第184話 懺悔室
孤児院、野球ドーム、八百屋、キャンプ場、これらを巡った凪は他に行くところがあるとはいえ多くて後2か所でしょ、と考えていたがその予想をはるかに超え、少年院、警察署、旅館、公園、市民館、などなど合計19か所もの場所に行ったのだった。
流石の凪も車で移動したとはいえそんなに移動すれば疲れるもので狐みたいに半目になりながら河川敷であくびをしながら体を伸ばす。
もう少しで日は完全に沈み、後20分もすれば夜が訪れる、疲れたけどいろんな場所を見れて楽しかった凪とは違い、彩芽の表情に疲れはないが何か考えているような重い表情を浮かべていた。
今日一日様々な場所を巡った、彩芽が子供達と楽しそうに触れ合っている時も笑顔を浮かべながらも何処か悲しげな表情を浮かべていた、そのことに凪は気づいていた。
「何かあったんですか」
「ええ」
「その・・私でよければ話聞きますよ」
「まさか私もこの年齢になって子供に懺悔する事になるなんて」
「え?懺悔」
「話す前に少しお願いしたいの猿渡 凪としてではなく、魔法少女マジカルピンクとして聞いてほしいの、一市民の少女じゃなくて正義の味方として、この罪を聞いてほしい」
「………つ、罪って…わ、分かりました」
戸惑いながらもそう言うとハートのストラップを取り出し、手首のバンドにかざすと凪の口が自然と動き体から眩い光を放つ。
「マジカルマジカル、私のハートもパステルピンクに輝いて、魔法少女 マジカルピンク!!」
そんな今の空気とは場違いの口上と共に凪は魔法少女に変身する。
「・それほんと・・」
「言わないでください本当に自分でも思ってますから、でその・懺悔って何ですか、そんな重たい話を今から」
「そうよ、今日いろんな所に行ったじゃない」
「はい色々行きましたね、恐竜パークとかヒーローズマンションとか」
「行く先行く先で子供にあったと思う」
「え、ああ・はい、緑ちゃんとか啓介くんとか美空さんとかあとは・・」
「…それ、全部私の子供なの」
「………え?」
数が多いから二進数で数える準備をしていた凪だが彩芽のその言葉に驚きが隠せなかった。
「え、その・・え、えーっとその・出会った中何人が」
「28人」
「え、待ってください、え・・28人え?28人!!待ってくださいどういうことですか、まず双子以外全員苗字違いましたし、皆さん親は違う人だって・」
「一から話すから落ち着いて」
「落ち着けませんよ!!」
「私が所属している組織のMSCは魔力関連物の管理をしている、だけど組織の中で魔力を自在に使えるのは私だけ、魔力のない状態で魔術を使えばどうなるか教えたっけ」
「えーっと暴走するとかでしたっけ、それで国が滅んだとか」
「組織は様々な方法で魔術を使おうとした、その度に危険な代償を支払った、それが私によって無くなったのよ、私の登場で組織の研究は飛躍的に向上した」
「そ、それは良かったですね、なんか子供の話であまりよく入ってこないですけど」
「私のおかげで研究は進んだ、だけど私が居なくなったらどうなるか、まだ解明されていない魔術は山のようにある、私が死ねば研究は元通り危険な代償を支払うものになる、だから組織は第二の私を作る研究を始めた」
「もう一人の彩芽さんを作ろうとしたんですか」
「ええ、私と同じように魔術の相互作用を使ったり、遺伝子をもとにした完璧なクローンを作成したり、けれどもどれも上手くいかなかった、その上手くいかなかった研究の一つが私に子供を産ませることだった」
「産ませるってそんな酷いことを組織に強要されたんですか」
「強要はされてない」
「え?あ、そう・なんですか」
「組織は子供1人産むたびに500万も私にくれた、書類にサインもハンコも私印もしたし動画も取った、組織の中には「やらなくていいよといい」と言ってくれる人もいたけど、私はやった」
