第234話 第二次成長期
~~~夕日中学校・出入口禁止の屋上~~~
隠された梯子を使わないと登れない封鎖された屋上、凪と領は先生にバレないように屋上に上がった、現実の屋上はアニメみたいに出入り自由じゃないからよい子は真似しないように。
「ふぁ~あ、ねむ」
「どんだけ眠いんだよ」
「仕方ないじゃん、夏休みなんて事件事件事件で忙しかったし精神的にも参ってたし」
「あの配信者のことか、白色の子凄い泣いてたな」
「それもあるけど一番は彩芽さんのことかな」
「誰だそれ」
「子供がクロー・・・あ、ごめん忘れて、寝ぼけてとんでもないこと言い出しそうになった」
「途中できるなよ、すげえ気になるじゃねえかよ。と言うかなんで屋上で待たされてるんだよ」
凪は目をこすりながら隠して持ち込んだ携帯を取出し時間を見る。
「そろそろ来るかな」
「誰が」
「ボブさん」
「だから誰だよ」
「階段で連絡した時アメリカだって言ってたから、少し時間かかるかも」
「,,,え?アメリカに居んの、と言うかアメリカから日本ってどれだけ時間かかると思ってんだよ、相談に乗ってくれるのはうれしいけど、今日は帰るぞ」
「あ、待って、そろそろ来るから、と言うか見えた」
「何が?」
額に手を当ててどこか遠くを見つめる凪と同じ方向を見ると、空を飛ぶ何かがこっちに向かってくるのが見えた。
「なにあれ、鳥?いや飛行機...でもないな...人?」
おーい と両手を振る凪を何してんだと冷めた目で見ていると、遠くに見えていた金髪の男が屋上に着地し、その光景に領は口を開けて驚く。
「・・・は?え、なにこいつ、え、空飛んで来た」
屋上に着陸したボブは真っ白の歯を見せながら手を上にあげる。
「やあ久しぶりだね、元気にしてたかい」
「久しぶりですボブさん、いきなり呼んだのに来てくれるなんて」
「え?この空飛ぶゴリマッチョ知り合い」
「うん、この人がボブさんことピーカル・パティーさん」
「え?ボブどこから出てきた」
「君が大月 領くんだね」
ボブは体の埃を掃いながらゆっくり近づくが、領は服の上からでも分かる筋肉に正直に言って恐怖を抱き少し距離を置いた。
「な、何者なんだ、と言うかどういう経緯で知ったんだよお前」
「ボブさんは神様達の死体で出来た山を守護する人で元薬物中毒者の研究者で・・」
「おいこら待て、色々ツッコミたいことがあったぞ」
もはや懐かしい話になっているためおさらいしよう。
過去に凪がスランプに陥っている時にクラフトが気晴らしに山に行ったが、その山は神々の死体が時間の経過と共に山になった場所であり、その聖域を汚す存在を排除するためこの山に認められた存在であるボブが山を守っていた。
危害を加える気がない凪に山の案内をしている時に敵の襲撃を受け、最終的に山に眠るゴッドぅウォーズを手にした。
ボブは元々薬物の研究をしていた科学者で、出来た産物のせいで捕まり後に脱獄して世界中を飛び回っている時に山に出会い力を与えられ、現在は山の守護者でありながら、山で取れる希少な資源を研究し、様々な薬や道具を作成している超人だ。
「えーっとつまり、神様の力を持ってて国滅ぼしかけたことのある薬物中毒者の学者ってことか」
「私は薬学者なんだ、その研究で進める内にいろんな薬を開発しただけさ」
「それで国が滅んだと・・・なんでこんな人呼んだんだよお前、普通に危険人物じゃねえかよ」
「だってスーツ作ったのこの人だもん」
「は?待ってスーツを作ったのか、この人が」
「正確に言うと試作品さ、ダメなところが見つかったからね、それを直そうとしているところで実験資料が盗まれて、誰かがそれを改悪して今のスーツが出来てしまったんだ」
「そ、そうだったんすね、てっきり悪の親玉的な人かと」
「過去の使用者のデータは貰っているが君のような件は初めてだ、是非とも興味ある」
「あぁ〜まあ…はい、そっすか」
