言の葉(短編小説)「あなたを映す」
あなたはいつも私を見てくれる。
嬉しい顔、悲しい顔、怒った顔、どんな顔も私に見せてくれる。
新しい服を買うと一番に見せてくれて。
私はあなたの喜ぶ顔を見ると、私まで嬉しくなった。
片想いでもいい。
あなたさえ笑顔でいてくれたなら。
その顔を見られたら私は幸せ。
だから、もう少しもう少し
あなたの姿を見させてください
そう私に映るお月様に願いをかけた
願いは叶わず
私より先にあなたは旅立とうとしている
私はあなたの最後を映す
鏡だから…あなたの元へ行けない。
どうかあなたが次に生れかわる時も私が映せますように…。