第163話 巨影にかかる虹
「チェンジアップ・マイ・プリンス」
虹色の光が暫の体から眩いほど放たれ、暫は変身する。
フードを着て隠していた傷も、袖に隠した小指だけの右手も、痛みも傷も全てを露わにしてクラウンは暫に力を与える。
ドレスのような可憐な白い服に虹色の虹がかかり暫を再び魔法少女に変身させる、ドレスのあいた隙間からマインドレスに受けた傷が露わになるが暫はそれを隠す気はない。
何故ならこれが今の自分だから。
負けた、悲惨に抵抗すらできず無残に、だけど今は違う今度は必ず勝つ、真琴が言ったように。
「な、なんだ」
「き、綺麗」
「あれってマジカルパープルだよな」
「凄い傷だらけ」
「でも来てくれたんだ」
「ちょっと待って!!え!?助手の女の子は先輩の魔法少女!?待って吾輩の理解が追いつかないし、私の先輩は倒れてるし」
「だ…い……じょうぶ」
「大丈夫じゃないでしょ!!」
周囲の目線が暫に集まる中暫は昔の懐かしくて暖かい記憶を思い返し、あの頃のまま言葉を紡ぐ。
「5つの光が無限にひろがる空に輝く、今こそ夢と希望の虹色がみんなの心にかかる時、魔法少女 マジカルパープル・レインボー、虹色の勝利をこの手に」
その決め台詞と共に拳を握ると背後に虹色のエネルギーで出来た拳が出現し、暫のが殴ると同時にその拳がフリーをぶん殴り、噴水まで吹き飛ばす。
「レインボー!!!」
「…………」
「す、すげえ!!30mは吹き飛んだぞ」
「いけ!!!!」
「頑張れ」
「・・・・」
「容赦なんてしないから」
暫は磁力を操り、周囲の車を持ち上げながらフリーに近づき睨みつける。
そんな暫を落とそうと立ちあがり握りつぶそうと手を伸ばす、その手を蹴って弾き持ち上げた車を豪速球で投げ飛ばす。
フリーはそれらを防ぐ体勢に入るが、車に気を取られた隙をつき一瞬で顔に接近するとそのでかい顎に思いっ切りアッパーをくらわせる。
「・・・・・」
フリーは上空吹き飛び、暫は周囲に虹を作り出すとその虹から光線を放ちフリーを貫く。
フリーの体を焼き尽くしながら噴水に激突、体のあちこちが溶け、赤と銀のスーツの中からどす黒く腐臭をはなつヘドロのような物質が溢れ出す。
もはやフリーの名残など何一つない黒い怪物が立ち上がる。
「なにあれ、もうフリーサイズマンでもなんでもないじゃん」
「「きったな」「バイオブロリーみたい」「それかヘドラ」「例えが古いよ」」
「………」
「来るなら来て、何もさせないから」
「………」
その言葉の意味を理解する脳がないフリーは自身のサイズをさらに大きくさせ、目標にしていたタワーすら超えるサイズにまで巨大化する。
フリーはその巨大で殴りかかる、一般人が悲鳴を上げ、拳の風圧が帽子やうちわを吹き飛ばし、周囲のビルを歪ませ、地面に亀裂を作り出す。
そんな当たればひとたまりもない拳を暫は片手で受け止める。
「…………」
「う、うそ」
「受け止めた…あれを」
「ビルすら曲がってんのに」
「がんばれェェェまほうしようしょ!!!」
「…い、いけ!!」
「そのまま倒せ」
「君ならいける!」
子供の声援に続くように次々と応援の声が上がる。
暫はそれを聞き、あまり変わらなかった表情が明るいものに変わり子供に笑顔をみせ、子供の嬉しそうな声色に応援に答えるようにフリーの拳を押し返す。
暫とフリーの押し合いが始まる。
「…………」
暫は一歩も引かず、それどころか徐々に押し返していく、そしてついには押し勝ち、フリーの拳を粉々に砕く。
拳が砕かれてもフリーは止まらず、残った左手を握りしめて全力で叩きつけるが暫はそれを左手で止めると左手に全ての力を集める。
「もう、終わりにしましょう、ファイブレインボー」
そう呟きながら片手から伝わる5つの力がフリーの体に注ぎ込まれ、その体は跡形もなく灰へと変り果てそこには1つの虹がかかる。
「おいあいつを」
しばらくの間があったの不揃いの手を掲げて叫ぶ。
「この手に虹色の勝利を!!」
「「「うおおおおお!!」」」
その叫びと共に拍手と歓声があがり暫は笑顔で観客に手を振るが、久しぶりの変身とクラウンの力からかかなりの疲労感を感じ意識を失いかけるがなんとか意識を保つ。
「……ま、まずい」
このままだと変身が保てない、ここで変身が解除させるのは流石に恥ずかしい、そう思った暫は舞台に急いで向かう。
「「よ、よかった」「なんとかなったね」「うん本当に…」「ん?なんでこっち来てる」「まて…何か怖いんだけど」」
戦いを見るために舞台裏から舞台に出てきた顎門に勢いよく飛びつき、舞台を破壊しながら観客には見えない所に2人は消える。
「だ、大丈夫!?」
「「いててお前なぁ…」「ちょっと!!何か言ってよ!!」「大丈夫怪我ない?」」
「……」
暫は顎門に抱きつきながら落ちかけていた意識を安心からか手放し、そこで魔法が解ける。
「「もう」「いい顔して眠りやがって」「これって百合?それとも普通になるの」「両方じゃない」」
「ナナナナ!!」
開いた穴からメフィスは顔を真っ赤にさせながらスマホを取り出し連写する。
そんな中顎門は安心しきって眠っている暫を右腕で抱きしめ、余った左手で人差し指を伸ばし口元に近づけ、にっこり笑う。
さて思い切っての2話投稿の作者です、クリフォト関係の話はずっと書きたかったからか凄い話を書く手が止まらないんですよね、楽しくて仕方ない。
今回は顎門君に関しての話をします、彩芽さんの息子的な感じの人で複数の人格を所持している人です、なろうでは主人公以外の男と女が絡むのはあまり好かれない傾向にあると言う話を聞きましたので、少しこの2人の関係を話します。
本編でも言ってるように、人格の半分が男性でもう半分が女性です、あまり描写していませんが顎門君はどちらにも見えるような顔つきです、イメージだと宝塚の人みたいな感じですね。
つまり、これは男女の関係ではなく女性同士の百合のような関係でもあるんです、主人公以外の男女絡みが苦手なそこの貴方、これは百合ですので安心してみてください。
まあ、こんな冗談を挟みましたがこの2人にそう言った描写が多いのは、成人を迎えたばかりの2人でありながら、愛を知らない2人だからです。
暫はマインドレスのレイプにより愛を知らず、顎門は母親からの愛もなく人格面で嫌われることが多い、肉体的にも精神的にも傷だらけの2人だからこそ気が合い安心できる。
良いカップリングだと思いこう言う描写を増やしています。
暫さんが顎門に安心感を抱いているのは、顎門も体には傷跡がありそれを隠すために自分と同じように服で体を隠していて、料理が物凄く美味しくて話してて飽きないからです。