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おわかりいただけるだろうか?

サブタイの意味がわかりますでしょうか?

 葬式から数日。俺は爺ちゃんの家に来ていた。

 例の遺書にあった、遺産を片付ける為だ。

 ていうか、遺産は俺にやるなんて書いてたけど、未成年の俺には難しい。


 だから特別代理人として、母さん名義で相続させてもらった。

 まぁ遺産を片付けるって言っても、ただの整理整頓のようなものだ。

 爺ちゃんの部屋の物を蔵にしまったり、掃除したり……そんな簡単な作業だけだ。


「それにしても、このデケェ壺はなんなんだ?」


 蔵に物を運んでいてよく目に付くのだが、奥で埃を被った大きな壺がとにかく気になって仕方ない。

 この蔵に入るのは爺ちゃんに禁止されていた。だから入ったのは初めてで、色々と目に付く物はあるが、この壺だけ異質に感じる。

 だって165センチの俺よりデカいんだもんよ。おかしいだろ、もうすぐ高校生になる男子より大きい壺とか…。


 ちなみに禁止にされていた理由は、爺ちゃんの宝物が一杯しまっているからとか。

 確かに宝物だな。マニア向けの。


「ああ、それねぇ。昔爺さんが買った壺だよ」


 俺が不思議そうに壺を見つめていると、背筋がピンとしている99歳の婆ちゃんが話しかけてくる。


「爺ちゃんが?まさか騙されたとか…」

「えっえっえ。違うよ、それは骨董品屋で安売りされてたんだよ。確か1万円くらいだったかね?」

「結構高くね?当時からしたら」


 詳しく知らんけど、昔と今じゃ物の価値は数倍、物によっては数十倍くらい違いがあるらしい。

 どれくらい昔か知らないけど、今だと数十万くらいするんじゃね?


「爺さんはあの時、『これは数百万は下らない代物だ!金に困った時用に買っておいて損はないぞッ!』って、声高々に言ってたねぇ」

「質屋に売る予定だったってことか?」

「そうだと思うよ。ふむ……それはもう聖人の物なんだし、適当に売っぱらっちまっていいよ。将来の彼女にでも貢ぎな」


 婆ちゃんは少し考え込む様子を見せると、壺を好きにしろと言ってきた。

 確かにこれは爺ちゃんの遺産だし、母さん名義とはいえ俺が受け継いだんだ。俺にその権利はあるだろう。

 彼女云々は置いといて、遊ぶ金を作る手段としては良いと思う。でも……


「俺としては、真面目に働いた金で生きていきたいから、遠慮するよ」

「そうかい?まぁ気が変わったら言いなさい。花の高校生だ。金に困ったらここにあるもん、ぜーんぶ売っぱらっていいからね。えっえっえ」


 一応爺ちゃんの遺産なんだし、もうちょっと思い入れある様子見せてくれよ、婆ちゃん…。


「置いといても仕方ない。さっさと売って、欲しい奴に流せばいいのさ。えっえっえ」


 冷たいと思いつつも、婆ちゃんの言ってることも最もな気がした。


「売る……ねぇ?これっていくらすんのよ?」


 気になった俺は、一つ想像してみた。

 物を見ただけで値段がわかるようになった、自分を。


――――――――――――――――――――――――


 ―――ふきふきふきふきふきふきっ。


 爺ちゃんの部屋の物を蔵に運び、掃除も終えた後、俺は蔵で埃を被っている物を磨いていた。

 もちろん、俺よりデカい壺もピカピカに磨いている。

 埃は被っているが、別に罅が入っている訳ではないようで、売ればかなりの値段になることがわかった。

 やはり俺も醜い男。金に目が眩んでしまった…。


 だけどさっきも言ったように、俺は真面目に働いて生きていきたいのだよ。そうこれは将来、自分が金に困った時用に磨いているのだよ。

 それによくよく見てみると、凄く素敵なデザインではないかね?だから別にとんでもない値打ちものという理由だけでピカピカにしている訳ではないのだよ(ダウト)


 ……うーん。やはり俺は噓を付くのに向いていない。

 今の心の声が全て高くなっていた気がする。


「おーい、聖人ぉ?飯が出来たぞー」

「おー!わかったー!」


 婆ちゃんに呼ばれ、蔵から出て俺の家に入る。

 そう、この爺ちゃんの家も遺産の一つだ。だからこの家も、必然俺の物ということになる。

 もちろん今日から済む訳じゃない。定期的に掃除しに来て、高校卒業もしくは大学卒業後に就職した時の為に、この家を維持しておくのだ。


 今日は婆ちゃんがこの家で久しぶりに料理したいということで、俺と婆ちゃんの二人で夕飯を食べることになった。

 食べた後は実家に帰って風呂入って寝るだけだ。


「もうすぐ聖人も高校生か。えっえっえ。爺さんめ、今頃地獄で悔しがってるだろうねぇ」

「爺ちゃん、閻魔様に地獄に落とされるような人だっけ?」

「ああ。あの色男は色々な女の子を泣かせたからねぇ。その罪で落とされてもおかしくないよ」

「手厳しー」


 婆ちゃんはこう言うが、本当はもっとちゃんとした話のはずだ。

 端的に言えば、爺ちゃんに惚れた女の子たちが爺ちゃんに振られただけの話だ。

 爺ちゃんから聞いただけだから、実際は違うかもしれないけど、爺ちゃんは誰かを悲しませるようなことはしない性格だったのは確実だ。

 だからたぶん、爺ちゃんは天国に召されてることだろう。


 ……色男は罪と言うが、それで地獄に落とされたらたまったもんじゃないだろうしな…。


「聖人は女の子を泣かせるようなことをするんじゃないよ?」

「わかってますよ~。まぁ、俺にそんな惚れるような要素はないし、大丈夫でしょ。ははははは……言っててなんか悲しくなってきた…」


 生まれてこの方、モテたことなんて無いんでね。

 彼女も出来たことない。


「えっえっえ。なに、高校からが勝負さね。何か部活に打ち込むなり、勉学に励むなりすれば、聖人を見てくれる子が現れるさ」

「そんな漫画みたいな話(・・・・・・・)があればいいけど…」


 “真面目で素直”な男って、つまらないからモテないのだよ。ははは…。

“真面目で素直”と自称してますが、素直過ぎて逆に不埒な面もあるのがこの主人公。


この話が面白いと思ったらブクマ登録と高評価、いいねと感想をよろしくお願いいたします。


次もこちらを投稿したいと思います。

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