第196話 責任の有無
スーパーの事件から2時間後、謎に1日に3回犯行を行うブラザーが2回の犯行で終わるわけがない、そのため警察署内はピリついた状態が続いていた。
しかしそんな中炎二達警官は誰もいない大きめの公園を封鎖していた、特に才木とは関係がなく、人も少ない公園を封鎖していた。
「おい、桜井よぉ」
「なに木下」
封鎖作業をしている女性警官に犬の顔をした男性警官が話しかける。
「これ意味あるんすかね、こんな場所狙わないすよねあいつが狙うのって自分に関係する場所っすよね」
「どうせムイナの悪知恵でしょ、いつも通りだけどなんで警部はあいつを信用してるのかしら」
才木が事件を起こしていた場所は自身に関係する場所で人が多い場所だった、妻との結婚式場や子供が好きだった遊園地、妻に告白した場所、子供が生まれた病院。
事件を起こしたありとあらゆる場所が才木に関連する場所だった、だがこの公園は全くもって関係はなく人も多くはない、この2人の様にこんな公園に才木が現れるわけがないと思う警官は多くいた。
そんな中公園の中央で炎二と凪は集まり、ムイナは他の警官にバレない様に木の上にかくれているが…全然隠れられていない。
「…あ、あれ隠れてるつもりなんですよね、」
「本人は真面目にやってるつもりなんだろう、あまり目を合わせるな」
学芸会の木の役みたいに隠れているムイナから目を逸らすも待機している警官達と目があい、直ぐに目線を逸らす。
「その…炎二さん…私って必要ですか」
「必要ないと言えば必要ない」
「で、ですよね、何だか今日足を引っ張ってばかりで」
「俺も昔はそうだった、けど今こうやって部下を持って指示ができる様になったのは足を引っ張り続けて、いてもいなくても良い現場に居続けたからだ、無理にいろとは言わないが…少しでも何かを学びたいならいた方がいい」
「‥わかりました‥でも……やっぱりその…」
凪は警官が大勢いるこの場の場違い感からいずらく、すごくモヤモヤしていた。
「(すごい…いずらい、そもそも完全武装した警官に女の子がいるだけでも場違いなのに、ニチアサみたいな格好した女の子が居たら余計に場違いだ)」
「どうした」
「その…す、少し離れます」
気分転換に凪は炎二から少し離れ、警官が少ない池に訪れ椅子に座り、今日の自分を思い返す。
ブラザー相手に手も足も出せず倒せるチャンスだったワンデイの矢も外し、自分の相談のせいでブラザーの奇襲を成功させてしまった事
偽物を本物だと思い込んで戦いの邪魔をし、さらにムイナの作戦をバラした事、今日のありとある行動が空回っていて上手くいっていない。
「…やっぱり帰った方がいいのかな、これ以上いても足を引っ張るだけだし」
少し迷いがありながらも立ちあがろうとした凪に近くで警備していた赤口が凪に話しかける。
「ひゃ!!」
「ごめん驚かせたかい、少し離れたところに居たから何かあったのかなって思って」
「いや、大丈夫です少し考え事してただけです、よりより赤口さんは大丈夫だったんですか、スーパーで待機してたんですよね」
「ほんと災難だったよ、おかげさまで泥だらけ、君は最前線にいたんだろ、何かされなかったかい」
「私は……別にしてないと言うか、出来なかったと言うか…」
「何も出来なかった事はないさ、君が何も出来なかったことになるなら僕達はどうなるんだい」
「それは…その……すみません」
「君はよくやってるよ、そんなに若いのに僕なんかよりもちゃんとしてる、僕なんかの凡人と違ってね」
赤口の身を削った慰めだったが凪の心には特に刺さることはなかった、正直に言って「あ、そうですか」と言う感想しか出てこない。
普段の凪なら「そんなことないですよ」とかの言葉が出ただろうが今の凪には出てこなかった、足手纏いな自分に価値なんてあるのか、そんなことしか考えていなかった。
「その…お兄さんの才木さんは赤口さんから見てどう言う方だったんですか」
「どうしてそんな事を聞くんだい」
