第168話 正当な復讐
地平線のかなたまでゴミが広がり、富士山のように積み重なったゴミ山や東京タワーに酷似した塔や半壊した国会議事堂などの世界中の有名な建築物などが宙に浮き、人間サイズの昆虫や滅んだはずの魔物がゴミだらけの地面を歩き、大量の墓が空に広がっていた。
そんな異質な光景に全員が目を疑う中、全員から見える位置にクリフォトが現れる。
「くっさ!! え?何この臭・・うっ!!」
「どういうことだこれは」
「・・・何この量のゴミ・・・」
【ここが我の住む狭間の次元だ】
「一体なにが」
「街に撒き散らしてたのはここのゴミなのか」
【かつて世界は滅びた、我は滅びる寸前にこの次元を構築し、崩壊寸前の世界の保護を行った、ありとあらゆる文化と象徴と10億人の人類をこの次元に保護した】
「待って世界が滅びた?」
「クローシアも言ってたなそんなことを」
【しかし世界が崩壊したことによる余波がこの次元以外にも起り始め、その余波を鎮めるため7大魔王が集結し世界の再構築をおこなった、ングバが原初神を作り出したように我は魔力を創り出し・・】
[まて魔力を作り出したのかい]
「じゃあ今使ってる魔法とかって、あなたが」
【そうだ、不安定な世界を安定させるプログラムの一種として魔力の基礎を我が創り出し、ファスターが魔法と魔術を生み出した、そして世界が正しく進むように我は転生術を創り出した】
「ちょっと待て な なんで?なんで異世界転生の魔法が正しい道に進ませるの?」
【世界を再構築するのに当たって、歴史通りに進まなければならない、我々が創り出した人類では姿が似ていても同じ思考の持ち主は作り出せない
だから別世界から同じ思考の持ち主の魂を引きずり出し、我々が創り出した肉人形に転生させる必要があった】
「・・・それで創り出したのがお父様なの・・・」
【話が分かるな、我々は様々な試みを試し世界を創り出し後は我々の手など加える必要などなく、自然に正しい道に進んでいくだろうと考え手を加えることをやめ、我も傍観者として見守りこの次元を豊かなものにしていた】
「豊かにって」
「・・・とてもそうには見えないわね・・・」
【人類は我々だけが使うことを許された転生術を見つけ出しそれを悪用、さらに転生術はこの次元を経由する都合でこの次元を知った人類はこの次元をゴミ箱や危険な魔物を封印するための次元に利用した】
「そ、そんな、じゃあこのゴミは」
「先祖のゴミ」
【この次元は危機に陥り我はこれをやめさせるため説得をしようと人間の次元に訪れ話した】
[ま、まて、説得だと、僕の知ってる話と違う]
「人間を襲うつもりはなかったの」
【襲えば正しい歴史から外れてしまう、だから説得に出向き各国の王にやめさせるよう告げそれに了承した、だがそんなものは噓だった、謝罪として用意された場で我の体はバラバラにされ、残った魂を封印しこの次元に送り返した】
「・・・便利なゴミ箱をみすみす逃すわけがない・・・」
【封印された我は何もできず、創り上げたこの次元と民がゴミに埋もれるのを見るしかなかった、大自然も海に山に美しい建物の数々を失い、人類は我の体で好き放題暴れた挙句自身の罪を全て我に押し付けた・・これが不当な怒りだと八つ当たりだと・・】
クリフォトは拳を握り締めプルプル震え怒りと共に力を集める。
「ね ねえ私達さ もしかしなくても地雷の上でタップダンスしてた?」
「不味いぞこれは」
【ングバが魔力を消して止まったが、30年前ほどからこの次元と人間界の空間が意図的に接続され始めた、そうなれば再びこの次元にゴミを廃棄する、それを何もせずに指をくわえて傍観しろと、もうゴミしかないんだから大人しくゴミ捨て場にしろと・・そんな暴行を認めろと言うのか!!!】
クリフォトの怒りは爆発し、クリフォトは途轍もない衝撃波を体全体から放ち、凪はその勢いに吹き飛ばされゴミ山に激突し、穂乃花はしがみついていたタワーから手を離しビルに激突、真琴は自身の背後に壁を生成して何とかくらいつき、太一を乗せる列車は蛇のようにとぐろを巻きながら頭のおかしい動きで走る。
彩芽はムーンを掴みながら図書館の壁にしがみつきこらえる。
