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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
最終章 転生者の行く先
108/112

#108 滅びの魔女とは


 なんということだ。

 笹錦先生が、マノン様の生まれ変わりだったなんて。


 いや、俺だって宿命を背負って生まれ変わったのだから、姫様だって同じことがあってもおかしくない。

 言われてみれば、容姿は違っても、どことなく雰囲気は似ていたと思う。

 けど、マノン様は王族らしくもっとお淑やかで、笹錦先生のようにフリーダムなお人ではなかったな。


 まぁ俺だって、生まれ変わってからは、タイゾルのような勇敢な騎士にはなれず、うだつの上がらない体育教師になったのだし、笹錦先生だって、王族のマノン様とは別の人生を歩んだということか。

 姫様が成人すれば、笹錦先生のように女性になっていたのかもしれないな。


 それよりも、笹錦先生が滅びの魔女などと呼ばれるのは、なぜだ?

 確かに、笹錦先生に睨まれた時の鋭い目つきは背筋が凍るほど怖かったけど、魔女だとは。

 それに、断ち切らねばならない強力な因果とは、どういうことなんだ。

 姫様も多くの人を殺めたために神の国へは行けなくなったと聞いてはいたが、滅びの魔女として、大量殺戮でもしたということか。


「それは違うぞ。マノン・シャルド・ヘンケ・ハインツ・ド・ササニシキは、確かに多くの人を殺めた。しかしそれは、王家の誇りを守るためにしたこと。その罰として、魂に『滅びの魔女』の称号を刻まれたのだ」


 思考を読むことができるのか、声に出さなくても俺の疑問に水晶が答えてくれた。


「王家の誇りを守った罰とは、どういうことですか?姫様になにがあったのですか?」


「おや?少し待つのだ・・・むむむ?」


 ここには俺と水晶しか居ないのに、なにかあったのだろうか。


「そんなばかな・・・」


「急にどうしました?なにかあったのですか?」


 水晶が相手だと、表情が無いからなにを考えているのか思考が読めない。

 ただ、なにかに驚いているのだけは分かる。


「いま発覚したのだが、滅びの魔女が、自らの力で因果を断ち切りおった。以前より、少しずつ因果の結びをほどいていたのは観測していたが、ここまでしてしまうとは想定外だ。そもそも笹錦真乃は、現世に転生した時から規格外の魔女であったが、まさかあの若さでここまでに至るとは。それに無自覚とはいえあの表情。因果のことなど、歯牙にもかけておらぬ。さすがは『無敵の滅びの魔女。なんだか面白くなってきましたわ』などと宣い、楽しそうに転生しただけのことはあるな」


「話が見えませんが、どうしたというのですか?」


「そなたにも影響を及ぼしていた滅びの魔女の因果を、笹錦真乃が自ら断ち切ったということだ」


 笹錦先生が、なにかしたということか?

 マノン様のことも笹錦先生のことも、分からないことが多すぎる。

 サリナとアイナのもとへ行けたとしても、このままでは心残りで死ぬにも死にきれない。


「お願いがあります。マノン様、笹錦先生、そして滅びの魔女のことを、もっと詳しく教えてください」


「よかろう。まずは、マノン・シャルド・ヘンケ・ハインツ・ド・ササニシキが滅びの魔女となった由縁から話そうか」


 水晶が語ったのは、俺が死んだあとの王国の末路。

 マノン様は王家の誇りを守り、蛮族共に王国の意地を見せつけるために、禁忌である滅びの術式を使い、蛮族共を道連れに王国もろとも滅ぼしていた。

 その結果、魂に『滅びの魔女』の称号が刻まれ、マノン様もそれを受け入れていたという。


「王女であるマノン姫は、齢十三にして勇敢で誇り高く、罪を受け入れる時も潔かったぞ」


「あの心優しき姫様が、そのような決断をなされて、国を滅ぼしたとは信じがたい」


「そなたは騙されておるぞ。前世でのマノン姫は、確かに聡明で誇り高い人物であったが、平和な王城では猫を被っておったからの。その本性は、好奇心旺盛で知識欲と探求心の化け物。そしてなによりも、せっかちで自由奔放な性分で、魂の裁定のときなど、わしの手を散々焼かせてくれたものだ」


「そうなのですか!?人は見かけによらぬということか・・・」


「それらの資質は、現世の笹錦真乃にも色濃く引き継がれておるから、見ていれば分かるだろう」


 た、確かに、笹錦先生は一見清楚でお淑やかなお嬢様に見えるが、本性は自由奔放で気が強く、理屈をこねさせたら右に出る者はいないほどだった。あのフリーダムさと口達者ぶりには、理事長や学園長すら手を焼いていたな。


「それと、滅びの魔女となったマノン姫は、万を超えるヒトの命を奪っておるから、その業も膨大な量であった。それはヒト一人の一生では清算できぬほどで、何度も転生を繰り返して徳を積む必要がある」


「私はすでに業の清算を終えることができたのに、笹錦先生はこれからも転生を繰り返す必要があるのか・・・」


「そなたの業の清算が終わったのは、滅びの魔女の因果の影響が大きい。つまり、そなたは、笹錦真乃のおかげで、業の清算を想定よりも早く終えることができたのだ」


「どういうことですか?笹錦先生がなにかしてくれたのですか?」


「そなた、6人の生徒と笹錦真乃を助けるために火災現場へ戻っただろう?あれは本来、笹錦真乃が徳を積むべき機会だったのだ」


「笹錦先生が徳を積むべき機会?つまり、私が火災現場へ戻ったことで、横取りしてしまったと?」


「横取りとはちと違うな。あの場にそなたを引き寄せたのも、滅びの魔女の因果の影響だからな。そもそも、滅びの魔女である笹錦真乃は、あの程度の火災では死なぬ。そなたが戻らなくとも、自力で脱出するのは時間の問題だった。しかし、滅びの魔女の強力な因果にそなたは引き寄せられ、結果的にそなたが自らを犠牲にして6人の生徒と笹錦真乃を救った。そのおかげで、そなたには膨大な徳が舞い込んだのだ」


「笹錦先生に、引き寄せられた・・・子供のころから夢で見ていた体育教師になる宿命や、笹錦先生が赴任した時から常に感じていた、『この人を守らなくてはいけない』という衝動も、滅びの魔女の強力な因果の影響ということですか?」


「体育教師の宿命はそなた自身の魂の裁定で決まったものであり、その夢も、そなたに宿命を自覚させるために、わしが干渉していたからだ。

 しかし、笹錦真乃を守るべきという衝動は、そなたが言う通り、滅びの魔女の因果の影響である。前世でも繋がりがあったことで、より強く影響を受けていたのだろう。だから、その因果の結びがあったままなら、そなたが神の国へ行こうとしても、引き戻される恐れがあった」


 それで水晶は、笹錦先生に引き寄せられている私との因果の結びを、ここで断ち切らせて、神の国へ旅立てるようにしようとしたのか。


「そもそも、滅びの魔女とは、なんなのですか?呪いや罪人(とがびと)とは違うのですか?」


「滅びの魔女とは、世界の理から外れた存在。魂の裁定者であるわしにも干渉が難しく、他者の魂にも影響を及ぼすほどの強力な因果の持ち主」







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