第八幕:教師海賊との出会い
海賊に向かって夢を語り始めるジェイ少年。
彼は船長を、認めさせられる?
やあ、君。ボクらは今、海賊船レンジャーの船長室にいる。
そこで、ジェイ少年と船長が話しているのを見ているんだ。
第七幕では、少年は海賊になりたいと船長に頼んでいた。
ここでは、船長が少年になんと答えたのかを見ていこうぜ。
おや、船長が口を開くぞ。
「何をかんちがいされてるのか、分かりかねます。我々は商人です。」と船長は言葉を続けた。
「少々乱暴に扱ったかもしれませんがね。しかし、夜中に船に乗り込まれたら、当方としましても、野蛮にならざるおえません」と丁寧に返してきた。
彼はあくまでも、商人として少年を追い払うことに決めた。
だけど、少年はこう告げた。
「港に直接ーー船をつけない事こそ、海賊の証だ。いつでも逃げられるようにしてる。そういう船はたいてい海賊だ。」
船長は息を呑む。彼はそれを習慣づけてた。だが、海賊ですらない少年が口に出すとは思えなかった。
「ーーなるほど。そういう船はたしかに、可能性が高いでしょう。ですがね、ぼっちゃん。もしも海賊だとして、子どもを引き取って船員に育てることはしない。むしろ、子どもは迷惑だ。」
彼は微笑む。
この少年の賢さが好ましかったから。
「それにエトン校の子どもを引き取ったら、この港が使えなくなる。リスクの方が大きい。」彼は相手にも、自分にも言い聞かせるように話した。
「さあ、港まで舟で送ってあげよう。この話は聞かなかった。いいね」と、優しい口調になっていく。彼自身、気づかないうちに。
「戻りたくない。ボクには理由がある」
少年は掠れるように言った。
船長は、船員を下がらせて、手近な椅子を二つ引き寄せて、
一つを少年に座らせた。
向かい合うようにして、彼も座った。
「理由を話してごらん。」と言って微笑む。
ジェイ少年は、海賊に物語を始めた。
黒妖精と出会い、彼女に海賊を夢として進められた事。学校での自分、父親と兄の関係、話せる事は話した。
船長は、ときおり目を輝かせた。
妖精の話は特に。
「信じてくれないでしょうね。妖精なんてーー」彼は再び妖精の存在を否定しようとした。
「信じている。君の話は信じてる。
君の父親は完全にゲイだな。悪い意味での、ね」彼はイジワルそうに笑う。
「妖精は存在する。船乗りは不思議な事を信じなければやっていけない。大海原の孤独に耐えるには、別の何かを見る力が必要だ。君は船乗りとしても、やっていけるだろう。」と船長は少年の肩に手をやる。
「海賊は、最後には悲惨な死という終わりが待つ。誰もがだ。」船長の手に力が込められる。
「聖人君子も海賊を選べば、吊るされる。あの十字架にかかげられた神の息子も海賊だったら、別の刑が執行されたーー」
少年は、下唇を噛む。
「ただの船乗りは、アンタらに食い物にされる。ボクはイヤだーー」
船長の目が細まる。
「身寄りのある子は、引き取れない。
力には、なれない。」少年の肩から彼は手を離す。
「もっと大人になれ。
君が18歳になれば、
責任は君のものだ。ジェームズ・フック。」
ジェームズ・フック。
この船長が、彼の名前を形にした。
ジェイ少年の目が輝く。
「ーーわかったよ」彼は顔を下に向ける。
この出来事は、ジェイ少年を海賊へと近づける決定的な出来事だった。
18歳。
この言葉が、彼の心の中で響いた。
それから、彼はエトン校の自室へともどり、彼の物語を続ける。
(こうして、第八幕はジェームズ・フックの名と共に幕はとじる。)
ついに海賊への道筋ができてきた。
あとは、待つだけ。
少年の運命は決まった。