備しておくようにとの業務命令だった。


 委員会活動のほうは美化委員に決定済なので、あとはなるようにしかなりませんが、部活動のほうが困りました。中高とずっと帰宅部でしたし、生粋の文系インドア派の私には運動部の顧問は無理。となると、後は残されたのは文化部。

 吹奏楽に合唱部、家庭科部、書道部、華道部に茶道部。

 うーん・・・楽器は触ったこと無いし、華道も茶道もせっかちな私には無理ですね。消去法で残ったのは、合唱部と家庭科部と書道部。家庭科部は何をする部活動なのだろう。家庭科だから、お裁縫とお料理でしょうか?一応、どちらも社会人女性としての嗜み程度には出来ますが。

 もう少し調べてから検討しますか。GWまで残り数日ですが、GW中には文化部も積極的に部活動をするらしいので、出勤して見学させてもらうのが良さそうですね。


 部活動顧問に関する脳内会議が定時前に終わったので、腕時計の秒針を見つめつつ、心の中で17時ジャストへのカウントダウンを始めたところで、珍しく左隣の体育教師が話しかけてきた。


「あの!さ、笹錦先生!」


 隣の席なのに、相変わらず声が大きい。

 そして、退勤へのカウントダウン中に声を掛けてくる迷惑っぷりも相変わらずです。


「はい、なんでしょうか。もうすぐ定時なので手短にお願いします」


 先輩に向かって失礼な物言いになってしまったけど、退勤カウントダウン中に話しかけられて、ついキツイ態度をとってしまう。


「ぶ、部活動の顧問を担当すると、き、聞いたんですが!」


「ええ、教頭先生から、どの部活動を担当するか決めるように言われています」


「で、でしたら!剣道部はどうでしゅか!?」


 あ、また噛んでる。


「剣道部?」


「ハイッ!一緒に剣道しましょう!」


「まるで部員を勧誘するかのように仰っていますが、顧問は指導的立場なので、「一緒に剣道しましょう」はおかしいのではないでしょうか」


「あ、はい・・・」


 気になったので指摘したら、また落ち込んでしまった。別に落ち込ませるつもりは無いのですが、こういう時にいちいち細かい指摘をしてしまうのも、国語教師の性分だろうか。


「わかりましたよ。一度、見学だけはさせて頂きます」


「ほ、本当ですかッ!?」


 また声が大きい。おまけに今度はツバまで飛んできた。

 見学に行くと言っただけで、こんなに興奮するとは。今年27歳になる成人男性として、少しは落ち着きも必要かと。これも体育教師の生態ということか。






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