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滅びの魔女は、今日もおにぎりを頬張る  作者: バネ屋
第十五章 再起する学び舎
102/112

#102 暗躍する読書部


 2年1組の6人の男子生徒と面談した翌日のお昼休憩。

 今度は、読書部の遠藤さんと里子さんに栗林さんまで、職員室へ押しかけて来た。


「先生!ちょっとお話があるんですけど!」


「すみませんが、期末試験直前なので、今は準備で忙しくて」もぐもぐ


「一昨日部活に来た時に、期末試験の準備は終わってるって言ってましたよね?おにぎり食べながら言われても、説得力ありませんよ」


「わ、私たちも、お弁当、持ってきた」ぐふ


「仕方ありませんね。食堂にでも場所を移して、お昼を食べながら話を聞きましょうか」


「食べながらって、先生、おにぎり食べ終わってるし!」


「では、食後のお茶でも頂きながら、お話を聞きましょう」


 食堂へ移動すると、多くの生徒で賑わっていたが、隅の席が空いていたので、ドリンクサーバーで冷たい緑茶を用意して、読書部の三人と座った。


「さっそくなんですけど!どうして私たちが三田君たちのお手伝いしないといけないんですか!」


「別に強制するつもりはありませんよ。ただ、遠藤さんも里子さんも、彼らに同情的でしたし、学園祭中止を残念がってましたので、彼らに協力してくれると思ったのですよ」


「そうですけど、私たち、文系インドア女子ですよ?男子と一緒に署名運動なんて」


「それに、彼らの話を聞いていて、短慮で前のめりな彼らだけで動いてもトラブルになりかねないと思ったので、視野が広く状況判断が的確な里子さんをブレーンとして推薦したのです」


「確かに私も、三田君たちの加熱ぶりが心配で先生に相談しましたけど・・・」


「じゃあ、私は、ついでに巻き込まれただけなんですか?」


「遠藤さんは、リーダーシップがあってまとめ役として適任ですし、生徒会にパイプがありますからね。きっと彼らの力になってくれると思ったのですよ」


「うーん、私で力になれるのなら考えなくもないですけど・・・」


「い、一年の私、無関係。な、なのに、お手伝い、頼まれた」ぐふ


「栗林さんは、普段から他人のことをよく見ていますからね。その鋭い観察眼で、大久保彦左衛門のように下級生だからと遠慮せずに、気付いたことがあれば彼らにも存分に指摘してあげてください」


「お、おお、大久保彦左衛門!?て、天下の、ご意見番。た、滾る」ぐふ、ぐふふ


「栗ちゃん!?篭絡されるの、早ッ!」


「でも、結局、三人とも手伝いにはOKしたのですよね?」


「だって、男子6人に囲まれてあんなに必死に頭下げられたら、断れませんよ」


「私は断りましたけどね」


「ひっど!」

「き、汚い、お、大人の、裏の顔」ぐふ

「それで、私たちに押し付けたと?」


「違いますよ。私が手伝っても彼らのためにはならないので、教師に頼らず生徒だけでなんとかするべきだと断ったのです」


 三人とも、納得できない表情を浮かべながら、持参しているお弁当を食べていた。

 不満を抱えたまま手伝っても、あまり意味はありませんので、緑茶で喉を潤すと、もう少し私の考えを話すことにした。


「私はなにも、あなたたちに全て押し付けて、丸投げするつもりではありませんよ。学園の決定事項に対して生徒が反対運動をするのに、教師が関わっていると知られれば、マイナスにしかなりませんからね。あくまで動くのは生徒で、私は必要な情報提供や助言をするだけに留めたいのです」


「じゃあ、先生も学園祭中止に反対なんですか?」


「いえ、それはどちらでも良いのです。私はただ、生徒が自主的になにかをやろうとしているのだから、応援したいだけですよ」


「まぁ、最初に先生に相談したのは私だし、お手伝いは仕方ないですけどね。それで、情報や助言というのは具体的にどんな内容なんですか?」


 他の生徒に聞かれるのはまずいと思い、『耳を貸しなさい』とジェスチャーをして、顔を寄せ合うと、ヒソヒソと話し始めた。


「まず1つは、署名運動はやめるべきですね」


「え!?根本から否定ですか!?じゃあ、なにをするんです?」


「生徒会主導の全校生徒対象のアンケートにするのですよ。そうすれば、正当性がぐっと増しますからね」


「確かに、署名運動と聞くと反抗的な活動に聞こえますけど、全校生徒アンケートなら、公平でクリーンなイメージになりますね」


「2つ目は、教頭先生と甘利先生に相談実績を作っておくのです。学園上層部が集まっての臨時職員会議で学園祭中止を決定した時、武田学園長と熊倉先生と木田先生の三人が中止にするべきとの意見で、村上教頭と甘利先生は中止に難色を示していました。ですから、生徒側が開催したいと声を挙げれば、頭ごなしに生徒の意見を封殺するようなことはしないはずです」


「なるほど。それは確かに、相談しておいて損はなさそうですね。他にも何かアドバイスはあるんですか?」


「一番大切なのは、私の名前は出さないこと。私が助言などをしていると知れたら別の問題になってしまって、学園祭開催是非の話では無くなってしまいますからね。6人にもそれを徹底させてください。それと、里子さんは表立って動かない事です。動くのはあくまであの6人で、里子さんは指示するだけに留めてください。遠藤さんと栗林さんも、協力者というより、応援しているだけに見せておくほうが良いですね」


「先生の名前を出さないほうがいいのは分かりますけど、私たちまで表に出ないのは、どうしてですか?」


「決まっているじゃないですか。こういったはかりごとは、裏で暗躍するから格好良いのですよ。『生徒有志が学園祭中止の撤回を求めて活躍する裏で、人知れず暗躍する読書部!その時、更科学園の歴史が動いた!』と」


「あ、やっぱり、先生、そういうノリだったんですね」

「完全に面白がってますよね?」

「た、滾る」ぐふふ


「もし学園祭開催の実現に成功しても、その名誉はあの6人にあげたっていいじゃないですか。目立つことを避けている文系インドア女子集団の読書部なのだから、それこそが、裏方の美学ですよ」


「まぁ、その通りですけど」

「先生と話してると、力が抜けてきますよ」

「め、目立つのは、ダメ」ぐふ


 その日の放課後、さっそく遠藤さんがあいだに入って、三田君たち6人は生徒会に接触した。



  



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