01 家庭の味
初めて投稿しました。
第一章では、人物との対話をあまり描かないことにしています。
主人公の私がどんな人でどんなことを考えているのかを描きました。
多くの人物との触れ合いで、より深みが出てくるようにしています。もうしばらくは"私"にお付き合いください。
どうすれば面白くなるのかをご指導頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
わたしはダメなやつなんだろうか。
あんなに近くにいたのに、あんなに愛があったのに。恋だとでも言いたいのだろうか。温もりのある手は残酷である。
わたしは帰路に着いた。ただ一人、歩いていた。落ち葉に紅葉。茶に塗られた世界。どこにも魅せる色はない。そっとただ塗られていた。
「あら、早かったのね。夕飯の支度ができたわよ」
この言葉も今は届かない。
愛のこもったご飯など、喉を通るわけがない。
テレビをつけた。今、人気の俳優がでていた。
「愛想がいいだけなんだよな」愚痴をこぼしながら、すぐにテレビを消した。日常的な行動が、非日常的に感じてくる。
夕飯はカレーライスだった、木曜日なのに。普段は考えもしなかった思考が脳内を駆け巡る。ぐるぐるとのたうち回っている。
一口、二口と手が進んでいく。じゃがいも、人参、玉ねぎ、そして鶏肉が入っていた。ゴロゴロとした大きな野菜とお肉、何て贅沢なんだろう。家庭の味である。
食卓を囲むという行為が難しく感じていた。しかし、家族は素晴らしい。
一度や二度、負けたとしても頑張ろうと思った。体が熱っていて、熱が出始めたことを、わたしはまだ知らなかった。