「…(ブラザーと才木さんは別人かもしれない、それを確かめるために過去の才木さんの事を聞きたい、そう言ったら赤口さんは喜ぶかもだけど
これがただの憶測でブラザーが才木さんだったら、一度期待を持たせておいて、突き落とすことになっちゃう、それほど残酷なことはないよね)」
瞼を閉じ一呼吸して考えをまとめ適当な理由を作る。
「なんで罪に走ったのか、その理由が知れたら助けられるかな…って」
「助けるか・・君はあれが助けられる存在だと思ってるのかい」
「そうじゃなくても心の傷は理解してあげたいんです、だからその心の傷を知りたいんです」
赤口は唇を嚙みしめ拳を握ったが一同落ち着き口を開く。
「昔の才木か…思い返したくもないな嫌な思い出ばかりだ」
「何かされたんですか」
「僕はね…芸術家になりたかったんだよ、だけど才木は常に俺より優れていた、天才と周りから言われる才木と違って僕は凡人の赤口、逆恨みなのは分かってるけどはっきり言って嫌いだったよ」
「赤口さんから見たら才木さんは嫌な人でしたか」
「嫌いではあったけど、嫌な奴じゃないただ才能に嫉妬してただけさ、僕が努力しても追いつけない圧倒的な差が生まれながらにしてあったんだ」
「こう…聞くのもアレですけど事件を起こしてるのを見て…その……」
「嬉しくないって言ったら嘘になるね、心のどこかではこう言うのを望んでたのかもな、所で…ここに警察集めてるけど炎二さんから何か聞いてる」
「いや、何も聞かせてません、きっと…信用してないんだと思います」
「信用してない?いやいやそ、そんなことはないさ」
「でもスーパーの戦いの時…私はなんの役にもたてなかった…足を引っ張った、そんな私が信用されなくて当然なんです」
「…あの2人は君を信用してるさ」
「いいですよ変に慰めなくても」
「慰めなんかじゃないよ、あの2人は責任の重さを知ってる、炎二さんは部下と市民を守る責任、あの犯罪者は自警団としての責任の重み、それを十分理解してる、その責任を君に背負わさない様にしてるんだと思う」
「責任…ですか」
「あの2人はそれを理解してる、だからこそまだ若い君に背負わさない様にしてるんだと思う、だから信用してるしてないの話じゃなと思うよ」
「責任か…」
凪は自分の行動一つ一つを思い返す、魔法少女に変身したこと、ドロップスやフェイスを倒したこと、今までは目の前の敵を倒すだけに集中していた、けどその行動に責任感があっただろうか。
敵を倒すことに対する責任、犠牲を出すことへの責任、今まで責任なんてものを考えたこともなかった、だから薄っぺらいと言われるのだろう。
覚悟や決意だけではいけない、自分の行動一つ一つに責任を持たなければならない、そんな責任を自分に果たせるのか…凪は目を擦りながら自分の責任を考える。
「私に責任なんて背負えるのかな」
「あまり言いたくないけど背負うべきじゃないよ、まだ若い子が大人ですら辛くなるような責任を背負うべきじゃない、正直に言って魔法少女になるべきじゃない」
「最後の言葉以外には同感だな」
後ろから炎二の声が聞こえ振り返ると炎二が拳銃を手に持ち銃口を向けていた。
「こんな責任背負わせるべきじゃない」
どうもエイプリルフールだと言うことに夜中に気づいた作者です、なんか変なツイート増えてるなと思ったらエイプリルフールでしたね、なんかレベルファイブが炎上してましたね、正直に言ってエイプリルフールネタをやるよりも先にやることあるだろとは思いましたね。
さて気づけばこの小説もあらすじとかも含めて206話も投稿してますね、ここまで投稿してブックマークも変わらないので早く終わらせたいと言うのが正直な感想ですが自分でもここまで投稿できるとは思ってなかったです。
正直どこかでエタると思ってました、そこまで人気のない本作ですが一応完結までは書く予定ではありますのでここまで見てくださってる物好きな方は最後までお付き合いくださるとありがたいです。