第192話 芸術の模倣品
ワンデイの矢を外した凪は体を震わせながら再度糸を引こうとしたがブラザーは十字架を指差す。
「くっ」
「忘れてないか、俺にはヨォ人質があるんだぜ」
「うわぁすごい卑怯、と言うよりわざわざ女子校狙うってそんなに女子高生を人質にしたかったの蕪木 博才刃卍」
「え?何その頭悪い名前」
「ほう、俺を知ってたか」
「うそ本名なのこれ」
「いや全く知らなかったよ、顔全然隠してなかったから顔検索機能使って検索したら出てきた、有名芸術家らしいね知ってるピンクちゃん」
「芸術家で…変な名前…なんかどこかで聞いたことある気がします、ニュースかなんかで」
「すごい名前だげどこれ本名」
「本名のわけなかろう、そんなセンスのかけらも無い名前は捨てブラザーフェイスと改名したのだ」
「前の名前の方が好きかな私」
「え?自分でつけた名前にセンスがないって言うの」
「過去を否定してこその芸術家だ、覚えとけピンク頭のちんちくりん」
「そ、そんなこと言わなくても」
「ちょっと女の子悲しませたらダメなんだよ、それに自称芸術家がなんでこんな事をしてんの、ネットで軽く調べたけど…酷いね自分の妻と娘を殺害し、両親を殺害…」
「な、なんでそんな酷い事を」
「酷い事?おいおいおいおい、奴らは俺の芸術の一つになったんだ、どうせ死んだ忘れられるだけの凡人が俺の手によって美しい芸術品となって死んだのだ、これほど光栄なことはないだろ」
「それじゃあ…あの十字架も芸術品だって言うんですか」
「ああ、美しいだろ、十字架に群がる民衆が自らの罪という泥に囚われ十字架に触れることすら許されない、あぁ〜あ完璧だなぁ…我ながら惚れ惚れするよ」
「どうして、なんでこんな事を誰かに理解して欲しくてこんな事をしてるんですか」
「違うな芸術の為だ」
「本当にそうですか、貴方が言う作品から芸術以外の何かを感じるんです、嫉妬みたいなその・・何とも言えない物を、本当は芸術作品を作ることじゃない、なにか別の理由があるんじゃないんですか」
「……ふん、所詮は凡人どまりの…」
「全然わかんないやこれ」
「は?」
ムイナはヘルメットの映像越しにブラザーが作った芸術品を眺める。
「なんだろう…誰かへの嫉妬と言うか、凡人が形だけ真似た凡作って感じがする、オリジナリティと言うが独自性が無いというか…」
「必死の否定か、人質を使った芸術品は倫理的に良く無いと言う凡人の思考か」
「いや倫理観は関係ないよ、ただ…センスがないと言うか芸術品にすらなってない、いらすとやの方が芸術的だと思うよ」
「ふざけるなよ芸術品ですらないだと貴様!!もういいこの場で殺し…」
腕を膨張させ殴りかかろうとしたブラザーだったが、パトカーのサイレン音に動きを止め腕を元に戻す。
「ちっ、来やがったか」
「なに?警察が怖いの」
「違うな警察ごとき恐るるに足らんわ、だが奴らが来たということは5分後には貴様とは三流とは違うプロヒーロが来るからな」
「さ、三流・・」
「ねえねえ聞いた三流ヒーローだって、私基本的に指名手配犯としか呼ばれないから滅茶苦茶嬉しい、三流だって三流」
「喜ぶところなんですかそれ」
「にしてもこんな事しててヒーローが怖いんだね、あんな事しておいてヒーローと喧嘩するのも怖い人?それなら犯罪者なんてやめたら」
「なんとでも言え、俺は芸術家で戦うのが目的じゃない、そろそろ次の作品の準備と取りかからんとな、有象無象の凡人とガラクタの山で飾り尽くしてくれよう」
「ま、まって」
凪の静止も聞かずブラザーの体が崩れて、泥だけが残った、どこか納得がいってない凪の頭をムイナは優しすポンポンと叩いていると数台のパトカーが駆けつけ、パトカーから炎二が現れる。
「なぜ君がここに」
「あ、いや…その……すみません」
咄嗟なことに凪は頭を下げる。
「その…電話でフェイスが暴れてるって聞いて、その……私が知ってる女の人の方のフェイスかと思って」
「なるほど勘違いしたのか、取り敢えず頭を上げてくれ、警察官が魔法少女を脅してるなんて思われてくないしな」
凪は頭を上げ、炎二は部下に民間人の救出を命令すると2人に近づく。
「ねえ何かピンクちゃん少し変じゃない、少し精神的にまいってるかんじ」
「あまり言うなお前と違って色々悩んでるんだよ、それよりブラザーフェイスはどこに」
「さあ、なんかヒーローが怖いとか言って逃げてったよ、それと次の作品作りの準備がなんとかな」
「芸術家でしたよね、あれも芸術の一つだって言ってました」
「私には理解できないかな、なんか芸術って感じがしない」
「その点に関しては同感だな」
「でも…本当に芸術を作る方が目的なんでしょうか」
「どゆこと?」
「なんか…別の目的があるんじゃないかって思ってしまって、あんな酷い事をする正当な理由があって、それを隠すために芸術を言い訳にしてるんじゃないかって…」
「どんな理由があるにしろ、被害者が出て以上捕まえないといけない、それはわかるね」
「そう・・ですよね」
凪は再び下を向き、そんな凪の頭をムイナが撫でる。
「なんだか前会った時と変わったね」
「これからもっと変わるための準備をしてるだけさ、それよりそんなでかくてごついガントレットつけて撫でるな、見てて頭割るんやないかとひやひやする」
「そんなへましないよ」
そう言いながら手を離す。
どうも久しぶりに寿司を食べに行ったら物凄く美味しくてお腹いっぱいな作者です6000円分食べました、物凄く美味しかったです。
さて今回は少し前の炎二さんの発言に関して書きます、警察や裁判所には善も悪もないという発言ですが…私はそうとは思ってません、作者とキャラクターは別人ですからね。
私は正直に言って両方とも無駄にプライドが高い悪よりの善だと思ってます、ただ…本来は警察や裁判所はこうあるべきだと思っています。
プライドもなく偏見もない、ただわかりやすい基準を元に事実の確認をする仕事、これが本来の警察や裁判所の仕事でそれ以上もそれ以下もないとべきだと考えています。
簡単に言えば炎二さんの発言は私の望む警察や裁判所と言うわけですね、現実は全然違いますけどね。