オルゴール回していいんですか
うかつにボタンを押すと、町唯一の名物になっているオルゴールが作動してしまう。
振動板が一・五から二メートルほどのサイズのため、オルゴールの全体となると二階建ての小屋に匹敵する大きさだ。
アナログのオルゴールは、理屈上、摩擦の影響や環境で、一度として同じ音は鳴らないが、誤作動や故障がなければ、同じメロディーにしか聴こえない。
手のひらに載るものなら、ゼンマイを指で回すが、大型のものはモーターで作動させる。
ボタン一つでモーターが作動して、ゼンマイが巻かれていく。そこから実際に音色が鳴り出すまで数分から十分の間ができるのが難点になっている。
二メートル程度の振動板を随時調達する必要があるからだ。複雑で豊かな音色を奏でるために、七十二弁になっているため、七十二人参集させなくてはならない。
昔は、貴族にとっての余興や気まぐれに合わせて、人狩りの専門が集めたそうだ。
今はあらかじめ因縁の糸でも結わえられているように、オルゴールが作動すると遠く近くに関係なく、人間の姿をしていた者たちが感情と理性を失った人形に戻って、あるべきところへ帰参するかのように、どこからともなく七十二人が集まってきて、それぞれの持ち場に着くようにして、決められた方に頭を向けて、反響板の上に仰向けになる。
振動板が集まると、いよいよ楽曲を記録しているシリンダーが回転し始める。シリンダーに打ち込まれているピンが集まってきた人たちの頭蓋骨をすくい上げるようにして弾き、音を鳴らす仕組みになっている。ピンは尖ってはいないが変質を防ぐためにそれなりの硬質で、一回の演奏につき何度となく頭蓋骨に当たるため、音色は次第に濁ってくる。
運がよければ、ひしゃげる程度で原型は留められる。七十二分の一か二で、それ以外は、脳の破片と骨と髪の毛とが合わさって反響板に散らばる。鼻から下は残らないことが多いけれど、歯型は確認できるため、やろうと思えば身元の特定くらいはできるそうだ。




