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ファンタジー系のお話し(High・Low・恋愛)

男に生まれた俺が巫女!? 女じゃないのに巫女なんておかしいと婚約破棄されたが俺は巫女だなんて言ってない 

※こういうテンプレ? のようなお話は初挑戦です※


 

「アルベルト残念だけれど、あなたとの婚約関係も今日で終わりよ。婚約は破棄させてもらうわね」

「は?」


 べナルド王国で唯一国が認めた学院であるべナルド国立高等学院。その大事な卒業式も何事もなく幕を折ろうそうとしていたその時、突如壇上にいきなり上がって行った王太子のベルガー様と、俺の婚約者だったレイヒル侯爵令嬢ビクトリアが、二人そろって俺の事を睨みつけながらそんなことをのたまう。


「聞こえなかったの?? 貴方との婚約は昨日までで終わりよ」

「なぁビクトリア本気で言ってるのか?」


 式も最終盤になっていた事で、泣いている学院の生徒や先生達、そしてもちろん俺達卒業生を見守る保護者達が、何が起きたのか分からないまでも、壇上で二人そろって大声を上げるところを目の当たりにして、しんと静まり返っていた。


そんな中で響き渡るビクトリアの声。


「本気も本気よ!! 今までは我慢していたのよ!! 男のくせに神の巫女に選ばれたって……でもあなた何もできないじゃない!! だったら私だけを好きでいてくれるベルガー様と婚約する方がいいに決まってるわ!!」

「そうだ!! アルベルト!! 貴様はありもしないジョブをでっちあげて今まで好き放題してきたそうじゃないか!! 全てビクトリアから聞いているぞ!!」


 ビクトリアの隣で俺の事を指差すベルガー王子。


「はぁ~……」


 俺達が住んでいる国では、学院の試験を受けることが出来る15歳の時、教会において『適正ジョブ鑑定の儀』というモノが行われる。

 それは貴族や平民などに関わらず、国民なら誰もがウケることを義務頭蹴られているのだけど、勿論貴族の家系ではその『適正ジョブ』というモノを重視する家柄も多い。


俺の実家であるテスタ辺境伯家は、そんな貴族の風潮とはちょっとかけ離れていて、どんなジョブに付こうとその人物が付きたいものに付くことを良しとしている。


――まぁ実際にジョブの鑑定の儀の日は大騒ぎする周囲の人達と、『だから何?』という感じで落ち着いている両親との対応の違いで笑えたけどな。

 

「……何を聞いているのか存じませんが、俺は……いえ、私は何もしていませんよ?」

「嘘を言うな!!」

「嘘つき!!」


 俺が無実だと訴えても、二人は全く聞く耳を持とうとしていない。


「それでビクトリア。婚約破棄してベルガー様と一緒になるというのはもう決まっている事なのか?」

 呆れたようにビクトリアに質問すると、壇上の二人はにやぁっと俺の方を見ながら笑う。



「そうだ!! ここで皆さんが揃っているところで発表しようと思っていた!! この私王太子であるベルガーとビクトリア嬢は、この時を持って正式にお婚約者同士となる事をここに宣言する!!」



「な!?」

「何を勝手な!?」

「きゃぁー!!」

「うわぁ……」

「これは……アルが可愛そう……」


 壇上でベルガー様が大きく宣言を告げると、それまで静かだった会場の中は一斉に大きなどよめきと共に、いたるところから声が上がる。中には俺を擁護するような声もあるし、何よりいきなりの婚約破棄・婚約者発表で戸惑っている声が多い。



