第93話 光を放つ体
〜〜〜〜1年前〜〜〜〜
「うわぁ…すげぇ、おい見ろよ大和」
「はいはい見てるっての、まったく何回見てるんだよこれ、そろそろ別のやつ見せろよ」
「あ、やめてよ」
大和はタブレットに映し出された魔法少女の映像をうんざりしながら太一からタブレットを奪い操作するとシスタームーンのチャンネルに移動し【シスタームーンのお目覚め一発】を開く。
「もう酷いじゃないか」
「酷いのはお前だろ、遊びに誘っておいて同じ動画を5回も見せてよ」
「ご、ごめん」
「そんなに好きなのかよ魔法少女、別に否定する気はないけどフリーサイズマンとかシンギュラリティとか、女ヒーローならこのシスタームーンとかあるだろなんで魔法少女なんだ?それにもう活動してないのに」
「えーっと‥幼稚園生の時にデパートで迷子になった時にピンクの人が助けてくれたんだ」
「へー…なんか珍しいな、ヒーローって言ったら忙しいイメージなのに」
「僕も思ったよ、だから聞いたんだなんで助けてくれたのって、そうしたら「この世界のヒーロー達は人助けや悪者退治で忙しい、けど本当はこう言うことをするべきなんだと思うんだ
私達は忙しいヒーローの変わりをしたい、本来やるべきこと、大切なことを私達がやるの、ヒーロー達が平和をもたらすなら私達は皆んなに笑顔をもたらす」って言ってたんだ」
「皆んなに笑顔ね…」
「僕もなりたいんだ笑顔をもたらす魔法使いに」
〜〜〜現在〜〜〜
「コレがお前のしたいことかよ太一」
太一が手首に巻いていたバンドが砕け、その残骸がビーチに散乱する。
「知ってたの」
「逆に何で知らないと思ってたんだよ、バレバレだろ」
「う…それは…」
「それより目を覚ませよ太一、これがお前のしたいことかよ」
「な、何を言ってるだよ、僕の目は覚めてる、今すぐに奴の息を止める…」
「お、おい」
そう言う太一の目には優しさのようなものは感じられず怒りと殺意に満ちていた、とても小2の子供がしていい目ではない。
満面の笑みを浮かべてはいるがその笑みは悪魔のような恐怖を感じさせる笑みであり、そんな顔で龍がボコボコに殴るのを眺め高らかに笑う。
「やめろよ太一」
「なんで、やめる必要がある、コレは正しいことだろ」
「これが正しいことかよお前がなりたかったのはアレかよ」
「アレ?」
「よく見ろよ、グラウストの姿を…よく見ろよ今のこれを誰が笑ってるんだ、お前言ってたよな笑顔をもたらす魔法使いになりたいってコレがそれかよ!!」
大和は太一の頭を掴むとビーチパラソルに隠れて震えている子供達が居る方に頭を向けさせる。
「…な……」
「誰が笑ってる、あの子達は何に怯えてるんだよ」
太一は視線を龍に戻す、もはやその龍にグラウストの面影はない、体のほとんどが骨で肉はほとんど存在しない、残った皮膚はただれビーチに肉や血が毎秒落ちる、そんなまるでゾンビのような姿をした龍がビームを襲っていた。
その光景はとても正しいことをしているようには見えない、この光景が人々に与える物は笑顔なんてものではなく、恐怖だと私は思えてしまう。
「そ、そんな…グラウスト」
太一の目から怒りや殺意が消え、自然と涙が流れ、地面に膝をつける。
「太一…本当にコレがなりたかった物か、本当にやりたかったことかよ」
「僕が…僕が望んだから?僕があいつを殺したいって本気で思ったから、君をそんな姿にさせたのか」
〔ガァァアアアア!!!〕
龍は苦しそうな叫び声を上げながら全身から血を流す。
「グラウスト…」
「この…図に乗るな!!」
殴られ地面にめり込んでいたビームが殴られている間に貯めたエネルギーを集めた拳で龍を思いっきり殴り吹き飛ばす。
〔グガァァァァアアアア!!!〕
「グラウスト!!」
「おい、太一」
殴り飛ばされた龍はビーチに倒れ動く事はなかった、死んだ魚のような目をしておりその目も動く事はなかった、太一はそんな龍に近づき自分の何倍にもなる顔に触れる。
〔……………〕
触れた肌は油をひいたフライパンのように熱かったがその熱さも徐々に冷たくなっていく。
「そんな…」
蜃気楼が出る事はなく、ただ冷たい感覚が太一に伝わる。
「ごめん、僕のせいだ、僕があいつを殺したいって本気で思ったせいで君をそんな姿に…」
「はあ、はあ…知性なき強者め…くそ…油断したでござるな、ん?まだ生きていたか」
「まずい太一逃げろ!!」
傷だらけでボロボロな体のビームはゆっくり立ち上がるとボロボロの体で刀を握りしめ腕を上げ斬撃を放つ体制に入る。
しかし太一は逃げだす様子はない。
「この一撃で終わらせよう」
「太一!!」
「……僕は…僕はただ…守りたかっただけなんだ」
「終わりだ」
ビームは刀をふるい斬撃を放つ。
「ごめん…ごめん……ごめんよ友達だったのに」
太一は涙を流しその涙が頬を伝わり龍に落ちた。
〔…た…い…ち〕
「ここだよ」
龍の瞳に再び命が宿り体から蒸気が噴出し、その蒸気が蜃気楼を作り出すと龍は元のグラウストの姿に戻った。
〔たいち〕
「グラウスト」
太一は泣きながらグラウストに抱きつく。
〔くすぐったいよ〕
「ごめん、君にあんなことをさせて、もうあんな事はさせない、もう君だけを戦わせはしない、僕がそばにいる、僕も一緒に戦うよ」
〔………〕
「くらえええええ!!」
ビームが放った斬撃が地面を抉り取りながら2人に近づく。
〔……うん いこう 2人で〕
グラウストが太一を強くて抱きしめるとグラウストの尻尾が大きくなりその尻尾が斬撃を弾き返す。
「なに」
「僕はここにいるよ一緒に戦いに来たんだよ」
「こざかしいぞ」
「もう僕は後ろにいるだけじゃない」
「今度こそ消し飛ばしてくれよう」
ビームが再び斬撃を放つ構えをとり刀に力を集める。
〔いこう こんどは〕
「負けない、2人で行こう」
「ふん!!」
ビームが全開まで貯めたエネルギーをこめた斬撃を放つ、その斬撃は空の雲すら切れ空間が歪み崩壊するほどの威力、そんな威力の斬撃が2人に迫る。
「太一!!!!!」
大和の叫び声も斬撃はかき消す。
もはら無音で何も聞こえない空間で2人はある言葉を同時に呟いた。
「〔クロスエボリューション〕」
その瞬間2人の体が輝きを放ち溶け合い始めた。
どうもボロボロのグラディウスを表現するためにマーベルゾンビーズを見てたら気づいたら全巻読んでて1時間ぐらい時間が消し飛んでいた作者です。
体が凄いボロボロと言うことを表現したくてゾンビーズを見たんですが全く参考にならなかったですね。
さて長くなった話ですがよくやく終わりが見えそうですね、まあ…凪視点の話がまだあるんですけどね。そう言えばエピソード数が101を超えましたね、ここまで来たのかと思う一方、ここまで来て前半終了かと驚いています。
果たして私は完結できるのでしょうか、しかも今週は映画にデュエプレと大忙し、完結どころか投稿が止まる可能性もありますが気にせず頑張っていきます。




