第156話 動かない心臓
【貴様らに出来ることは償うことだけだ、その罪を自らの命で】
映し出された2人は鏡のふちを掴むと一歩踏み出し鏡から現実世界へと現れた。
2人と瓜二つの人型の何かと凪達は見つめ合う、見た目も身長もどこからどうみても2人にしか見えない、まるで鏡を見ているように全く同じ。
幻か夢を見ているのかと疑う凪達に鏡から出て来た2人は攻撃を仕掛ける。
「うわあ!!」
「くっ」
鏡から現れたマジカルはその剣を振るい切りかかるが凪はその攻撃を剣で防ぐ、しかし剣の力を使いマジカルは分身しその分身が凪の顔面を殴り凪を吹き飛ばすと、本物のマジカルが斬撃を放ち凪を壁に激突させる。
「お姉さん!!」
「うっ…何が何だか」
穂乃花は目の前にいる自分自身に驚くことしかできずファンの回し蹴りをまともに頭にくらいゴミだらけの地面を転がる。
「いった!! よ よくもやってくれたな…って…」
ファンはクラウンの中にあるマジカルシグマの能力を使用しゴミの中にある金属を操り穂乃花に向けて投げ飛ばす。
「やば」
咄嗟のことで頭の回転が追いつかず目を瞑りその攻撃をまともにくらいそうになるが、真琴が壁を生成して攻撃を防ぐ。
真琴達は凪達を助けようと歩こうとしたが、真琴と太一の前にクリフォトが立ち塞がり、2人は完全に分断され合流不可能な状況になってしまった。
「2人とも!!」
「前を見ろ来るぞ」
【さあ裁きの時だ】
クリフォトはそう告げると鏡からゴッドウォーズを引っ張り出し、真琴に向かって走り出す。
「ゴッドウォーズを複製した」
[そんな馬鹿なあれは奇跡の塊で神々の力を持つ剣だぞ、そんな簡単に複製できるわけがない」
「だったらあれは何なんだい、もう!!」
走りながら放たれる斬撃を壁を生成して防ぎ、少し離れた位置に居た太一がスーペリアから光線を放ち、それと同時にグラウトロスが火球を放つ。
〔インフェルノトロス!!〕
しかしクリフォトは一振りで攻撃をはじき返す。
〔こいつ かなり強いぞ〕
「不完全体で僕達の攻撃をはじき返した」
クリフォトが急接近して振り下ろした剣を真琴は真上に壁を生成して防ぎ、真琴とクリフォトは近距離で睨み合う。
「叔母さん!!」
「どうして、なんで美穂をそこまで苦しめてまでこんな事をするの」
助けようと近づこうとした太一に右手を向け止まれと指示する。
「学生生活をめちゃくちゃにして、精神病院に入院させてそこで出来た恋人を殺して、復讐者として友達を殺させようとして…ボロ雑巾みたいに使い尽くしたのに、さらに苦しめるの」
【今頃被害者を妄想するのか、何もかもが遅いというのに】
「遅い?」
【お前が早く動けばこの女はどうにでもなったんじゃないか、確かに恋人を殺しただがこの女が狂気に走る1番の原因はそこじゃない、友達だと思ってた奴が裏切ったからだ】
「…それは」
【人生を狂うキッカケとなった魔術と近い場所に居ておいて長年隠していた、貴様に至ってガンで死にかけだと言うのに墓場まで持って行こうとした、面白いなそれで友達か】
「だ、黙りなさい、美穂が貴方に何をしたの、どうして美穂にそこまで集中するの」
【自らの罪から逃げるか、まぁいいだろうその問い答えてやろう、この女が我の心臓だからだ】
「…は?」
「心臓…何を言ってるの」
〔何言ってるんだこんな時に〕
【冗談とか比喩とかじゃない、我の体がバラバラにされた際、心臓はある人間の能力に封印され一体化した、それがこの女の持つ能力【絆の重ね】だ、長い年月が流れ形は変わりはしたが心臓である事には変わらない】
「だからって、バラバラにされた時の復讐をするの、自業自得でそうなったのに」
【嘆かわしいな、貴様らの祖先は自身の罪を語り継がなかったようだな、このゴミが我が1人で用意したとでも思うか】
「いったい何を言って」
【我がこの次元に来たのは征服の為だと思うか、我のこの怒りが不当なものだと叫ぶのか】
〔おい〕
壁を破壊して真琴を切ろうとしているクリフォトの隙だらけの胴体にトロスのロケットパンチが炸裂し、クリフォトは剣を落としながら吹き飛びゴミに激突する。
〔大丈夫か〕
「え、ええ大丈夫」
【しようしよう喋りすぎたか】
クリフォトは自分の体についたゴミを掃いながらながら立ち上がる。
「まだ立つのか」
〔そうだってんならいくらでも相手になるぜ〕
傷一つなく余裕のクリフォトに真正面からやり合う気の太一とトロスとは正反対に真琴は現状を呟く。
「いや、奴は倒せない」
「何を言ってるんだ叔母さん、ここで諦めるの」
「諦めるわけじゃない、けど…あいつは今までの敵とはわけが違うし、殺そうとすれば美穂まで死ぬ」
〔くっ 人質なんて卑怯な奴だ〕
「だけど・・昔の人類は奴を倒して封印したと言うなら、その方法を使うしかない」
「それって・・」