「なぁ……」

「なんだ。釈明が有るのなら聞こうか」

「そうね。今まで嘘をついて()()を騙してきたんですもの。その釈明位は聞いておこうかしら」

 にやにやとしながら俺に向けてそんな事を告げる二人。


「浮気か?」

「は?」

「え?」

 俺の口から出た言葉に驚く二人。もっともそんな事を言われるとは思ってもみなかったのだろうけど。


「昨日までは俺の婚約者として公表されていたのにもかかわらず、今日になって突然婚約破棄に加えて既に新たな婚約者が出来るってことは……浮気してたんだろ?」

「貴様!!」

「ち、ちが――」

 怒りだすベルガー様とうろたえ始めるビクトリア。


「まぁ、あなた方二人が違うと言っても、ここにいる国王陛下やその他重臣の皆さん。そして集ってくださった保護者の方々の中にいる俺たちの両親。皆が「はいそうですか」とでも言うと思ってる?」

「そんな事は関係ない!! 私がこの婚約を望んだのだ!! そしてそれをビクトリアが受け入れた。それだけの事!! そこに他の者の意思は関係ない!!」

「そ、そうよ!! これは私とベルガー様の意思によって決めた事だもの!!」


「はぁ~。本当にそう思ってるのか? 周りを見てみろよ」

「なに?」

「え?」


 俺がそういうと、二人が開場の中をぐるりと見渡す。二人と一緒俺も改めて周りを見渡すが、そこには憤怒の表情をした国王陛下や頭を抱える宰相様の姿、そして大きく目を見開いて驚くビクトリアの両親と、いつでも切りかかりそうになっている俺の父親とそれを止める母が見える。

 そして会場中は、何とも言えない表情をして壇上の二人を見つめる生徒の姿が有った。

 


――まぁこうなるよね。俺的にはついにこの日がやってきたのか!! という感じだけど。

 実の事を言うと、俺はこの二人が()()()()()()であることを、ここ2年の間知っていた。知っていたけどあえていう事をしなかった。


 俺のジョブである神の巫女なのだが、正式には『神のみこ』なのだ。

 初めて見たときは何のことか分からなかったけど、その後教会関係者から王家に話が上がり、慌てて国王陛下に呼ばれてそのジョブの説明を受けた。

 国王陛下の話によると、『神に選ばれし者の証』らしく、これまでに歴史上でもそのジョブを授かったものは僅かだという。


 その力は絶大で、神の知識や天変地異の予兆など、色々な事を神からお告げという形で言葉を賜り、それを王家として教授していく事で繁栄をもたらしてきたという。


――ただし、今までは全員が女の人だったらしいけどね。


 そういう事もあって、国外に出て行かれては国の今後に影響を及ぼすという事で、王家ともつながりのあり、血縁関係もあるビクトリアの生家侯爵家との婚姻が国王陛下自らの判断によって成された。


 勿論、その事は侯爵家の当主であるビクトリアの両親も知っているし、何より喜んでいたのだ。


 俺の仕事は外向きには学院に毎日通っているただの学生という事になっているけど、実は毎日王城に通って色々と内政の事をしてきている。


 そのためにビクトリアとの時間が作れなくなってしまったのだけど、そういう隙間をついて王太子が近づいて行ったのだろう。



「俺とビクトリアの婚約は『国』が認めたものだぞ? それを王太子だからって勝手に破棄していいと思うのですかね? それに……浮気までして……」

 俺はまたため息交じりに二人に対して声を掛けた。


「な、何を言うか!! ジョブが巫女だからと言って何もしてこなかった無能の分際で!! 貴様にビクトリアは似合わんのだ!! さっさとこの国から出て行け!! 追放だ!!」

「そうよ!! 無能はいらないのよ!! 追放よ!!」

 二人の大きな声が開場へと響きわたる。



「ま、待って――」



「分かりました」



 国王陛下が何かを言おうとした時、俺はその言葉にかぶせるように了承の意を伝えた。



「な!? ちょっと待ってくれアルベルト!!」

「そ、そうです!! 少し待たれよアルベルト殿!!」

 俺の言葉を聞いて慌てる国王陛下とその重臣たち。



「いえ、残念ですけど待ちません。そこの二人も俺が国外追放になることを望んでいるようですし、何よりこれより先の国を支えようとする者がこのような二人ならば、俺はもうこの国に未練はありません」


「ま、待ってくれ!! 頼む!! あのバカ息子は処分する!!」

「な、父上何を――」

「黙れ!! この大バカ者どもが!!」

 

