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おまけ

******

異界 奥津城高校 旧校舎

3年C組 教室内 


 ソレは、誰もいない教室の中に、突然ブクブクと湧き出てきた。


―あぁ、ぁぁ……ん゛ん、あー、あー、あー、テステス。はぁ、やっと復活できたわ―


 土気色の肌をした少女、『クサカミ・アヤメ』は大きく伸びをしながら身体をほぐすと、独りで悔しげに暴れ始める。


―あーもう!ムカつく!迷子の幽霊ごときに、してやられるなんてぇ!なんで私が滑って転んで死ななきゃならないのよ!そこまで間抜けじゃないわよ!―


 照山紅葉やオカルト研究部達との戦いを回想し、『クサカミ・アヤメ』は地団駄を踏む。

 するとそこへ、2人の来訪者が現れる。


―お疲れ、アヤメちゃん。今回は強敵だったねぇ。私も身体半分焼かれちゃった。今時の高校生って怖いねぇ―


 理科室の七不思議『リカ』は、顔を覆うガーゼを指差し笑った。

 

―まぁ、当然だな。私達の産みの親だ。むしろ勝っていたら、それはそれで文句タラタラになるぞ?―


 勝者の余裕を見せるのは、『クサカミ・アヤメ』と敵対関係にある七不思議『赤井花子』。

 照山紅葉の即席小説により、以前のような邪気のない姿に戻った同胞の様子に、『赤井花子』は満足げに頷いた。


 すると、それを見た『クサカミ・アヤメ』は、苛立たしげに、『赤井花子』へ詰め寄る。


―なぁに余裕ぶっこいてんのよぉ!?マジムカつく!さっさと帰りなさいよ!あんたの定位置は、カビ臭い便所でしょうが!―


 すると、『赤井花子』はポケットからスマホを取り出すと、更に勝ち誇った態度で、とあるウェブサイトを、『クサカミ・アヤメ』と『リカ』に見せつける。

 それは東雲出雲が編纂した、七不思議の完全版だった。


―おっと、言うのを忘れていたが。私の物語はこの度改訂されてな。『トイレの赤井花子』改め『校舎裏の赤井花子』になったのだよ!ハッハッハー―

―なっ、ぬぁんですってぇ!!―


 差し出されたスマホを奪い取り、『クサカミ・アヤメ』は、血眼になって記述を確認する。


―あいつら~!あの即興芝居を、正典にしやがったわねぇ!―

「他にも、フミコは相手を殺さずに、完結するまで図書室に閉じ込める、いわゆる『〇〇しないと出られない』程度に軟化されているぞ」

―あ、トルソーくんが等身大のジンタイくんに変わってるぅ。あとでデートに誘ってあげよ―


 と、『リカ』は我関せずと、『クサカミ・アヤメ』を放置し、自分の定位置へと戻っていった。


―まぁ、我々は『言霊』から生まれた七不思議だ。物語があり続けるかぎり、不滅の存在なのだから、気長に過ごせば良い。では、機会があればまた来年―


 そう言うと、『赤井花子』は、スキップ混じりに部屋を出ていった。


 そして、独り残った『クサカミ・アヤメ』は、窓の外、永遠の黄昏空へ向かって、リベンジを誓う。


―覚えてなさいよぉ、照山紅葉とオカルト研究会!力を取り戻したら、真っ先にあんた達を、もう一度こっちに引き込んでやるんだから!―


 だが、この後、彼女は、守護霊として経験を積んだ照山紅葉にコテンパンにされる事となる。

 そうとは知らぬ『クサカミ・アヤメ』は、自らのガラケーの、送信ボタンを見つめ、高笑いするのであった。



―アヤメール~押してはいけない葬信ボタン~

                     完

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