1.価値化された才能
あーー、死にたい。
朝起きて、寝癖で死にたくなる。歯を磨きながら死にたくなる。朝ご飯を食べる前に死にたくなる。制服に着替えて死にたくなる。
最近はいつもそんな感じ。
今日も学校行かないと……行きたくない。
歌うことだけが好きだった。それ以外は必要なかったのだ。
だけど、どうして誰も私を見てくれないの?
きっと私は、背景なのかもしれない。
主人公は他にいて、私は脇役なんだなと思う。そう思ったら、急に死にたくなった。
意味もなく屋上に上がり、フェンスに手をかける。するとガシャガシャと音がした。
「君が死ぬのなら、私も一緒に死んでいい?」
突然だった、脇役な私と一緒に死んでくれる人。
「一人で死ぬのは怖いよ。怖さも二人だったら半分になる気がしない?」
彼女は屋上の影にいた。一人になりたい時は、いつも屋上に来ているそうだ。
あまりに屋上に溶け込んでいたので、私は彼女に気づかなかった。
数日前に屋上で歌う私を見つけて、声をかけるタイミングを探っていたそうだ。
彼女は学園一の優等生、筒柳三九六。
しかし、私は答える。まだ死ねないと。
私は本当に背景なのか?大舞台で歌って証明したい。
そうすれば、きっとあの人だって認めてくれるはず。
それにどうせ死ぬなら、私はステージで死にたい。
そうやって、誰にも忘れられないように記憶に刷り込むんだ。
考え事をしていて、徹夜をしてしまった。
眠い。今日は学校休もう。
「お姉ちゃん、学校行こ。遅刻するよ」
来てしまったか、陽キャの妹。
よし、バリケードを作ろう。
ドアの前を椅子や荷物で固定。
これなら入ってこれないだろう。そう思った束の間。
「入るよ~」
「ドンっ」
「!?」
妹はドアに向かって、体全体でタックルしてきた。
入るよ~からタックルっておかしくない?
ヤバっ、バリケードが崩れそう。
「ドンっ、ドンっ」
強烈なタックルで、ドアに隙間が開く。
そこから顔を出し、ソイツはニッコリと笑う。
「おはようお姉ちゃん。学校行こ」
バリケードが動かないように、抑えていた私の腕を掴む。
あー引っ張られる。こうなってしまっては、もう諦めるか。
学校では寝てよう。もしくはサボタージュするかな。夜は路上ライブしないとだし。
ふわぁー、眠い。
満員の電車に乗り、視線を感じる。目線を上げると、近い距離に三九六の顔があった。
彼女は軽く会釈をする。
「奇遇ですね」
私も彼女に合わせて会釈をする。こういう礼儀作法とか苦手だな。