 国王陛下の言葉にベルガー様が驚いて反論しようとするが、それを今まで聞いたことの無いような怒声が制する。




「行きましょうアルベルト」

「あ、母さん……」

 ベルガー様と国王陛下が言い争っている間に、いつの間にか俺の横まで来てい母さん。そっと優しく肩を抱いてくれた。


「こんな国に未練はない。いくぞ」

「父さんも……」

 俺達の前に立ってスッと歩き始める父さん。


 辺境伯領を護っている父さんは、武技にかけては国内でも知られているので、父さんが歩いていく先には人がスッと避けて道が出来る。


 俺は母さんに抱きかかえられるようにしながら、卒業式という大きなイベントの会場から一足先に退場するために歩く。


 そして出入り口のところまで来て、俺は会場へと振りむいた。



「あぁ、言い忘れてたけど……」

「あ、アルベルトちょっと待ってくれ!!」


 会場の中へ聞こえるように大きな声を出すと、俺の元へ駆けだしてくる国王陛下。

 そんな彼をスルーしながらも、俺は話を続ける。




「俺、巫女じゃなくて()()だからね?」


「は?」

「え?」

「な、なに? 巫女じゃなくて……」

「御子?」


 会場の中では俺の言葉に反応した人たちが、一斉に騒ぎ出した。






 それだけを言い残し、今俺は度は本当にその場を後にした。 









 その後――。


 俺達家族を乗せた馬車は隣の国を通り抜け、今まで住んでいた国と仲の良かった小さな国へとたどり着いた。そこで俺達家族は暖かく迎え入れられ、順調に生活基盤を整えていく。

 所謂亡命というやつなのだけど、他の国の貴族が家族そろってくるのは戦時以外では珍しい。


 しかも今回は何と俺達家族の他にも、仕えてくれていた騎士や領兵の皆さんと、その家族。そして領民の方までもがこぞって俺たちについて来てくれた。


 俺のジョブを初めて聞いた新たな国王陛下は、すぐに俺たちを丁重にもてなしてくれたと共に王都に近い土地を新たな領地として下賜してくださり、更には伯爵位まで叙爵された。


 そうなると俺も国の為にと一層働くことになり、今では元いた国よりも豊かな国になりつつある。


 ベルナト王国はというと、あの時の騒動が引き金になり、まず王家が信用を失墜。そして俺がいなくなった事により『異変』が察知できなくなったことで、天変地異が来て作物などが育たなくなり、内乱が起きて国中が乱れ荒れ放題になっているらしい。

国に出入りする商人たちから噂として伝わってきた。



「良かったの?」

「うん?」

 自分に与えられた王城にある執務室で、隣りには同じように机に座って書類整理をする女の子が声を掛けてくる。


 新たな国に仕える事で、新たに俺の婚約者となったアスカ王女だ。俺よりも歳下なのだけど、俺よりもよっぽど大人な考え方が出来る、とても頭のいい子で、更に性格も良い。


「アルベルトの力で国ごと潰す事も――」

「いや。俺にとってこれでいいんだ」

「そう?」

「今が幸せだからそれでいい」

「そっか……神様に感謝しなきゃね!!」

「そうだね。なんていったって俺は神の子なんだから……」



 後年になり、この当時の事が書かれた一つの壮大な物語がある。

『神の巫女ではなく神の御子』だった青年と、王女が幸せになっていくその様子が、一つの国を滅亡へと導いた戒めの話と共に後世にまで伝わっている。


お読み頂いた皆様に感謝を!!


割烹にて『どういう話を読みたいですか?』という質問をした時に出たご意見の一つを、ちょっとだけギュッと詰まったストーリーにしました。


どうでしたかね? かなり自信ないですが……。


けっこうテンプレっぽいお話を書くのは大変ですね(^▽^;)

初挑戦なので少し拙いところがあるとは思いますが、後書きまでお越しくださり感謝です!!



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[一言] 字が違うとは、このこと!
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