第133話 放たれる弾丸
無数の傷跡と変色した肌に驚きを隠せない凪は緊急事態であるにも関わらず呆然とし息を止める。
「な、なんですかこれ」
空気すら凍りつきそうなほどな静寂と気まずさが2人の周囲を包み込む、その気まずさに勝てなかった彩芽は少し呼吸してから凪から目を逸らしながら口を開く。
「…………か、蚊に刺され…」
「嘘つけ!!」
「たまたま…その…デカい蚊が…」
隠そうとする彩芽にイラついたのか背中の傷口を軽く触る。
「ギィ!!」
「ふざけないでください」
「どうでもいいでしょ…早くしなさい」
「そ、そんなこと言われても、こんな傷…」
「昔の虐待の傷よ……それだけ」
「虐待って…なにが……」
凪の疑問に答える気がない彩芽は雑に地面に置かれた服のポケットにあるものを全て出した、ポケットの中にあった様々な道具が地面に落下し、その中にあるピンセットやナイフなどが入っているケースを握ると凪に押し付ける。
「話すつもりはない……し…話すほどの…仲でもない……知りたいなら…まず取りなさい」
「わ、わかりました」
凪はどこか納得できないような表情を浮かべながらケースを受け取り、落ち着こうと呼吸したが自分の後ろで分身の断末魔のような声が聞こえ落ち着くにも落ち着かない。
「もう、どうにでもなれ」
そう言いながら傷口にピンセットを突っ込む。
「あ゛あ゛っ!い"!!」
彩芽の声に反応している場合じゃない事を理解している凪は心の中でごめんなさいと謝罪しながらピンセットを奥に突っ込んでいく。
上手な弾丸の抜き方なんて知らない凪はナイフや指で傷口を無理矢理広げ、そんな事をするたびに彩芽は声を漏らすが凪は気にせずピンセットを奥に突っ込むとカチッとと言う音が聞こえた。
「あった」
凪は左手でジタバタと暴れる彩芽の体が動かないように押さえつけ、弾丸をピンセットで掴んでゆっくりと持ち上げる。
「グッ……ググ……」
「いけるいけるよ…落ち着け落ち着け」
震える手でピンセットを強く握りながら弾丸をゆっくりと持ち上げていると後方で戦っているはずの分身の声が突然聞こえなくなり、ゆっくりと後ろを振り返ると美穂が銃口を向けていた。
「美穂…」
「…ッツ」
「最初から使っておけばよかった」
そう言いながら拳銃にミストミラの弾丸をこめ、引き金を引こうとする、彩芽を押さえ込むために剣から手を離していた凪は急いで剣を握ろうとするが待ち合わないことは凪自身わかっていた。
それでも剣に手を伸ばす、それよりも前に美穂が引き金を引いた、今まで的確に頭や心臓の位置を狙えていた美穂が外すわけがなく弾丸は確実に凪に命中することは見えていた。
しかし放たれた弾丸はどこからか伸びてきた鎖によって弾かれた。
「あれは…真琴さん」
「っち」
「はあ、はあ、はあ」
血だらけでボロボロで立っているのがおかしいと思えるほど傷だらけの真琴が鎖を伸ばし弾丸を弾いていた。
「やらせない、あなたには」
「そこまで依頼が大切か、いくら積まれたらそこまで…」
「金の話だと…思ってるの…」
凪は今のうちに弾丸を取り除こうとする。
「あなたに…殺人はさせない」
「今頃じゃないか、そもそも私が魔術にどれだけ人生を狂わされたか」
「知ってる、知ってるよ…だけど今の…貴方はその正当性を武器に間違った道を正しいと思い込んでる、だからそんな事はやめさせる」
「何が言いたいんだ、探偵ごっこをしてるだけのクソガキが法の番人を気取るのか、法が私を守ってくれたことが一度でもあったか」
「法なんて関係ない、今の貴方は貴方じゃない」
「私なんて知らないでしょ、貴方の美穂は私じゃない、そもそもお前は私のなんなんだ」
「友達でしょ」
「後…もう少し…もう少しで…よし抜けた、真琴さ…」
バン!!