「彩芽に会いに行く、彩芽なら美穂を引き剥がして封印できるかもしれない、きっと奴が魔術書を狙ったのもその方法を使わせないためだ」
「け、けどどうするの、その人が来るまで耐えれるの」
「・・・問題はそこだ」
真琴が行ってこの場を太一に任せても、戦力の半分を会場に置いてきた太一で抑えられるか、少なくと真琴がいなければかなり危険なのは間違いない。
だけど勝つには任せるしかない、とそんなことを考えていると ズシン ズシン と足音のような地響きが響き巨大な何かがこっちに向かってきていた。
「なんだこの音」
「この音僕知ってるよ」
「え?」
「ヘンリーさんだ」
【ん?】
ゴミを払い終わったクリフォトの元に30mの野球ボールが飛んでくるがクリフォトは片手で受け止め消し炭にする。
ズドンズドンと大きな音を鳴らしながら隣りのヒーローエリア会場から赤と銀色の特殊なスーツを身にまとうヒーロー、フリーサイズマンと修道女のような格好を見に包むシスタームーンが駆け付けた。
「・・・ねえ一体どんな状況でこのゴミはなに・・・」
「あ!!佐野さん」
「・・・本名で呼ぶな・・・」
「お困りのようだね」
【・・・いずれ来る事は考えていたが、想像を絶する早さだ、さすがは正義のヒーローだ】
皆さん驚きましたか、今回は久しぶりの2話投稿な作者です、前回の後書きが適当だったのは2話書いてたせいでどちゃくそ眠かったからです、今はぐっすり寝た後なのでお目目ぱっちりです。
さて、今回は少し難解になりつつある今回の話をわかりやすく(作者的)にまとめて終わりますね、かなり長いので最後に頑張って3行でまとめますので、見るのに疲れた方は最後の方を見てください。
まず今回のクリフォトは現実世界と鏡の世界の境目に存在する次元に住む魔王です、魔力が存在していた遥か昔にその狭間の次元から現実世界に現れましたが、人類は魔力を使いクリフォトをバラバラにして狭間の世界に封印しました。
今回美穂さんが心臓だと言う話が出ましたが、バラバラにした体の一部である心臓を美穂の祖先が自身の能力と一体化させ封印、それにより特殊で異質な能力が生まれ、その能力は先祖代々に受け継がれました。
そして20年前にクリフォトは自身の心臓を取り込む事で復活する事を考え、その心臓である美穂に転生術を使いました。
転生術は別の世界の人間の魂をこの世界に引き摺り込み、別の肉体に入れると言う魔術で生きている人間にしようした場合は元々存在していた魂は肉体から離れ、その離れた所を狙ってクリフォトは美穂の魂と一体化しました。
ただ、問題がありましてあくまでクリフォトの心臓は美穂の魂ではなく能力なんですよね、クリフォトは魂と一緒に能力も獲得できると考えて使いましたがそんなことはなかったんですよ。
理由としては太一くんが仲間になる会で少し明かされましたが能力には意思を持つ能力があり、クリフォトが復活するために自分が取り込まれると考えた能力君が美穂の魂から剥がれて転生者の魂に入り込んだことでクリフォトは心臓を得ることができなかったわけです。
ここら辺が私の過去作の背景で、クリフォトの復活は失敗し美穂の魂と一体化し新たな肉体を獲得し、美穂の精神を歪めて操り人形にした状態でその肉体の支配権を美穂に与え自身はしばらく傍観していました。
ただ、肉体の支配権を渡した美穂が使えなかったのか自身が動き心臓を取り返そうとしましたが返り討ちに合い、美穂との一体化が解除され、転生者は美穂に肉体を返して元の世界に戻りました。
で…負けたクリフォトは諦めることはなく18年前にエレベーター内で怪物を差し出しその中に居た一般人を殺害、さらに怪物が殺したと主張する美穂を精神病だと判断した警官により精神病院に入院し、そこでも色んな事件を起こし美穂を我が物にしようとしましたが、病院で出来た恋人とその危機を乗り越え。
その後クリフォトは恋人を殺害、その後に親友だと思っていた彩芽が魔術研修者として働いている事を告げさらに真琴がそれをずっと隠していることも告げ、スーツなどの武器を与え破壊活動をさせました。
このままなら自信が動かなくても魔力関連物を全部壊すなと思った矢先、凪に説得され今の行動を躊躇し、もう使えない奴だと判断し肉体も魂も能力も含めて全てを取り込み復活し今に至ります。
簡単に言えば遥か昔に人類に敗北し体をバラバラにされ、その内の心臓が時が流れて美穂の能力となり、その能力を求めて一体化すると能力が手に入らずそのまま敗北。
懲りずに心臓を求めて美穂を追い詰め、心臓を奪わなくても自分の目的を実行してくれるな、と判断し心臓を奪わなかったけど凪に説得され目的を果たすのをやめ、それを許さなかったクリフォトは美穂を取り込み復活し魔法少女達と戦います。
設定を考えてる時は楽しかったですが、こうやってみると複雑ですね、まあとにかく今は心臓を手にしたクリフォトが暴れているとだけ思ってください。