「取り敢えず座ってくれ、簡単な診察をしよう」
ボブはどこからか椅子を取り出すと領を座らせ、聴診器や注射器やらの道具を取り出し簡単な診察をやり始める。
そこまで本格的な診察ではないものの、領の肉体の異変はすぐに見つかった、体温が15度であることや体温を感じていない事、痛覚を感じるのが少し遅かったり。そんな感じで神経に異変が見つかった。
「体温が著しく低いが・・低体温症ではないな、体の器官にも特に問題見つからない...というより体が適用してるのか」
「で・・結局何かわかった...んすか」
ボブは領の体から聴診器を離す。
「スーツの使用と第2次成長期と被ったことが原因だね。スーツの力で能力と肉体の成長バランスが乱れたんだ」
「え、えーっと」
「分かりやすく言うと、能力と肉体は一緒に成長するんだ、しかしスーツの影響で成長バランスが崩れ能力が急激に成長し肉体が成長しにくくなった、数字を使うと...5:5だったバランスが1:9になるぐらい崩れてしまってる」
「そんなに崩れてるんすか俺、だ、大丈夫なんですか、このまま行けば俺の体壊れるんじゃ」
「成長バランスが崩れることは成長期によく見られることだよ、マジカル君が戦ったアーケーダーと言う男がいい例さ」
「え?あの人が」
「詳しく見てないから違うかもしれないけど、恐らく彼は成長期に突入したタイミングでバランスが崩れ肉体の成長が止まった、その変わりに能力が格段に成長した。彼は5:5が0.5:9.5ぐらいになったんだろうね」
「だから地味に強かったんだ」
「だから成長バランスが崩れることで死ぬことはないさ、皆調べてないだけで4:6だったり7:3だったりで崩れてるもんさ」
「そうなんすね。あ、あのちょっと話変わりますっすけど、無能力者ってどうなるんすか、能力者は5:5のバランスで成長するんすよね」
「それは簡単な話さ、無能力者の場合は10:0になる、能力者を基準に考えてるからややこしくなるだけで、本来はバランスなんてないんだよ10:0が普通で5:5あるのが異常なだけさ」
「だからみんな170㎝以下には人権ないって言ってるんだ」
「それとこれとは少し違う気もするけど、まあ言いたいこととしては無能力者と言う体が成長しやすい体質なのに成長できてないってことを言いたいんじゃないかな」
「そう言えば大谷さんとかシュワちゃんとか無能力者すもんね」
「スポーツ選手に無能力者が多いのはそれが理由の1つさ。僕も元は無能力者で成長しきった後に後天的に能力を獲得したから、身体能力が高いのかもしれないね」
「へ~、あれ?でもバランスが運動能力の低下と何の関係があるんですか、話だけ聞くと体が全然成長しなくなっただけですよね」
「確かに、筋肉痛になりやすいって話なら分かりますけど」
「本来は自然にバランスが崩れる、いきなり崩れるんじゃなくて緩やかに傾くんだ、アベノミクスみたいにね。だけど君の場合はスーツの影響でいきなりバランスが崩れてしまったんだ」
「カエル的なこと」
「なんでいきなりカエルの話が出てきた?」
「ほらよく言うじゃん、カエルは最初から高温の水に入るとすぐ抜け出すけど、徐々に温度を上げていったら気づかないって」
「彼女の例えがあってるね。もっと具体的に言えば、能力に適用出来るよう体は成長する、例えば手から火が出る能力なら火傷しないように肉体が変化する、急激な能力の成長に肉体が適用しようとしているんだ」
「体温が低くても俺の体が問題ないのは適用してるってことっすか」
「そうさ、君の体力の低下はその急激に適用しようとして肉体が変化したからだと思うね」
「つまりしばらく待てば、俺の体力は元に戻るんすよね」
「...そうでもないさ」
どうも眠い作者です、最近ものすごく眠いんですよね、その癖に11時ぐらいになっなら目がぱっちり覚めるというおかしな体になってます。