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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第二章 現世での営みと再会
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#11 体育教師の存在感


 牧田先生が居眠りの末に騒いだことで唖然としている私を他所に、定刻通り、全体職員会議が始まった。

 ちなみに、私以外の他の職員は、誰一人牧田先生の奇行に触れることはなかった。恐らく、いつものことなのだろう。『体育教師とはそういう生き物』と言われたら、納得できる。私だって『国語教師とはそういう生き物』と言われたら、否定できない。


 初出勤日の全体職員会議では村上教頭の予告通り、全教職員の前で紹介されて挨拶をすることになった。今年度の新任は私だけで、一人で注目を浴びることになったが、緊張することなく無難に済ませることができた。

 明日の入学式では新任1年目の私には大した役目は無いですが、明後日の始業式でも全校生徒の前で再び紹介と挨拶をすることになる。でも、大丈夫だろう。私は父が認める程の緊張知らずで肝が据わった女だ。

 お隣の坂下先生からも、「笹錦先生って、落ち着いててすっごく綺麗な声で話すのね!独身男性陣が「すれ違った時に良い匂いした」とか言って、みんな口をあけて間抜けな顔で聞きほれてたわよ?」と褒めて?下さった。

 幼少期より声が綺麗とか良い匂いがするとはよく言われましたが、自分ではよく分かりません。けど落ち着いて見えるのは、せっかちな性分を隠す為に猫を被ってるからでしょう。


「坂下先生は、ご結婚されてるのですか?」


 独身男性陣の件は、あえて無視して会話を続けた。


「ええ、そうなの。旦那は公立中学の教師してるのだけどね、公立は大変みたいよ。それに比べてこの学園は、生徒はみんな良い子ばかりだし、職員間の人間関係も比較的良好で働きやすいからね」


「私も公立は大変と、聞いたことがあります。特に中学校は多感な子が多いから、大変そうですね」


 右隣の坂下先生と当たり障りの無い会話を続けていたが、左隣の席で意図的に視界の外に追いやっている牧田先生の存在感が異常過ぎて、気になって仕方なかった。

 好奇心に負けた私は坂下先生と会話を続けつつ、何気ない仕草を装ってチラリと左隣へ視線を向けた。

 案の定、また腕組みして目を閉じて、瞑想している。相変わらず鼻からはみ出している6本の毛が気になる。

 居眠りか?また居眠りですか?

 ニヤニヤしながらやたらと構ってくるお節介な男性に比べれば、積極的に関わってこようとしない態度はマシだとは思いますが、それにしてもこの存在感は異常です。これまで異性とは距離を取って生きてきた私ですら、初対面から精々30分ほどで、ここまで気になってしまっているのですから。こんなことは私の人生では初めてです。

 一応念のために確認しておきますが、恋とか胸のトキメキとかそういう類では一切ありませんので。私の物差しで測れない異物の存在が、気になってしまっているだけでしょう。


 と言うことで、再び私の方から接触を試みた。脳内では『余計なことはするな』と警告メッセージが流れていましたが、好奇心が圧倒してしまった。こういう性分なのだから、仕方ない。


「あの、牧田先生?起きてらっしゃいますか?」


「はいッ!起きてますッ!寝てませんよッ!」


 今度は、目を閉じて腕組みしたまま答えてくれた。

 それにしても声が大きい。隣の席なんだから、そんなに大きな声を出さなくて良いのに。

 やはり、体育教師とは特異な生き物なんですね。


「笹錦と申します。若輩者ですので色々と教えていただくことになるかと思いますが、お隣としてよろしくお願いいたします」


 私が挨拶をすると牧田先生はようやく目を開き、いえ、力いっぱい見開いて、口からツバを飛ばしながら全力の自己紹介を始めた。


「牧田泰造!26歳独身ですッ!趣味は筋トレと熱帯魚ですッ!こちらこそよろしくオネシャス!」



 独身とか聞いてねーよ。






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