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第四幕:知識の蛇、恋の蕾

やあ、君。夢の種は、知識を吸って変身する。第三幕の予言から、ジェイは錬金術の本を貪り、海賊の擬態を学ぶ。鏡の前で黒髭を夢見て、チャーリーの微笑みに頰を染める——エトンの地獄に、光の蕾が開く。ファウストの渇望が、恋に変わる瞬間さ。

やあ、君。夢の種って知ってるかい?

今まで知らなかったことが、知識をすって、むくむくと大きくなって、別の何かに変身する種さ。ジェイ少年の心にも、これが宿った。

さて、君にはどうだろうね?


第三幕では、黒妖精ダンケリットによって、海賊という夢の種を与えられたジェイ少年。


そして、彼はまさに夢の為に知識を貪欲に吸収しているところだった。

エトン校の寮。

一人部屋。

小さな机、ベッド、窓がある。

そこの机で錬金術の本を読んでいる少年が、海賊の夢の種を持ったジェイ少年だ。豊かな黒髪は蛇のようにうねってて、鋭い目で本を食べようとがんばっている。


海賊になる時、必要なものは何か?

彼の鋭すぎる知性は神秘性だと告げた。

誰もが持たない知識を持つこと。

これは、周りへの牽制になる。

そして、礼儀と規律を完璧にマスターする事だ。彼は擬態する事を覚えた。

もしも、自分が海賊として捕まっても、貴族のふりをすれば、一人でも助かる。

彼は様々なシチュエーションを夢見た。

想像の翼は鳥のように羽ばたき、

知識を貪欲な蛇の如く丸呑みした。


だけど、彼は、ずっとジェイ・フールだ。

毎日、海賊を怖がらせる海賊を想像した。彼は部屋の中にある全身鏡の前に立つ。

黒い髪が不気味に揺れる。

「まるで、黒髭だ!

ボクはヒゲを生やしたい。」と彼は興奮した。

彼の心は大海原。

大きな船。中には大砲を乗せて、

獲物を狩りに、

サメみたいにうろつく。


見よ!


彼こそは、ジェイーー


「ジェイ・フール!」と少年の肩に妖精が飛んでくる。

「鏡の前で、マヌケずら!

きっとステキなことなんでしょ」と嘲笑する。

「イメージトレーニングだよ、ダンケ」と少年は吐き捨てた。

エトンに来て、もう数ヶ月も経った。

少年にとっては、

ここは地獄には変わらない。

が、彼女、黒妖精ダンケリットがいる事で、彼は救われていた。


学業も、落ちこぼれながら進んでいる。規律も礼儀も聖書も!

学友とも仲良くなり、

チャーリーという上級生とも、

仲良くなれた。

彼は金髪で天使のような笑みを持つ貴族然とした男だった。

ジェイを認めており、彼の前では、誰もジェイ・フールとは呼ばない。

海賊になりたいという夢さえ、彼とは共有している。


二人だけのチャペルルームで、囁きあい、手まで握った。

少年の頬が赤く染まるのを、ダンケは不機嫌そうに眺める。

「アンタ、なんのトレーニングしてるんだか」と、羽根をはばたかせて、少年の鼻先に飛ぶ。

「そろそろ、アンタの夢がどうなったか、見てあげよう」と言って、彼女は初めて会った時のように、

まるでお医者さんのように、少年を眺めた。


ああ!なんとした事だろう!

死んだ夢は、かすかに少年の中で息を吹き返し、しかも初恋の蕾さえあった。

これなら、飛べるかも。

だけど、ここに残ることもありえる。


黒妖精の彼女は悩んだ。

本来なら、即座に、

少年に夢の粉をかけてネバーランドへ行こうと誘うべきだ。


だが、彼女にも心の変化があった。

少年を好きで、たまらなくなっていた。

なぜかって?

センスのいい寝床を、

彼が毎回用意してくれるからさ!

キレイな葉っぱの布団を敷いたり、

寒い時には枯れ葉を集めてくれた。

少年がネバーランドに来たら、

インディアンによって、頭の皮を剥がされるか、猛獣や魔物たちに八つ裂きにされるのさ!


だけど、

夢の島ネバーランドに帰りたい。

あそここそ、彼女の故郷だ。

でも、彼を守って二人で生きる。

少年と妖精の恋ってのも、

ロマンチックだ。


彼女は、決めた。

少年に時間を与えようと。

自分とくれば、ああ、彼を命がけで

守ってやると彼女は決めたんだ。


「ジェームズ、話があるーー」


ーー二人の破局が始まるんだ。


(こうして、第四幕は幕を閉じる)

第四幕は、二人の破局の予感で幕を閉じる。ダンケリットの心変わりと、守りたい想いが交錯——ネバーランドの誘惑か、エトンの恋か、この選択は夢を育てるのか。次幕では、教会前の囁きが秘密を漏らす。君の蕾は、誰に捧げる?

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