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第240話 偽善者

「はあ、何言ってんだお前」


 時雨は領が持つ薬のケースを見つめながら声を上げる。


「能力を消す?本気で言ってんのか」


「ホントなんだって、この薬があれば能力が消せる」


「薬?そんな小っちゃい薬で消せるわけないだろ、そもそもあったとして何でお前みたいな一般人が持ってんだよ」


「えーっと俺さずっと水泳選手になりたくで小学生の頃から...」


「隙あれば自分語りか、簡潔に話せ」


「簡潔って...えーっと能力のせいでずっと追いかけていた夢が消えたんだ、それでどうにかできないかって相談したらボブって人がくれたんだ」


「...........ボブ?」


「英語の教材かよとか思うかもだけど、本当にそんな名前の...いや別の名前もあったな」


「あれかピーカル何とかって言う」


「そうそうそいつ、俺が知らないだけで有名人なのか」


「マックスがそいつだけは手を出すなって言ってた、確かクトーグ結成の理由を作ったとか言ってたな、こいつが居なければ組織もX-ゾーンも無かったとかなんとか」


「まて、あの人お前ら側の人間なのか」


「チゲぇよ産まれてばかりのスカルを殺そうとして、マックスがスカルを守るためにX-ゾーンって言う俺達の住む次元を作ったんだ、詳しいことは知らねえけど」


「な、なんだが強そうな設定だな、それホントかよ」


「だから俺も詳しく知らねえ、マックスの奴は話そうとしねぇからな、ただ神の山の薬学者でスカルとタメを張るバケモンだって聞いてる、悪いことしてたら一番会いたくない奴だ」


「連絡先交換しとけばよかった」


「それがありゃ、クソアマの能力が消せる」


「そうだ、だが...どうやって飲ませる」


「俺に任せろ」


 そう言いながら薬を手に取り握りしめると能力缶と書かれた缶を取り出し、缶を振り水を操作できるようになる青の飴を取り出し口に頬張る。


「水を操作して無理矢理飲ませてやる」


「...ほんとお前いろんな能力持ってるよな、なんでそれで勝てないんだよ」


「うるせえな、練習中だし広く浅くで一点特化な能力がねえんだよ」


「資格だけあって仕事できない人みたいだな」


「そろそろしばき殺すぞ」


 コトコト と足音が聞こえ2人は身構える。


「懐かしいなぁこの公園」


 まるで昔話をするような声のトーンで話しながら2人の前に現れる。


「何が懐かしい、てめぇここに来たことないだろ」


「ここさ雷華が死んだ場所なんだよね、自分で何度も何度も噴水に頭を叩きつけて死んだ場所、実は現場見てたんだよね、凄い光景だったなぁ何度も何度も笑いながら叩きつけててさ」


「てめぇのご主人様がやらせたんだろうが」


「そうなんだけどね、でも気持ち良かったと思うよ、叩きつけるたび幸福感を感じるようにしてたし、死んだときは天にも昇る気持ちだと思うよ」


「な、なんだよそれ人の命を何だと思ってるんだ」


「こいつにそう言う人間の話は意味ねぇよ、心も体も人間じゃない」


「酷いことを言うなぁ」


「事実だろイカレ女、ここでてめぇの人生終わらせてやる」


 そう言いながらアニマル缶と書かれた缶を取り出すと、缶を振るい紫色の飴玉を取り出し口に入れると手のひらから巨大なはちの刺のようなものが生え、さらにお尻あたりからさそりの尻尾に似た生えた。


「な、なんだそれ」


「いくぜ!!」


 足から水を放出しその勢いで千歳に接近し手のひらの刺で突き刺そうとしたが、千歳は手に握っていた砂を投げつけ目をつぶす。


「くっ!?目が」


「隙あり」


 しゃがんで懐に向かって抱きつくとそのままブリッジするように後ろにのけぞり時雨を地面にたたきつける、スープレックスと言われる技が完璧な形で決まった。


「ぐべ!!」


「大チャンス、男の尊厳を壊してあげる」


 頭から叩きつけられ、漫画みたいに肩のところまで地面にめり込んでいる時雨の金的を狙いかかと落としを決めようとしたが領が氷柱を投げつけそれを止める。


「や、やめよ」


「...なに邪魔すんの、ただの一般人の分際で魔法少女に...」


 グサ そんな音を立てながら蠍のような尻尾の刺が鋭く突き刺さる。


「か、体...が」


「俺をよぉ...舐めすぎじゃねえか」


 地面からゆっくりと抜け出し追撃に両手の針で突き刺し、その体に猛毒を注入する。


「ただ針を生やす能力じゃねえんだ、猛毒の毒を出す能力だ、少しでも体に入ろうものなら動けなくなって死ね、それを大量に体に注入した、俺が動けなくなったと思って油断しただろ


「ふふふふふ、お、おもじろい、ごどするじゃん、でどうするの毒なんて私に効かない」


「だろうなだがこいつはどうだ」


 時雨は握りしめた薬を無理矢理口に入れさせ、さらに口を手で覆い手から水を出す。


「ふぐう!!」


 千歳は水と一緒に薬を飲みほす。


「う”ぐう”う”う”う”!!!!」


「俺でお別れだクソ姉貴」


 そう言いながら首の骨をへし折り千歳の息の根を止め立ち上がる。


「...お、終わったのか、なんだがあっけなかったな」


「ああ、だがこれでマインドレスを殺せる」


 そう言いながら千歳をまたいで領のもとに駆け寄る。


「文句言うなよ、人殺しだとかなんとか」


「俺に言う資格はないよ、ただ魔法少女には止める資格はあるだろ」


「そんなの関係ねえな、魔法少女も警察もヒーローも関係ねぇ、全員叩き潰してやるよ」


「ほどほどにしろよ、取り敢えず通報で警察が来るだろうから早く帰るぞ、一晩だけでもいいから俺の家でゆっくりしろよ」


「自分で帰れ俺はあのクソアマの死体を...あ?」


 時雨は千歳の死体があるはずの場所を振り返ると、そこには何もなかった、確実にあるはずのあったはずの死体がないのだ。


「どうなっ...」


 まるで影が襲い掛かるように黒い何かが時雨の頭を掴み地面に叩きつけ、領を吹き飛ばし電柱に激突させる。


「ぐああああ」


「な、なに!!」


「ふふふふ、まだまだ夜は」


 黒い影は照明で照らされその姿をあらわにさせる、その姿は薬を飲まされ能力が消えたはずの千歳だった、千歳は時雨の右腕を掴むとそのまま握りつぶした。


「ぐあああああああああああああ!!!!!!!!!」


「な、なんで薬が効いてない!!」


「始まったばかりよ」

どうも、暑かったり寒かったりで体調を壊しそうな作者です、なんか最近寒暖差が激しくないですか、眠る前は暑いと思って布団を蹴ったら3時間後ぐらいには寒いと思って目が覚めるんですよ。


暑いのは苦手なんで涼しいのがいいんですけど、どっちかにしてくれと凄い思ってしまいますね。

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