「金のために子供を産んだんですか」
「否定は・できないけど、少なくとも私はこれがより良い未来のためだと思った、能力と魔力はバランスが取れていたけど、魔力が消滅してそのバランスが崩れた、クリフォトが言っていたでしょ世界は崩壊してこの世界は再構築された世界だって
私の憶測だけど、世界が崩壊した理由はそのバランスを何100年も放置したからだと思う、だから私は少しでもバランスが取れるように子供を産んだ」
「そうなんですか、えーっとその・・彩芽さんが産んだのは分かりましたけど父親は誰なんですか」
「精子バンクに預けられた物で子供によって遺伝的父親は違う、いろんな可能性を試したの」
「だ、だとしても28人って野生動物じゃあるまいし」
「2人失敗だけど成功したのがいたから、その成功をもう一度味わいたかったんでしょうね」
「えーっとつまり今日会いに行った子は・・えーっと」
「魔力の適性が何もない失敗作と呼ばれた子供ね、そう言う子供は私の手から離され里親に回される、もちろん実験のことは秘密よ、引き取り手も知らないし私も教えてない」
「まるでペットを相手にするような言い方ですね、自分がお腹を痛めて産んだ子供ですよね」
「分かってる、自分のエゴのためとはいえ子供を捨てた、だから懺悔だと言ったのよ」
「捨てたのに様子を見に行ったんですか」
「捨てた私が言えた立場じゃないのは分かるけど、一応自分の子供がどう成長してるのか気になるのよ」
「その・・えーっと、ごめんなさいなんて言えばいいのか」
「何を言われても文句は言えない、それほどのことをしたから」
凪の頭の中で罵倒と同情が入り乱れ、頭が破裂して口から罵声が飛び出しそうになったが何とか堪え、同情の言葉をひねり出す。
「まあまあ、えーっとその・・子供達もすくすく成長してるみたいだし、彩芽さんも・その・・反省じゃないですけどこうして打ち明けてくれたわけだし」
「・・まだ、打ち明けないといけないことがある」
まだ何かあるのかと思ったその瞬間
「でしょうね、まだ懺悔は」
「【お・・・わ・っ・て・・ない】」
その声が聞こえ、振り向く間もなく足元に蜘蛛の糸が纏わり付き、まばたきする一瞬で体全体を包み2人を拘束し逆さづりにする。
「うわぁ!!こ、この糸」
誰がこんな事をしたのか、顔を見なくても声と糸で察しがつく、糸を操る組織の幹部クローシアとその側近のサイキックス、だけどなんでこの2人がここに居るのか凪は理解できなかった、それよりもこの糸から抜け出して彩芽を助けないと、そう考えていた。
「ぐぬぬぬ」
「【がん ばる わねでも むだ よ】」
「さあ人生最後の懺悔お聞かせくださる、お母様」
どうも空白の2ヶ月でもっと何かできないかと考えている作者です、え?なに空白の2ヶ月って作者が投稿できなかった期間かと思われたかもしれませんが違います。
まぁちょっとしたお遊びレベルの伏線でブックマークが100を超えたら投稿する予定の第3章で回収されるものなので気にしなくて大丈夫です。
さて今回は彩芽さんの子供に関してのお話です、彩芽さんの子供は30人居ますがどうして30なんだと思ったかもしれません
理由として最初は50人で行こうとしたけど18年でそんなに産めないし、20人はなんだか少しインパクトにかけるから30にしよう、と言う理由と30はさまざまな神話に出る数字で尚且つソロモン72柱を元にしようと考えたからです。
ユダの裏切りの報酬が30枚の金貨であり、彩芽が子供を裏切ったと言う表現ですが、ソロモンに関しては何で30人で72柱が結びつくんだよ算数もできないのかコイツはと思ったかもしれませんがこれは…まぁ2年後くらいに回収するつもりの伏線になってますので気長にお待ちください。