とつぜんのほうもん そのいち
時刻は1時をまわり空に浮かぶ月が地上に僅かな明かりを灯している。
ここ神代町に住む高校生、鈴木浩介は俗に言う草食系男子だった。
昔では小動物系という言葉が用いられそうな幼さを残し、身長も低め。
周りの女子からは可愛いと言われるが、本人としては格好いいと言われたいお年頃である。
今日もいつもと変わらない平凡な1日で終わるはずだった。
バリイィィンッ!ドオオォン!!
「うわぁっ!?なになにテロ!?」
突然、浩介の部屋の窓が割れ床に大きな衝撃音が響く。
飛び起きるようにして周りを見回し窓が割れているのに気づく。
外の景色がはっきりと見え、他の家々にはまだ明かりがついているのがわかる。
「嘘でしょ?」
月明かりによって僅かに光を反射する窓ガラスの破片。
目を凝らして見ると奥の方に赤く発光する物体が見える。
浩介はゴクリと喉を慣らしながら慎重に電気をつけに行こうとする。
(爆弾とかじゃないよね…)
足下の破片に気をつけて部屋の明かりをつけると
そこには紅い色をした鳥が。
(鳥?なんで鳥が?うわっガラスひどいことになってるなぁ)
「えっと、鳥さん大丈夫?」
とりあえず鳥に声をかける浩介。
本人も別に返事を期待してたわけではないが、痛そうにしてる鳥を見てついつい声をかけた。
「痛いに決まってるでしょ!あんた何考えてるの!?」
まさか鳥から返事が来るとは思わず硬直する。
「まったく、ひどい目にあったわ」
「………」
「ねえ、聞いてるの」
「………」
「聞いてるのかって聞いてるのよ人間!」
鳥に怒鳴られ我にかえる浩介。
「えっ?あっ、あの、」
「なにっ」
「いや、えっと」
「なによ、はっきり言いなさい」
「喋れるの?」
「そうよ。それが何か?文句でもあるの」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「何よ。鳥がしゃべったらいけないの?偏見よ偏見。これだから人間は嫌いなのよ」
そう言いながら額をさする鳥。
(ってうわー、僕普通に鳥と会話してるー)
現実を受け入れられなく割れた窓のほうを見て遠い目をする。
「第一何でガラス閉めてんのよ!怪我したらどうすんのよ!気が利かない人間ね!ダメ人間!!」
鳥はむちゃくちゃな事を言いながら怒りだす。まるで当たり屋のような発言だ。