第89話 本当の戦い
「どうした、こないでござるか」
侍の格好をした男が突然刀をしまい手のひらを見せながらそう言ってくる。羽虫を包丁で切るバカは居ないと言ったと思えばこの態度だ完全に舐められている。
あまり怒りと言う感情が沸きにくい太一だったが流石にその態度にはほんの少しの怒りが沸いた。
「グラウスト」
〔おう 全力で行くぜ グラウストファイア!!!!〕
グラウストは大きく口を開けてビームに狙いを定める。牙が燃え背中の毛が赤く発行し大きく息を吸って吐くと同時に口から火球を吐き出す。
その火球はビームに直撃し爆発する。
半径5mの地面が窪み大きく地面が大きく揺れる、しかし爆発の中からは傷ひとつなく無傷のビームだった。
〔なに!?〕
「言ったであろう、羽虫程度に使う武器はないと」
ビームは足元にあった石を拾うとその投げつける、ビームの手を離れた石は音速を超え突っ立っていたグラウストの体を貫いた。
〔な!?〕
「グラウスト」
〔だ 大丈夫だ またいける〕
「どうした吾輩を倒すのではないのか、さっきの天使の方がやりがいがありそうでござったぞ」
〔剣をしまったのはハッタリなんかじゃない 奴の力は本物だ〕
「わ、わかって」
今太一の頭にはいろんな選択肢が浮かんでいた。
1.ピッカラを戦闘に参加させてグラウストと合体させてエンジェストにする→しかしご老人や身体的障がい者や子供などの自力での避難が困難な人達の避難が完了しておらず、エンジェストは広範囲の攻撃を得意としておりそんな状態で使えば確実に人に被害が出ること。
2.ビームの要求通り凪を出す→しかし凪は離れた所におり、凪がいる方向はビームから逃げた人達で溢れている。
3.戦闘を避け避難誘導に専念する→そうすればビームは凪のいる方に行き、もちろんそこには無数の人で溢れかえっている。
4.皆んなが来るまでの時間稼ぎ→しかしいつ来るかは分からず負ける可能性もある。だがやるしかない。
この4つの選択肢の中から太一は最後の選択肢を選ぶ、全力の時間稼ぎ。
「グラウストは下がって、ここはお願い猫太郎」
太一は手のひらカードを作り出し、そのカードに描かれた猫太郎を呼び出す。
〔にゃ〜〕
「なんだ」
猫太郎と呼ばれる猫は茶とら模様をした猫だ、グラウストやピッカラのように完全に現実にいない生物ではなく現実にいる猫と全く同じ、尻尾の数も瞳の数も足の数も何一つ猫と同じ。
そんな猫太郎は呼び出されるやいなやニャーと泣きながらビームに近づき、足元に辿り着くと足に頭を擦り付ける。
〔にゃ〜〕
「吾輩を愚弄するか、猫でも用意すれば吾輩が撫でてバズりを狙えるとでも思っているのか、こんな猫!!」
「かかった」
ビームは足をあげて猫太郎を思いっきり蹴ろうとすると同時に太一は猫太郎を進化させる。
眩い光と共に猫太郎は進化する、体が大きく成長し30cmほどの大きさの猫が5mほどの大きさになり、その姿は猫と言うよりライオンに近く、綺麗なたてがみに鋭い目を持つ姿に変貌する。
進化した猫太郎は蹴ろうとした足を左前足で踏みつけながら右前足でビームを引っ掻く。
「コレが狙いか小癪なり」
ビームの鎧には傷はつかなかった。
「猫太郎いったん下って様子を見るんだ」
〔ガルルルル〕
猫太郎は太一の指示通り一旦下がろうとしたがそれをビームは許さなかった。ビームは目にも止まらぬ速さで猫太郎の頭を掴むとそのまま持ち上げる。
猫太郎も持ち上げられるだけでは終わらず抵抗し爪で何度も引っ掻くが鎧には傷がつく事はない、ビームはこんな格下と戦うことに対する怒りが溢れ猫太郎の頭蓋骨を粉砕し殺すとそのまま地面に叩きつけ、猫太郎の死骸を踏みつける。
「はなから期待はしなてなかったが…最終兵器を使わずこんなのを出すとは舐められたものでござる」
「お、おまえ」
猫太郎の頭を何度も踏みつけるビームに怒りを露わにするがビームは足を上げて猫太郎を思いっきり蹴り飛ばす、サッカーボールのように蹴り飛ばされた猫太郎はデカい体のまま太一に激突する。
脳が揺れるような感覚に襲われながら意識を一瞬手放し、猫太郎に押しつぶされる。
〔リュータ!!お前〕
「う…うぅ…」
意識が朦朧とし体が動かず上手く息ができない、咳き込むと口から血が出て来て全身に痛みが伝わる、太一の体はボロボロで全身の骨が折れていた、正直に言って治るとは傷で生きているのが驚きだ。
「所詮弱者か、くだらん今楽にしてやろう」
〔あいつの目本気だ…くそ〕
グラウストは猫太郎をどかすとボロボロの太一を咥えて逃げようとした、しかしビームは空中を殴って衝撃波を放ち逃げようとしたグラウストの足に命中させる。
〔なに?〕
「逃げるだとそんな選択肢選ばせるわけがないでござろう、勝負は常に生きるか死ぬか、勝負を始めた時点でどちらかが死にどちらかが生きる、敗者に価値などない敗者は死すべし」
〔来るな!!〕
グラウストは全身で太一を守りながら近づいてくるビームに火球を何度も放つ、しかしそんな火球は何の意味もない、ビームはゆっくり歩きながら衝撃波を放ちグラウストを攻撃する。
腹、顔、尻尾、至る所から血が流れもはや火球すら出せなかった、ビームはグラウストに触れれる位置まで移動すると右腕を高く上げ手刀の構えをとる。
「何者であれ勝負をするなら命をかける、命が落ちぬ戦いなどなんの価値もない、あるのは弱者の傷の舐め合いだけだ、吾輩はそんな弱者ではない、このまま死ね」
ビームが腕を下ろしたその瞬間、豪速球のビーチボールがビームの体に激突し後ずさる。
「なんだ、これは」
ビームは飛んできたビーチボールを握りしめて破裂させるとボールが飛んできた方向を睨む、そこにはまだ逃げずに太一の戦いを見ていた大和達がいた。
「俺の友達に手を出すな、ブリキやろう」
少し遅れました作者です、すみません昨日描いてる途中で寝落ちして朝に書いてます、もう書いてる時間がないのでここで終わりますでは。