【やはり魔力を創り出したのがダメだったんだ、だからこそこの世の全ての魔力関連物を破壊し、この憤怒を貴様ら全人類の命でおさめよう】
「悪いがそうはさせない」
真琴は足元に壁を生成しながら走り出し、クリフォトに向かっていく。
「だ、ダメだよ叔母さん!!」
そんな太一の声は電車にかき消され、止めに入ろうとした凪達の元に怪物が現れ妨害する。
【この私に勝てるとでも思ったか】
クリフォトの殺意を込めながら手から黄金に輝く光線を放ち、真琴はその光線を壁で防ぐ。
その壁の裏に隠れながらマジカルリングの力でクリフォトの背後にテレポートすると一枚の壁を螺旋状に変形させ槍のようにすると背後から突き刺す。
【ぐおおおおおお!!!】
設定上破壊不可能と言われているゴールデンシールドはクリフォトの肩を貫き、さらに真琴はその槍状の壁を操りドリルのように高速で回転させそのままクリフォトの体を貫いた。
「お前の怒りは理解した、だが人類の全滅をはいそうですと認めるわけにはいかない、罪が何であっても私達は全力で抵抗する」
【このクソガキがああああああ!!!!】
クリフォトは怒りのままに殴りかかるが壁を生成して防ぎ、そのまま壁を押し出してクリフォトを吹き飛ばしピサの斜塔に激突させ、さらにクリフォトの背後と正面に壁を生成しサンドイッチのように押しつぶす。
【グぐぐぐぐ】
「彩芽!!魔術を」
「無理よ封印する奴は破られたし、道具は現実世界に置き去りにされた、奴の封印は無理よ」
「いや封印はしなくていい」
「美穂を諦める気」
「奴が美穂を乗っ取ったのは美穂の能力が奴の心臓だからだ」
「それが何?」
「美穂の能力は恐らく太一くんみたいに意志を持ってる、20年前に復活しようとして失敗したのはそのせいだ、心臓が意思を持って反撃した」
「・・・つまり奴は自分の心臓に嫌われてるの・・・」
「前回は魂だけの一体化で心臓は逃げ出せたけど、今回は肉体そのものを乗っ取られたから逃げることができなかった、だけどその意志ごと美穂の魂を引きずり出せれば」
「まさか、正気なの…上手くいったとして、肉体はどうするの」
「私の体でいい、だから今す・・」
「・・・危ない後ろ!!・・・」
真琴はその声に条件反射的に体を動かし攻撃を回避する。
その攻撃をしたのは自分と瓜二つの姿をしたミスティワイトだった。
「・・・偽物か・・・」
「なるほどこれが自分自身の前にいる感覚か、なんとも気持ち悪い」
どうもなぜか腰と頭が痛い作者です、特に痛める事はしてないんですけどなんなんでしょうかね、もうそろそろ食生活に気をつけろと体が警告しているのでしょうか。
さて今回はクリフォトと言うより狭間の次元の正体が明かされました、次元がゴミだらけと言う話は別作品の時点で描かれ、伏線だけが無造作にばら撒かれていたんですがようやく回収できて気分がいいです。
今回の話を簡単にまとめると、クリフォトは人類救済のために鏡と現実世界の狭間に別の次元を想像し10億人を救い、他の7大魔王と共に世界を再構築しました。
ですが、再構築後の人類が狭間の次元をゴミ捨て場として扱い、それをやめさせるための説得をしに来たら体をバラバラにされ魂だけの存在で次元に封印、何もすることもできず次元がゴミに埋め尽くさせるのも見ることしかできなかった。
と言うのが全体的な話です、真琴と彩芽の心臓の会話がいまいちよくわからなかった人のためにこちらも解説しますと
能力の中には意思を持っているものがあり、作中では太一くんの能力が意思を持っていると明言しています、美穂さんの能力も意思を持っており、クリフォトはその能力を狙って20年前に美穂さんに転生術を使いました。
転生術を使って別人の魂を美穂さんの体に入れ、弾き出された美穂さんの魂と能力を取り込んで復活しようとしましたが、能力が意思を持って反旗を振り返し、美穂さんの魂から分離して肉体にしがみつきました。
そして敗北し、今回はそんなことがないように魂と肉体両方を取り込んだ、と言うことです。
私はこう言う複雑な設定というのが大好きな人なので、良くないと思いながら出してしまいますが、ついて来れる人がいるのか少し不安ですね。