彩芽の弾丸を取り除いた凪は急いで剣を握って立ち上がたその瞬間銃声が駐車場中に響き渡った。
「あ……」
「お前なんて友達でもなんでもない、ただの赤の他人だ」
拳銃から放たれた弾丸は真琴の胸を貫く、真琴は目を見開き血が吹き出す胸を押さえながら倒れ込む。
「そ、そんな…」
「……これは返してもらおうか、そもそも私の道具だ」
美穂は真琴に近づくと強く握りしめている定めの鎖を奪い取る。
「……ぅ……」
「心臓は避けたわよ、すぐには死なない、生きたかったらこれ以上私の邪魔をするな」
「どうして」
「………なにが」
「どうしてこんなことができるんですか」
凪は彩芽の体を能力で浮かせると渡り廊下に彩芽を置きその出入り口を塞ぐと剣を強く握りしめながら美穂を睨みつける。
「なにその顔は」
「友達なんですよね」
「友達?本当の友達なんて精神病院に行ってる間に消えたよ」
「真琴さんは止めようとした」
「止まる理由があるか、私の人生は魔術に壊された、次に誰かが壊される前に手を打つ」
「その正当性に取り憑かれていませんか」
「それがどうした、私はこのまま突き進むだけだ」
「だからって人を殺すんですか」
「なんだその顔は、あの女も私と戦う時点でこうなる事はわかっていたし覚悟もしていた、お前も殺されたくないなら帰れ、それとも私に殺されたいのか貴様如きにこの私が倒せるとでも」
「……あなたは…誰ですか」
「私は城戸美穂だ」
どうもマーベルライバルズで海外の人が何か書き込んできたので翻訳したら差別的な発言で翻訳できませんと出て笑った作者です、正確に言うと設定を変えてくださいなんですけどね。
さてライバルの呪縛から抜け出せずにいますが流石に前回みたいにライバルズの話を永遠と書くのもアレなので没にした話を今回は書こうと思います。
完全に没にした話というのは凪さんの父親の話ですね、父親は交通事故で死亡した事が明かされていますが実は没にした話では主人公の父親は敵として登場する予定でした。
アイアンマンみたいな感じで全身装甲で正体不明の敵として登場し、穂乃果との戦闘で頭の装甲が剥がれ穂乃果に正体がバレ、穂乃果は凪にその事を話すか話ないかと葛藤する話が描かれる予定でした。
その後の展開で穂乃果が正体を知っていて黙っていた事をきっかけに2人の仲が悪くなり、凪はチームを抜けて1人で行動することを決断したけど上手くいかずある事件で大怪我をあって入院さらに変身アイテムも奪われしかも世間に正体がバレるという展開になる予定でした。
没にした理由としては作品を書いていったら予定してたよりキャラクターが増えてしまい、それに付随して描く物語が増えてしまったこと。
父親との話を描いたらラスボスのマインドレスの影がより薄くなること、そもそもマインドレスはバチバチに戦闘するキャラではなく裏で証拠を残さずに暗躍するキャラなのでどうしても影が薄くなってしまう、そうなのに父親の話を描いたら存在感が全くなくなってしまう。
マインドレスを没にする案も考えたんですが、父親が敵かそれとも先輩魔法少女を全員倒し、証拠も残さず好き勝手暴れる敵、どっちをメインにした方が話が広がりやすく、話が綺麗にまとめるのかと考えたらマインドレスになりました。
そりゃ父親を倒しておしまいか父親と仲良く暮らすとかしても微妙でモヤモヤする展開になりますからね、そもそも父親の死と凪さんの能力が封印されていた話はこの作品ではなく別の作品で描く予定で、父親の話を出すとなると別の作品で描く予定だった話に触れるどころかネタバレをしないといけない、そうなると出せませんよね。
とこういう理由で父親の登場は無しになりました、ただ…一応死んだ原因である交通事故が何者かによって仕組まれたと言う伏線があるのでその伏線の回収で出るかもしれませんね、話は没にしましたが父親が生きていると言う設定は残っています。
今のところ出すつもりはありませんが設定は残っているので出そうと思えば出せます、ただ出すとしてもマインドレスを倒した後になりますかね、没にした理由が理由なので。