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間章

*****

しばらくして

保健室(雛子視点)


 アレを目撃し、アッキーと保健室へ立て込もってすぐだった。


―デデーーン、サトウ、ラリアット!―


 アッキーのスマホに、メールが届いた。


「ひっ!?『クサカミ・アヤメ』!?」


 アタシもアッキーも反射的に動いて、スマホを床に放り投げた。

 けれど、恐る恐る画面を見たアッキーが、はっとなった。


「っ、違うぞヒナ!深山先生からだ!」

「え?ミヤマッチ!?無事だったの?」


 慌ててスマホを拾うと、確かにアドレスは『クサカミ・アヤメ』の物じゃなかったし、件名も『深山八重より』だった。

 でも、電波の状態を見ると、まだ圏外のまま。

 アタシたちは顔を見合せ、恐る恐るメールを開いた。


*****

同時刻 

音楽室(八雲視点)


 深山先生や両親が、七不思議を創ったと知らされた直後、その先生本人からメールが届いた。

 動く肖像画達に見下ろされる中、日暮くんと確認した内容は、こうだった。


『拝啓、オカルト研究部の皆と、()()()()へ。

 あなた達がどこにいて、どうしてるかは把握してるけど、どこまで知ったは解らないので、全員に同じ内容を伝えます。

 ここは、「奥津城高校の七不思議」が具現化した空間。そして、私たちを連れ込み、閉じ込めているのは、七不思議の一つ、「クサカミ・アヤメ」。

 ここから出る為には、保健室の外にある焼却炉を使うか、「クサカミ・アヤメ」を倒すしかありません。

 そして私は、後者の方法を取ろうとしています。それが、20年前にこの七不思議を産み出した内の1人としての責任だから。

 あなた達がこれに付き合う必要はありません。なので焼却炉を使って脱出してください。

 詳しい方法は保健室の七不思議、喋るぬいぐるみの『ペンペン』が教えてくれます。

 ただし「もう1人」、テメーはダメだ。

 出雲ちゃんを保健室に送り届けたあと、私と3ーBの教室前で合流しなさい。こうなったのは、あんたのせいでもあるんだからね。

 追伸:みんな、どうか元気で。

     元・津代高校3年C組 深山八重より』

 

「何だね、いや何ですかこれは!?」

「深山先生、まさか死ぬ気じゃ?」


 日暮くんが涙目になりかけた顔で、僕を見上げてくる。

 それで腹が座った。


「おふざけでないですよ、先生。七不思議を産んだのは、ウチの両親でもあるんですから!特にクソ親父!カマキリ顔だけでなく、こんな面倒事まで遺伝させやがって!」

「……あ、自覚はあったのですね」


 日暮くんの毒舌は無視して、僕は肖像画達へと振り向いた。


「三年生の教室って、どこです!?」


*****

同時刻

保健室(明雄視点)


「……は?先生が、七不思議を産み出した?」

「あの文芸部誌の事じゃない?アレを書いたのが先生だったんだよ。それとたぶんアレ、というかあの人?も……」


 文面から察するに、先生は出雲とアレが一緒にいることを、どうにかして知っているんだろう。

 その上でアレ……『照山紅葉の幽霊』に出雲を脱出させて、しかも『クサカミ・アヤメ』退治に協力しろと言ってきてる。


「つまり照山紅葉は、味方?」

「そ、それより、脱出口って、ここの外にあるんだよね?」


 ヒナは上ずった声でそう言って、部屋の向かい側を見る。

 そこには人が三人並んで通れるほどの、両開きの戸があり、その窓から焼却炉が見えている。

 おそらく、重傷な怪我人や急病人を搬送するための出入口だろう。

 奇しくも、すぐ傍に助かる道があり、俺も内心興奮していた。

 だが……


「先生を置いて、逃げるわけにはいかねぇだろ。ヒナはここに残って、出雲たちと脱出しろ」

「は?……はぁ!?ふざけんなし!!」


 ヒナが、珍しくキレた。


「アタシは確かに頭悪いし、空気読めねぇダメ人間だよ!でもね、恩人見捨てて逃げるクズになった覚えはねぇーから!!」

「お、おう」


 今まで見たことのないヒナの気合いに、俺は面食らってしまう。

 だが、そんな一面を見られて嬉しくも感じた。

(言っておくが、俺はドMではない)


 ヒナが覚悟を決めたってんなら、なおさら引けねぇわな。


「よし!先生を助けに行くぞ。……て、三年の教室ってどこだ?」

―ふふん、それならオイラが知ってるペン。案内するぺんよ―


 と、可愛らしいハスキー声が聞こえ、俺とヒナはそっちを向く。

 すると、ベッドの脇に置かれていた、ナースキャップをつけておもちゃの注射器を抱えたペンギンのぬいぐるみが、ペチペチとこちらへ歩いてきていた。


「「で、でたぁ!?」」


*****

同時刻

一階廊下(紅葉視点)


 『ただし「もう1人」、テメーはダメだ』か。

 ふふ、相変わらずのようだな、八重は。

 

「あの、照山先輩?もう1人って、もしかして……」


 と、懐古していた私に、東雲出雲くんが戸惑いがちに問うてきた。

 私は、悪友の毒舌に苦笑を浮かべたまま、それに答える。


「あぁ、私の事だろうね。なるほど、確かに私の責任かな。けだしっ、私だってこんな七不思議に育てた覚えはないぞ!」


 『クサカミ・アヤメ』め、産みの親を監禁するとか、親不孝にもほどがあるだろう。いや、私に親不孝とか言う資格はないのだけれど。


「よし!出雲くん、やえっ、もとい深山先生の指示だ。君を脱出させたあと、私は悪霊退治に行ってくる。ここでお別れだ!」

「そんなっ!?」


 あぁ、そんなチワワが如き可愛い泣き顔で私を見るな。ついベッドに連れ込みたくなるじゃないか!八重や氷雨みたいに。八重や氷雨みたいに……。

 そう言えば、出雲くんにはどこか、氷雨の面影がある。母親に似ている、と言うのは、間違いないな。

 と言うことは、彼の兄は立夏に似ているのか。おのれバカマキリ、自分の子供になんて呪いをかけやがった!

 おっと、ついつい脱線してしまった。

 とにかく、親友の娘なら無事に返してやらねば。()()三途の川で鬼どもにしごかれてしまう。

 ところが、出雲くんはさっと表情を変え、力強い視線をこちらに向けて、同じぐらいの強さで私の腕にしがみついてくる。


「私も行きますからね!ウチの両親、深山先生の同級生で親友だったって、話しましたっけ?だから先生を見捨てて帰ったら、ウチの両親に殺されちゃいます!」

「何と!?……氷雨の奴、もっと子どもに優しくしてやれよ」

「えっ、今なんて?」

「いや、忘れてくれ。仕方ない。私の後ろから離れるなよ」

「っ!はい!!」


 よし、言い返事だ。

 二人揃って覚悟を決め、私たちは、八重の待つ3階、三年生の教室前廊下へと急いだ。



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