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一話 転生者、サキカ・アクスロイド

 人物紹介


サキカ・アクスロイド:アクスロイド家の一人娘。日本からの転生者。転生前の名前は「小林 咲(こばやし さき)」。主人公。


アリア・ロスチャイルド:ロスチャイルド家の一人娘で、王子の婚約者。ラスクリード王国魔法学院に飛び級で入学。


ミレイ・ファーライト:ファーライト家の長女で、薬師くすしの家系。悪役令嬢として名を轟かせていたが、一年前、サキカに懲らしめられた。素行が悪く、成績も悪かったため、留年になった。


アオイ・ラスクリード:ラスクリード王国の第一王子。成績もよく、顔もいいためファンクラブが出来上がっている。アリアの婚約者。


 ◇◆◇


 ここはラスクリード王国。魔法が使え、その特殊な力を使い職に就くこともできる。 

 その国の中の小さな屋敷で、少女の寝息が聞こえた。

 豪華なベットにくるまっている少女は、寝返りをしながら寝続ける。


「ふわぁあああ......。あと少し寝かせて......。」


 その時、少女の部屋のドアが勢いよく開く。


「おはようございまぁす!起きてください、サキカさん」


 ドアを大きな音を立てて開けたメイドは、メイドにあるまじき揺らし方で、少女を起こす。


「ん~もううるさい......。起きればいいんでしょ、起きれば」


 もぞもぞしながらベットから起き上がる少女をメイドは急かす。


「ほらほら、今日はサキカさんの始業式なんですから、早く着替えてください」

「わかってるって」


 はあ、とため息をつく少女にメイドはまくしたてる。


「いやぁ、それにしてもサキカさんったら転生に順応するの早いですね。さては前世めちゃくちゃ賢かったんじゃないですか!」

「そりゃ一年もたったら流石に慣れるわよ。っていうか、賢いか賢くないかは別に関係ないでしょ」


 サキカ・アクスロイド。一年前にラスクリード王国へ転生してきた日本人。「小林 咲」という名前で高校二年生だった。もちろん転生者ということで魔法は使えるしチートもある。

 ただ本人はそれらがありながら、自分で努力して成果を伸ばすことを好む。


「そういうものなんですかねぇ......。私、あんまり転生者の庇護にはつかないのでよくわかんないんですけど」


 首を傾げるメイドも、ただの人間ではない。女神ネモ。サキカが転生して最初に会ったのが、この女神だ。特にやってもらうこともないので、サキカのメイドとして日々を過ごしている。


「女神にも色々いるのねぇ……。っていうか、2月に始業式があるとかどうなってんの、この国。日本とは違うわ……」

「日本ではどうだったんです?」

「4月。日本って四季があるから。桜がよく咲いてる時期ってそこしかないの」

「へぇ~、勉強になります!」


 ネモはぴ、と手を前にしてやや腹の立つ顔で敬礼した。




 (かばん)の中に必要なものを詰め込み、ネクタイを着けたサキカは、ネモと玄関に向かう。


「お嬢様、お待ちしておりました」


 馬車の馬を操っている男は、アクスロイド家の者ではない。学院からよこされた王家お抱えの騎士である。


「よろしくお願いいたしまぁす」


 にこにこするネモを横目に、サキカは馬車に乗り込む。馬車の座席は良くもなく悪くもなく、アクスロイド家の身分通りの質だ。


「動きますね」


 ゆっくりと動き出した馬車の窓から色々なものが見える。

 きらびやかな布を持ちながら呼びかけをしている商人や、母親に叱られている子供。氷の魔法を使って観客を楽しませる大道芸人。

 サキカはそれらの景色をみながら、ぽつりと声を出す。


「……本当に日本じゃないんだよなぁ」

「サキカさん、今何かおっしゃいました?」

「いや、別に」

「?」


 サキカは気を取り直して、鞄をぎゅっと持つ。なぜだか、手のひらには汗が溜まっていた。


 ◇◆◇


 やがて馬車が進んでいくにつれて、街並みは薄汚れた石畳の道から、小綺麗な大理石の道へと変わっていく。


「随分ときれいですねえ」

「そりゃあ貴族様が通る道だからね。それに、商人もあんまり見えないでしょ」

「確かに……なんというか、活気がないですね」


 貴族と平民とでは大きな違いがある。

 もちろん裕福かどうかもそうだが、それ以上に、貴族が家を持っているところは商人が見えない。貴族は家の中に商人を呼び、そこで買い物をするため、わざわざ外で商売するメリットはないのだ。


「何度見ても慣れませんねえ、この建物」


 ネモが目を細める。

 目の前に見えてきたのは、大きな長方形をしている建物、ラスクリード王国魔法学院だ。ラスクリード王国に住む貴族、そして隣国から派遣された留学生の大半は、ここラスクリード王国魔法学院に入学する。

 もちろん王族もここの生徒として教育を受けているので、この学院には宮廷魔法師が魔法指導として、常に在籍している。


「さあて、行きますか」


 馬車を降りたサキカは、数カ月ぶりの学院に足を踏み入れた。

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