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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第三章 宿命の古文教師
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#20 熱血体育教師は伝えたい


 居酒屋梁山泊では、ほどなく女性陣だけでなく男性教諭の先輩方とも交流を深め、無事にササニシキの素晴らしさを理解して貰ったところでお開きとなった。

 あ、体育教師はずっと体育教師スタイルのまま瞑想してたので、放置しましたけど。


 解散となって、坂下先生はご主人が車で迎えに来てて、折原先生と山崎先生は二人で別のバーで飲み直すと言い、男性陣も各々迎えが来てたり残りはキャバクラへ行くと盛り上がっていたので、私は帰宅することにした。


「ごちそうさまでした。また月曜日からよろしくお願いします」と挨拶して一人で駅前のバスターミナルへ向かった。


 正直に言うと、職場の同僚とのお酒のお付き合いには最初は抵抗感があった。

 でも、こうして実際にお酒を飲みながらお喋りするのは楽しい時間だった。多分、私は職場の先輩や上司に恵まれているのだろう。皆さん、私のトークに呆れながらも付き合ってくれていた。大学では周りもみんな私の様な偏屈で拘りが強い人間ばかりだったので似たもの同士で気が合ったけど、高校時代の私は完全に浮いていた。

 まぁ、異性から異常に好意を集めていたせいで同性からは嫌われちゃってたというのが一番大きいのですが。

 だから、今日のように私のバカ話にツッコミを入れながらも笑って付き合ってくれる人は、私にとってはとても希少な存在でもある。そういう意味では、更科学園は私にとって居心地のよい職場になりそうだ。



 と、一人で考え事をしながら歩いていると、背後に異常な存在感を放つ気配を感じた。

 そう、ヤツだ。体育教師の気配だ。



 立ち止まって振り返ると、体育教師は私の視線に慌てた様子でアタフタして、最終的に口笛を吹きながら夜空を見上げた。

 

 はぁ、と思わずため息が零れる。

 こういう経験は幼少期から何度もしてきた。

 異性に後を付けられるのは日常茶飯事だった。


 だから私はいつも家から出ずに蔵に篭って書物を読みふけったり、トイトイと遊んでいたんだ。高校生や大学生になってからだって、警察に相談したのも一度や二度では無かった。


 私はこのモテ体質を『呪い』だと考えている。

 こんなふうに考えるのは、幼少期より母から『天命』の話を何度も聞かされていた影響だろう。もし本当に『天命』などというものがあるのなら、『呪い』だってあってもおかしくない。


 もう一度ため息を吐いてから、再びバスターミナルへ向けて歩き出した。

 相変わらず背後に体育教師の気配を感じるけど、無視することにした。

 バスに乗ってしまえば、体育教師だってどうすることも出来ないでしょう。


 でも私の考えは甘かった。

 ヤツは、私の物差しでは測れない異物なのだから、もっと警戒するべきだった。



「あ、あの!さ、笹錦先生!」


 うっ

 ここで声を掛けてくるとは・・・


 ここで立ち止まるのは危険だと考える前に、脚を早めた。


「ま、待ってください!さ、ササニシキ、じ、自分も好きなんでッ!」


 え?どっち?わたしのこと?それとも白米の方?


 週末の夜の駅前での公開告白に、思わず足を止めてしまう。

 だって、どっちのことを言ってるのか気になってしまったんだもの。

 一度気になってしまうと、確認せずにはいられないこの性分が恨めしい。



「じ、自分もおにぎりにはササニシキが一番だと思います!」


 立ち止まって背中を向けたままの私に追いついた体育教師が、背後から思いの丈を叫んだ。


 やっぱり、白米の方なのね。

 だったら、居酒屋でその話題で盛り上がってる時に言えばいいのに。


「・・・」


 私は背中を向けたまま返事をしなかったが、体育教師は続けた。


「子供の頃からササニシキに愛着がありました!理由がわかりませんが、ササニシキと聞くと大切なものだと思えたんです!」


「・・・」


 謎の告白にどういう反応をすれば良いのだ。


「そ、それで、さ、笹錦先生が職員室で声を掛けてくれた時も、自分が守らないといけない、た、大切なものだと思えたんでしゅ!」


 あ、最後噛んだ。


「だ、だから、その、夜道は危ないので、自分が送っていきましゅ!」


 あ、また噛んだ。


 ナイト気取りだろうか。

 体育教師も男ということですね。


 振り返って体育教師を見ると、両目からボロボロと涙を流していた。号泣だ。


 え、なんで泣いてるの?

 遂に熱血教師に覚醒した?

 スクールウォーズ的な?

 これだから体育教師って生き物は。



「あの、一人で大丈夫ですから」


「せ、せめてバス停まで」


「別に良いですけど、もう目の前ですよ?」


 そう言って、3メートルほど先にあるバス停を指さした。


「あ・・・」







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