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第237話 休戦

 前も見えないほどくらい森の中、体操服姿の少年の前に魔術師のような格好をした男が姿を現した。


「梔子 時雨くんだね、私はマックスだ林間合宿の最中だが来てもらおう」


「来てもら?なんで変なコスプレしたおっさんについていかないといけないんだ、キャンプファイヤーの途中だし俺は戻るからな、おっさんも速いところ帰れよ、誰か知んねえけど」


「君の家族が死んだぞ」


「は?」


「火事に見せかけて君以外全員殺されたし、君もいずれは殺されるぞ」


「な、なに言ってんだよおっさん」


「信じたくなったらこれをどこでもいいから刺せ、そうすれば迎えに行こう」


 そう告げた瞬間緑の煙と共に男の姿が消え、地面に短剣が突き刺さっていた。


「なんなんだ、今の冗談になってねえぞ」


「時雨くん!!」


 先生の声が聞こえ振り返ると息を荒くさせながらこっちに向かって走ってくる先生の姿があった。


「なんだよ先生、ただトイレ行ってただけで」


「違うんだ、今警察から連絡があって、君の家が火事にあって、ご両親が・・・」


「は?」



 ~~~~~~~~~~


 悪夢にうなされながら時雨は知らない部屋で目を覚ました、揺らぐ視界であたりを見渡しながら起き上がると変身アイテムと3つの缶を持つ領が視界に入った。


「よう久しぶりだな」


「...誰だお前」


「人の事ボコボコにしておいてよく言えるなお前」


 そう言いながら領は長袖を捲り赤くはれた腕を見せる。


 序盤も序盤の話だが、時雨がドロップスとして凪達のいる学校に襲撃し、凪達のクラスで大暴れ、その時に領は時雨にボコボコにされており、それから時間が経った今でも傷は残っていた。


「...誰だ」


「お前がボコボコにした大月 領だよ!!人様の事あんなにボコボコにしておいて覚えてないとはな」


「知るかよ興味もねぇ」


「なんだとお前」


「どうせスーツ探してる時にボコボコにした奴だろ、いちいち覚えてねえよ、それよりここはどこだ、俺をどうする気だ」


「ここは俺の部屋だよ、お前いきなり空から落ちてきたんだよ、ボロボロとは言え学校を壊した奴なんて先生に見せられないだろ、だから俺の部屋まで運んだんだよ、どれだけ大変だったか」


「お前、馬鹿かよ……。そんなことして、何の得があるんだ……過去にボコボコにされた相手をわざわざ休ませるなんて、お前の頭はスカスカか」


「だがこれが無ければ何もできないんだろ」


 そう言いながら手に持っている時雨の道具を見せびらかす。


「返せ」


「返したら俺の部屋滅茶苦茶にすんだろ、それがわかってて返すわけないだろ」


 2人の間に火花が散るように睨み合い、時雨は領に飛び掛かるが領は手から氷を出し時雨にぶつけてベッドに押し倒す。


「ちっ…」


「大人しくしてろよ、これないと何もできないんだろ、今なら俺のほうが上だぜ」


「俺をどうする気だ」


「どうするって…どうする気もねえよ、単純に怪我してたから治るまで大人しくしてて欲しいだけだ」


「警察に突き出す気か」


「警察に突き出しても証拠不十分だし未成年だしで捕まらないんだろ、それに捕まってもお仲間さんが逃がしてくれる、だからやったところで意味がないだろ、所で仲間はどこだよ」


「仲間は居ない」


「は?いや居ただろ、あの...全身包帯巻きの奴とか黒のゴスロリ服の奴とか」


「俺は組織から抜けた」


「なんで」


 なんでそんなことテメエに言わないといけないんだよ、そんな事を考えていそうな表情を浮かべながら領を睨みつける。


「聞かせてくれたっていいだろ命の恩人なんだぞ」


「知るかテメエに助けられなくても俺は死ななかった」


「強がってんじゃねえよ、言っとくがな少し前にボコボコにされたこと根に持ってるからな、今すぐやり返してもいいんだぞ」


「強がってんじゃねえよクソガキが、もうやめた組織の事なんてどうでもいいだろ」


「..............」


 時雨は低い唸り声をあげながら睨みつづける。


「なんだよ野生動物かお前は」


「っち、隠してたんだよあいつら」


「なにを」


「姉貴が生きてること」


「...生き別れの兄弟がいたのか」


「小学生の時家族が全員殺された」


「お、おう…」


「姉貴は殺される少し前から行方不明になってた、だけど警察は見つけられず、家族は全員皆殺しだよ」


「...思ったより重い話が出てきたな、でも何でお前は殺されなかったんだ」


「林間合宿で遠くに居たんだよ、その時に家族の死が知らされて組織に誘われた」


「で入隊して...お姉さんのこと黙ってたことが理由で離脱」


「俺の目的は家族を殺したレスへの復讐、だけど姉貴が奴の隣にいることをずっと知ってて黙ってた、俺がドロップスの力を手に入れるために改造手術を受けたって言うのによ」


「お前の力って仮面ライダーみたいな感じだったんだな」


「飴舐めて強くなる能力なんてあるわけないだろ」


「砂糖とポパイで強くなる奴らなら知ってる」


「特定の栄養素で強くなってんだろそいつら、カフェインで頭がさえるのと同じだ、飴の種類で能力がコロコロ変わるのが人工的じゃなかったら怖いだろ」


「そんなん言われても知るかよ」


「テメェが聞いたんだろボケナス」


「組織を抜けたのはわかったけど…なんでお前そんなにボロボロなんだ、まさか組織の追ってが」


「そんなんじゃない、アイツらもう俺に興味ねぇよ」


「なら誰にやられたんだよ」


「言ってどうなる、クソ野郎抜けた理由話したんだからいいだろ」


「別にいいけどさ…お前組織抜けて家もないならどうすんの」


「お前には関係ない」


「まさか野宿か」


 その問いに時雨は無言で返す。


「マジで言ってんのお前」

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