第五幕:漏れた秘密、虚空の抱擁
やあ、君。愛の囁きは、時に裏切りを呼ぶ。第四幕の恋の蕾から、チャーリーへの口走りが噂を巻き起こす。落書きの好奇の目と、父の激怒がジェイを追いつめる——呪いのノートが、帝国の足の裏を暴く。ファウストの言葉が、ユダのナイフになる時だ。
やあ、君。教会の前で、囁きあうのは男女だけとは限らない。閉鎖された場所の中、誰もが誰かに愛の形を求める。
第四幕では、黒妖精ダンケリットから夢が死んでるとまで言われたジェイ少年の夢が、彼の努力と密かな恋により、息を吹き返したところを話した。
黒妖精は、少年をネバーランドに連れて行ったら、彼に生きる術を教えようとまで考えてた。
だけど、少年にも生きる場所があり、
考えさせる事に決めた。
さて、いまボクらは教会前にいて、
ジェイ少年と、彼の恋するチャーリー上級生と話をしていた。
彼は金髪の髪を時々自分で撫でながら、少年の話を聞く。
「なるほど、ジェイ。君は海に出るんだ。」彼は髪に枝毛を見つけ、しばらく見つめていた。
「ーーすてきじゃないか。応援するよ。いつ出発だい?」と言って少年を見つめて微笑む。
「え、あ、ーー明日の夜」と少年は思わず口を滑らした。
夜中に窓から飛び出して、
夢の島ネバーランドへ行くんだ。
少年は言い聞かせるように、話したんだ。チャーリーがひきとめてくれるかと思って。だけど、応援する、それだけだ。
なんとなく、彼は足りない気がした。
その夜は、手をつなぐこともなく、二人はそれぞれ部屋に戻る。
ジェイ少年は、彼の個室にもどってきた。枕元のすぐ近くの箱の中。
黒妖精は、新鮮な葉っぱが積まれたベッドの上で眠っていた。
明日の夜だ。
少年の指は彼女の頬に触れた。
夜は深まっていく。
さあ、物語を進めよう。
次の日、誰もが知る噂。
「ジェイ・フール。夢みがちな大海賊!」と彼の毎日通う教室。
彼が座る席に、書きつけられた落書き。
皆が好奇心の目で、彼を一斉に見つめた。もし彼の手がフックなら、彼は容赦なく、手近にいた者を犠牲者にした。
少年は、何もない虚空を抱きしめた。
何も抱けず、何も触れる事がないものを。
ああ、彼は泣けない。
秘密は自分が漏らしたんだ。
ユダは、彼だった。
彼の愛が、まさしく彼の中の女を殺したんだ。
彼は拳を握りしめて、なるべく海賊らしく近くの生徒に殴りかかってた。
そしてボクらは、
ジェイ少年の父親が呼び出されるのを見た。少年の巣である部屋の中をみて、更に大激怒する。
海賊の本やら、錬金術、魔導書、愛の言葉の詩の本まで、
彼の本棚には詰め込まれていた。
もっとも怒らせたのは、机の上に、彼の父と兄への罵詈雑言の呪いのノート。
そこには、兄と父はゲイであり、二人でババアの足の裏を舐めると、メチャクチャな文字で書き殴っていた。
ああ、妖精と二人で言葉を交わしてたものが、こんなにも父の怒りを呼ぶとは。少年はビビってしまった。
彼は何とかして生き延びたかった。
父が、
彼のゲイの父が、
彼の襟首を掴み上げた。
「吹き込んだのは誰だ!このろくでなしが!」と少年を問い詰めた。
「黒い妖精ダンケリット!」と彼は叫んだ。
ああ、もう、おしまいだ。
彼の弱さは、もう、おしまいだった。
天使の手から石は離れた。
落ちていく。
(こうして、第五幕は石と共に閉じられる)
第五幕は、天使の手から落ちる石と共に閉じる。ジェイの叫び「黒い妖精ダンケリット!」が、破滅の始まり——愛が女を殺すこの悲劇は、魂の贖罪か。次幕では、言葉のナイフが妖精を刺す。君の秘密は、誰に漏らす?




